【2023年5/8-5/12週の世界のリスクと経済指標】
先週の評点:
リスク -1点(31点):小幅悪化 (基準点30点)
経済指標 -1点(40点):小幅悪化 (基準点41点)
【リスク】
先週のリスクはマイナス1ポイントの小幅悪化となりました。
中国の4月CPIが0.1%と低下し、PPIもマイナス幅が拡大したことでデフレが示され始めました。ゼロコロナの廃止で中国経済が持ち直すと期待されましたが、米中対立などの政治的な制限もあり、中国景気が戻らずに失速する可能性が見えてきました。一方で中国の「爆買い」が低迷することで世界的な資源価格を下げ、他国のインフレ低下につながる可能性がありますのでそちらの意味でも注意が必要です。
【経済指標】
先週の経済指標はマイナス1ポイントの小幅悪化となりました。
米国の4月CPIは総合指数が前月5.0%、予想5.0%に対して4.9%と下振れ、コアは前回5.6%、予想5.5%に対して5.5%と予想通りとなりました。総合指数、コア指数共に鈍化が示されましたが、利上げの停止が近づく中でインフレ率も勢いが落ちてきた印象です。
BOEは政策金利を発表し25bpsの利上げとしましたが、3月のCPIが10.1%と高水準を維持していることから利上げの継続も示唆しました。
【先週のマーケットの振り返りと考察】
先週の株価指数はまちまちな動きとなりました。
日経平均は円安による好調な輸出企業の決算を背景に、先週に続いて底堅く推移しました。一方で米株はナスダックが堅調さを維持する一方で景気敏感のダウ平均は反落しました。
先週の動きの要因は下記の通りです。
・米4月CPI、PPIが微減となりインフレ率の鈍化が示され安堵感が広がる。
・一方で従来からの地銀不安に加え、米債務上限を巡る米与野党の協議が延期になるなど警戒感も継続。
先週は米4月CPIの発表がありました。雇用統計やISMなどの堅調な結果から上振れる可能性もありましたが、総合指数、コア指数ともにほぼ予想通りの結果となりました。前月から鈍化を示したため、安堵感から金利は低下しキャッシュリッチな大型ハイテク株に資金が集まりナスダックは上昇しました。しかし大型ハイテク株に資金が集まったと言っても、全体的に債務上限を巡る不透明感が覆い被さり、雰囲気は徐々に重くなってきた印象です。
景気敏感株や中小型株は、その債務上限問題の重さに加えて依然地銀不安が根強く残っていることから力強さに欠け、ダウ平均やRussel2000は反落しました。
全体的な相場の印象としては先週とさほど変わらず、根強い大型ハイテク株と弱い景気敏感・中小型株の二極化の傾向が継続しています。
ついてはファンダメンタルズは何も変化していないとして、引き続き弱気のポートフォリオを継続します。
方向感のない相場となっていますが、やはり債務上限問題が解決に向かわない限りは次の見通しを判断することは難しいと思います。最終的には妥協が見出されて債務上限が引き上げられると想定しますが、ギリギリまで引っ張るとマーケット主導で不測の事態が発生する可能性も考えられます。地銀不安が根強く残る中、仮にデフォルトを恐れて債券が大きく売られた場合、含み損の増加から再び地銀からの預金流出が起こり、混乱に繋がる可能性もあると考えます。
債務上限問題は米国の政治的な対立に起因し、人為的に解決可能な事象です。仮にこの問題が解決されずデフォルトするか、もしくは何か世界的な混乱を生む原因となった場合、米国の信頼は失墜すると思います。おそらく中国は米国と民主主義システムを批判し、西側民主主義国は対中露で重要度が増しつつあるグローバルサウスへの影響力を失うことになると思います。
米国議会がこのチキンレースを無難に終結し、間違いを犯すことがないことを祈ります。
以上