投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【2023年8/21-8/25週の世界のリスクと経済指標】

先週の評点:

 

リスク   -3点(27点):悪化 (基準点30点) 

経済指標  -4点(50点):悪化 (基準点54点)

 

 

【リスク】

 先週のリスクはマイナス3ポイントの悪化となりました。

先週は南アフリカBRICSの首脳会議が開催され、新たにアルゼンチン、エジプト、エチオピア、イラン、サウジアラビアUAEの6カ国の加盟が認められました。グローバルサウスとして連携を拡大するのは良いですが、西側諸国としては、それが中露に主導されているのが気がかりです。中露は明らかに欧米諸国に対する対立軸として連携を深めていると見えます。しかし、インドやブラジル、サウジなどの反欧米とは言えない国々までもがそこに加わっており、今後どのような動きをしていくのか注目されます。

 

 また日本政府が福島原発の処理水の海洋放出を開始したことを受けて、中国政府が日本産の海産物の全面輸入禁止を発表しました。中国に対する日本の半導体製造装置の輸出規制への揺さぶりとしての要素もあると思いますし、自国経済の低迷の矛先を外的に向ける、いつもの中国の常套手段のような気がします。ただ、中国国内では日本人に対して投石騒ぎも行っているとの報道もあり、2012年の尖閣諸島国有化後の様に市民レベルでの関係の悪化と、日本企業の中国内でのビジネス環境の一段の悪化が心配されます。

 

【経済指標】

 先週の経済指標はマイナス4ポイントの悪化となりました。

先週は欧米各国のPMIの発表がありました。欧州は製造業PMIでは低水準の中でわずかに改善が見られたものの、非製造業においても悪化が顕著になってきました。特にドイツでは前月52.3から一気に47.3まで低下し、主力の製造業での景況感の悪化が非製造業まで急速に波及してきたことが伺えます。

中国経済の低迷も合わさり、景気悪化が著しい欧州ですが、インフレ率はまだ高水準となっており金融緩和には踏み切れず、苦しい状況が続いています。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

 先週の株式指数はまちまちながら、NVDAの決算期待に連れてハイテク株を中心に反発しました。それを受けてナスダックが2.26%の大幅反発となりました。一方で中国は、中国人民銀行が1年物LPRの追加利下げを行なったものの住宅ローンの目安となる5年物は対象とされなかったための失望を誘い反落が続きました。また中国政府が国内の景気悪化からの株安を防ぐために、一部投資基金に対して売り越さないように要求したことで悲観的な見方が強いことが示され軟調を強めました。

 

 先週の米国株価の動きの要因は下記の通りです。

・AIブームの期待感の高まりからNVDA株が伸長し、また実際の決算発表でも好決算を示す。

ジャクソンホールにてパウエル議長が従来と変わらない、サプライズなしの姿勢を示したことで安堵感。

 

 先週はNVDAの決算発表があり、売上高は予想112.2億ドルに対して135.1億ドル、EPSは2.09ドルに対して2.7ドルと驚異的な業績を叩き出しました。特にAI需要の高まりからデータセンター向けの売上高が103億ドルにも達し、1Qの42.8億ドルから倍増していることが示されました。また3Qの見通しも市場予想の126億ドルに対して160億ドルとこちらも大幅に増加することが示されました。

 ChatGPTに代表されるようなAIの活用拡大とNVDAの1Q決算から、5月から「テーマ」としてのAI株が市場を牽引してきました。今回、再びNVDAの急速な業績の拡大が示されたことで、単なるテーマではなく実際に需要が拡大している分野であることが示されました。恐らくNVDAの大半の需要を形成しているのは資金力のあるGAFAMなどの大手ハイテク企業であることが予想されます。しかし常にイノベーションを成し遂げてきた彼らが競って投資をしているということは、AIが今後人類の生活を変革し、ビジネスとして成功する可能性が高いということを示唆していると思います。決算発表後にNVDA株は下げていますが、これは期待感から上がりすぎた反動であり、中長期トレンド的にはAIによりブーストされ大手ハイテク株が上昇を続ける可能性が高まってきたと思います。

 

 一方で、短期的にも大手ハイテク株主導で株価が上昇し続けるのかと言われると、それはやや懐疑的です。前週から米国の長期金利が上昇傾向にあり、10年債利回りは一時4.36%まで上昇しました。金利が高止まりすればハイテク株には重しとなります。また中立金利の引き上げ論も出ていますが、それを語るにはまだ論拠が薄いと思われます。

 ジャクソンホールでは、パウエル議長が7月FOMCでのスタンスと変わらず、追加利上げの是非について「慎重に政策を進めていく」スタンスを強調すると同時に、引き締め政策がより長期に及ぶ可能性も示唆しました。既にマーケットが織り込み済みの内容であったため株式は無難に反発しましたが、どちらかというと想定外のタカ派姿勢が出なかったことに対する安堵感が強かったように思われます。

 やはりFRBが利上げを確実に停止し、利下げが見えてこない限りは、株価が次のステージへと上抜けるのは難しいと思います。ナスダックは14400ポイント、S&P500は4600ポイントの直近高値を上限にフラフラする展開が続くと思われます。

 とは言え、インフレ率は確実に下がり、利上げはあと一回あるかどうかというところまで来ており、時間の問題だと思われます。ついては引き続き株式50%の強気を維持します。

 

以上