投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【2023年10/30-11/3週の世界のリスクと経済指標】

先週の評点:

 

リスク      5点(38点):良化 (基準点33点) 

経済指標    -19点(116点):大幅悪化 (基準点135点)

 

【リスク】

 先週のリスクはプラス5ポイントの良化となりました。

先週は米国の雇用統計やISM景況指数で久しぶりに全ての指標で悪化が示され、米国の景気が緩やかに後退していることが示されました。FOMCでも長期金利の上昇での金融環境の引き締まりから追加利上げの必要性の低下が語られ、FRBと経済指標の方向性が同調してきている印象です。このままCPIの数値の低下に繋がるか注目されます。

 また、長らく交渉が行われていましたが、11月にワシントンで行われるAPEC首脳会合にて、バイデン大統領と習近平主席の米中首脳会談が行われることで原則合意されました。大統領選を控えながら支持率が低迷しているバイデン氏と、低迷する経済の起爆剤として欧米との経済的な関係回復を望む習氏の打算が透けて見えます。しかし、2大国間の関係が改善することは偶発的な衝突を避けるためにも歓迎されることであり、会談の内容に注目したいと思います。

 

【経済指標】

 先週の経済指標はマイナス19ポイントの大幅悪化となりました。

先週はFOMCがあり米国政策金利が据え置きとなりました。また重要指標であるISM製造業/非製造業景況指数や雇用統計の3指標で悪化が示され、インフレ率の鈍化が期待される結果となりました。

先週は欧州の指標も多く発表され、ドイツ、ユーロ圏のCPIも順調に鈍化する一方で、ドイツGDPはマイナス成長、ユーロ圏GDPは辛うじてプラスと、低迷している経済状況も示されました。

 

 また日銀金融政策決定会合では長期金利が1%を超えることを容認する内容にYCCを修正しました。

しかし、今回の日銀の政策変更は、円安を気にした修正の可能性が強くやや疑問が残ります。日銀の使命は物価の安定ですが、現在のインフレはコストプッシュインフレであって本格的な実質賃金の上昇を伴ったインフレには至っていません。そんな中、足元で円安が輸入物価を押し上げ物価上昇の原因となっているからと言って、日銀が円安修正を意識し引き締め方向に走るのはやや筋違いだと思います。あくまでも引き締め方向の政策を取るのは実質賃金の上昇を伴ったインフレが強まった時であり、足元の状況ではないと考えます。

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

 先週の株式指数は米国株式を中心に大きく反発しました。

先週は、FOMCを無事に通過した安心感と米国の重要経済指標が軒並み悪化を示したことで「悪いニュースは良いニュース」となり今後の利上げ観測が大きく後退し大幅な反発を示しました。ついてはファンダメンタルはマーケットのシナリオ通りの展開となっていると認識し、先週ナスダック100を10%増やした強気のポートフォリオを継続します。

 

 先週の株価の動きの要因は以下の通りです。

・前週の大幅反落からの自律反発でセンチメントが改善。

FOMCにて金利据え置き、かつ長期金利上昇に伴う金融環境の引き締まりに言及されたことで安心感が広がる。

・次週の国債の四半期入札の規模が予想よりも緩やかだったことで金利の低下を後押し。

・ISM景況指数が低下、また雇用統計もNFP/失業率/平均時給の全てが緩やかに悪化を示し、米景気過熱の収束が示される。

 

 注目のFOMCでは事前の予想通り利上げ据え置きとなりました。またパウエル議長の会見では、追加利上げの選択肢は残しながらも、長期金利の急上昇により追加利上げの必要性が低下しているとのハト派姿勢が示唆されました。パウエル議長は10/19の講演では「金融環境の変化が根強く続けば、金融政策の道筋に影響を与え得る」としか語っていませんでしたが、今回は明確に「追加利上げがない可能性」を示唆しました。これを受けて長期金利は下がり、FedWatchは足元で90%以上の確率で今後追加利上げなし、また5月FOMCからの利下げを織り込んでいます。

 

 またそれを裏付ける様に、先週発表された経済指標は軒並み悪化を示しました。

まずISM景況指数ですが、製造業が前月/予想49.0に対して46.7と再び3ヶ月振りの水準に低下しました。また非製造業も前月53.6から51.8に低下し、米国の景況感が確実に悪化してきていることが示されました。そしてそれに連動して雇用統計も悪化を示しました。NFPは予想18万人に対して15万人で下振れ、平均時給も予想0.3%に対して0.2%と小幅な増加、失業率は予想3.8%に対しFRBが目標水準としている4%に肉薄する3.9%となりました。これまでの雇用統計では3指標のどれかが良くてどれかが悪いというようなまちまちな状況が続いていましたが、久しぶりにNFP/失業率/平均時給の3指標が揃って悪化を示しました。

 

 一方でどれも激しい悪化ではなく、堅調な経済を維持しながら緩やかな後退を示しています。唯一ISM製造業景況指数の悪化がやや急激に見えますが、これはUAWのストの影響が出ていることが考えられ、実際の悪化幅はもっと緩やかであったと推測されます。つまり先週発表された指標は「良くないながらも悪すぎない」ものであったと考えられます。それは「高金利でもインフレ指標はゆっくり低下し、米国景気は堅調に推移する」というマーケットのシナリオにパーフェクトに応える内容だったと思います。従って長期金利は低下し、株式は大幅反発という結果になったと考えます。

 

 11/14のCPIまで需要な経済指標の発表がなく注目の大手ハイテク企業決算も終えたため、次週は材料難から株価は一旦フラフラすることが予想されます。次週もパウエル議長の発言が予定されていますがそれも先週のスタンスが変更することはないと思われ、影響はないと思います。中東情勢などの地政学的な材料に振り回される可能性もありますが、金融面での基本シナリオに変化はないため、現在の強気のポートフォリオを維持します。

 

以上