【2023年10/16-10/20週の世界のリスクと経済指標】
先週の評点:
リスク -5点(28点):悪化 (基準点33点)
経済指標 +12点(90点):大幅良化 (基準点78点)
【リスク】
先週のリスクはマイナス5ポイントの悪化となりました。
中東情勢はイスラエルのガザ地域に対する報復攻撃が激しさを増し、ガザ側の死亡者が約4400人に増え、イスラエル側の死亡者の約1400人を大幅に超えてきました。またイスラエルによる完全封鎖で物資が不足する中、イスラエルの侵攻警告により北部の市民が南部に移動したことで水、食料、医薬品に加えて住居の不足も深刻となっています。それにより人道的観点から欧米諸国からもイスラエルへの自制要望も見られるようになってきました。各国の外交活動の甲斐もあり、イスラエル軍による地上侵攻はまだ実行に移されていませんが、実行された場合の一般市民への被害拡大は必至であり、更なる混乱が拡大する可能性が高いため注視が必要です。
また、その最中、中国での「一帯一路」首脳会議に招かれたプーチン大統領が習近平主席と会談し、中露の結束を打ち出しました。プーチン大統領が国際刑事裁判所から逮捕状が出されている中での結束表明は、もはや欧米中心の国際的な枠組みを中露は重視しないとの態度の表れであり、欧米に対する対抗心が露わになったことを印象づけました。
【経済指標】
先週の経済指標はプラス12ポイントの大幅良化となりました。
注目された米9月小売売上高は予想0.3%に対して0.7%と強さを示し、米国経済の大半を占める消費が堅調であることが再確認されました。
また、その他の指標はこれと言った目立ったものはありませんでしたが、低水準ながらも前月よりも相対的に回復を見せました。
【先週のマーケットの振り返りと考察】
先週の株価指数は世界的に軟調な動きとなりました。米国の長期金利の上昇とイスラエル-ハマスの衝突によるリスク回避により、米株3指数も大幅に反落しました。
また中国株式も不動産不況への警戒感も強いため大きく崩れ、上海総合指数は節目の3000割れで年初来安値となりました。
先週の株式の動きの要因は下記の通りです。
・中東情勢を巡って一喜一憂。戦闘が拡大しないための米国やロシア首脳の外交交渉により一時落ち着きを見せるも、ガザの病院爆発報道でリスクオフ。
・米小売売上高の上振したことで経済の強さが示唆され、FRBが政策金利を長期維持する観測が前進し長期金利上昇が進む。
・加えてパウエル議長がややタカ派な姿勢を示したことで30年債利回りが5%を超え株式の重しに。
先週もやはり長期金利の上昇に振り回された週でした。
まず17日に発表された米9月小売売上高が強かったこととで米経済の高成長が維持され、FRBの政策金利が高水準で維持されることが意識されました。それにより2年債などの短い国債利回りを中心に長期金利が上昇しました。
次いで19日の講演で、パウエル議長が次回FOMCでの金利据え置きを示唆しながらも、追加の利上げの可能性を排除しないとのややタカ派な姿勢を示し、マーケットに広がる利上げ終結観測を牽制しました。長期金利の急上昇による金融引き締め効果から、「これ以上の利上げ不要」を匂わす発言がここ最近FRB高官から出ていましたが、これを打ち消す内容となりました。
2年債利回りは次回FOMCでの据え置を意識して下げに転じましたが、今度は30年債利回りが急上昇して明確に5%を上抜け、つられて10年債利回りも一時5%にタッチする動きとなりました。それを受けてマーケットはリスク回避姿勢を強め、株式が週終盤にかけて大きく反落しました。
パウエル議長は今回「タームプレミアム」に言及し、米財政赤字への関心の高まりやQTなどがタームプレミアムの上昇に寄与していると示唆しましたが、その牽制につながる様なハト派な発言はありませんでした。長期金利の急上昇につながるタームプレミアムの問題は複雑です。対中半導体規制などの経済安全保障や、ウクライナやイスラエルに対する軍事・経済支援の増加による財政収支の悪化傾向、また政府機関閉鎖への政治的な不安感など原因がすぐに修正できる問題ではありません。それが全体的な米国債に対する信頼感を喪失させ「米国債売り」の大きな方向感を醸成していると思われます。
今回のパウエル議長の発言次第では、その「米国債売り」の修正のきっかけにもなるかと期待されましたが、利上げの可能性を残し、結局「すべてはデータ次第」という不確実性の残る内容となった印象です。FRBの使命は「雇用とインフレの安定」であり、足元のデータでは雇用が順調な中、足元のインフレ率が高いのであれば、それを是正することは正しい行動です。
しかし、これ以上の金利の上昇は、3月に起こったように弱小地銀の含み損を膨らませ、再び混乱が生じることが考えられます。FRBの見込みが甘く利上げが遅かったことがインフレ高進の原因となったこともあり、データに依存し慎重になるのはわかります。しかし最近の運営はどこか後付け的で、データから導き出されるビジョンに欠ける気がします。それがない限りマーケットをリードできず、再び「行き過ぎ」で、ハードランディングの可能性も出てくると思います。
長期金利のボラティリティの高まりから前週よりもややリスクが高まったと感じますが、次週はGAFAMの決算発表があります。GAFAMの好調な決算でマーケットが落ち着くことを期待し、取り敢えず強気のポートフォリオを維持します。
以上