投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【2023年10/23-10/27週の世界のリスクと経済指標】

先週の評点:

 

リスク      -2点(31点):悪化 (基準点33点) 

経済指標    +4点(100点):良化 (基準点96点)

 

【リスク】

 先週のリスクはマイナス2ポイントの悪化となりました。

中東情勢は27日にイスラエル軍がガザへの攻撃に関して「地上部隊が今夜作戦を拡大している」と述べたため、地上侵攻が本格的に開始する可能性が高まっています。またネタニヤフ首相も「戦争は第二段階に入った」と述べており、戦況に変化が出てくる可能性が高いです。既に局地的な地上侵攻が行われていますが、拡大が強まればヒスボラやイランが参戦してくることにも繋がり、局地的な紛争ではなくなります。原油価格や米国の支援拡大へ懸念から米国債価格のボラティリティが上がることも考えられるため注意が必要です。

 またウクライナ情勢に絡んでは、EUに加盟するスロバキアで左派政権が誕生したことで、新首相のフィツォ氏が正式にウクライナへの軍事支援の停止を正式表明しました。同政権はロシアに近く、今後は同じくロシアと距離の近いハンガリーのオルバン政権と近いポジションとなると推測されます。EUの中でのウクライナへの「支援疲れ」が具現化した例であり、今後その他のEUの国々でも波及する可能性があります。またEUの足並みが乱れる可能性が高まっています。

 

 一方で米国では漸く下院議長が決まり、共和党のマイク・ジョンソン氏が選任されました。ジョンソン氏はほぼ無名であり人物像がよく伝わっていませんが、トランプ氏に近い宗教右派であり、キリスト教福音派を母体としているようです。トランプ派らしくイスラエルの支援には前向きでありながら、ウクライナへの支援継続には慎重と伝えられており、直近に控える予算承認での運営方法が注目されます。

 

 

【経済指標】

 先週の経済指標はプラス4ポイントの良化となりました。

欧米PMIは欧州での製造業/サービス業が共に弱さを見せ、欧州景気の悪さが深まっていることが示されました。一方で米国PMIは製造業、サービス業共に基準となる50を回復し、景気の底堅さを示しました。

米PCEデフレーターは総合指数が前月、予想に一致の3.4%となりましたが、コア指数は前月3.8%に対して3.7%と鈍化が示されました。

 また先週はカナダ銀行、およびECBの政策金利発表がありましたが、共に据え置きとしました。特にECBはこれまで11会合ぶりの据え置きとなり、欧州景気の悪化から早期の利下げも見えてきました。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

 先週の株価指数は米国3指数が前週に続き大幅反落となりました。

しかし注目であった大手ハイテク企業の決算自体は悪くなく、金利が高止まりする中でのバリュエーション調整が行われたと解釈できます。ついては買い増しのチャンスと捉え、ナスダック100指数を買い増しします。

 

先週の株価の動きの要因は以下の通りです。

・著名投資家のビル・アックマンが米国債をショートカバーしたことを明らかにし長期金利が低下。

・GOOGL、MSFT、META、AMZNの大手4社はどれも予想を上回る決算も、株価は明暗が分かれる。
 それにより全体的に重くなり相場は反落。

イスラエルがガザでの地上活動を拡大しているとの報道も重し。

 

 先週は週初めに著名投資家で債券弱気派のビル・アックマン氏がこれまでの米国債の売りを解消したと明かしたことで長期金利が一旦の落ち着きを見せました。同氏の発言以降、未だ高水準に貼り付いているものの10年債利回りは節目の5%を超えずに推移しました。

 一方で大手ハイテク企業4社の決算発表は、売上高、EPS共に4社とも上回り好決算となりましたが、投資家の評価はまちまちとなりました。MSFT、AMZNは決算発表後、素直に株価は反発しましたが、GOOGLはクラウド事業の売上高が予想を下回ったことが嫌気され9.51%安、METAはCFOが先行きの不透明さを語ったことで3.73%安と売り込まれました。これらの重い値動きに引っ張られ、株式全体が反落した印象です。

 大手ハイテク企業を中心とした景気自体は、市場予想を全て越えてきたことで堅調さが感じられ、悪くない状況であることが証明されました。また、先週のPCEコアデフレーターの発表でも示されたように、インフレ率は減速しながらも着実に鈍化しています。従って、「高金利でもインフレ指標はゆっくり低下し、米国景気は堅調に推移する」というファンダメンタルは変化していません。

 ただ、やはりここ最近の長期金利の急上昇が、ハイテク株にとってかなり高いハードルになったことは間違いありません。年初来、株式でありながら安全資産的に見られ上昇してきた大手ハイテク株も、ここまでの高い長期金利水準の中では、わずかな取りこぼしでも割高さの方が勝ってしまったと考えられます。しかし、これはあくまでもバリュエーションの調整です。ファンダメンタルの状況は変わっていません。

 ついてはこれをチャンスと捉え、ハイテク株中心のナスダック100指数を買い増します。大手ハイテク企業は、これだけの高金利の状況であっても次々にAIなどの新しい事業モデルを確立しながらしっかりと収益化できており、やはり底力が強いです。もう少し株価がフラフラと下押しする可能性はありますが、決算をきっかけに大きくバリュエーション調整が行われた後であり、長期運用的にはチャンスだと捉えます。

 

ついてはポートフォリオMSCIコクサイ50%、ナスダック100 20%(10%→20%)、外国債券ヘッジあり20% (30%→20%)、金(ヘッジあり)10%に変更します。

 

 次週はFOMCがありますが、おそらく政策金利は据え置きで、パウエル議長のコメントも19日と変わらないと考えます。ビル・アックマン氏など短期筋の動きも変化を示してきています。米下院議長も選任され、米国債下落の一因となっていた政治的な混乱も一旦は落ち着きそうです。FOMCのほか、ISMやJOLTS、雇用統計などもあり盛りだくさんとなりますが、引き続き長期金利の動きに注目していきたいと思います。

 

以上