投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【2023年7/3-7/7週の世界のリスクと経済指標】

先週の評点:

 

リスク   -3点(27点):悪化 (基準点30点) 

経済指標  -11点(82点):大幅悪化 (基準点93点)

 

 

【リスク】

 先週のリスクはマイナス3ポイントの悪化となりました。

先週はイエレン財務長官が訪中して李強首相と会談し半導体規制に関して対話しましたが、どちらかというと米国側が熱心に働きかけており、特に進展していない印象です。逆に中国はイエレン氏訪問前に、8月からのガリウムゲルマニウムなどの希少鉱物に対する輸出規制を発表し、敢えて拒絶の意を示しているような印象です。中国としては米国が日本やオランダと行なっている半導体規制を緩和しない限りは軟化しない印象で、それなしにどこまで歩み寄りができるか不透明な状況です。

 また、先週は玉城沖縄県知事河野洋平元議員らと共に中国を訪問しました。玉城知事は李強首相と会談するなど、一知事としては異例の厚遇を受けました。台湾問題に関与を強める日本政府を揺さぶるために、中国当局が米軍基地の重要拠点となる沖縄県との関係強化に努めている印象です。この時期に敢えて中国との関係強化に努める玉城知事の意図が見えませんが、今後沖縄に対する中国の直接的な関与が増える可能性もあり、注意が必要だと思います。

 

 

【経済指標】

 先週の経済指標はマイナス11ポイントの悪化となりました。

中国のPMIは製造業、サービス業共に低下が示されました。特にサービス業の低下が顕著で、国内景気がなかなか戻ってこないことが示されました。

一方で米国のISM非製造業景況指数は前回50.3から53.9に回復し、ADP雇用統計、雇用統計も概ね強い数値が示され、強い米国景気が示されました。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

 先週の株価指数は概ね軟調となりました。特に景気回復の遅れが見られる中国の香港ハンセン指数と中国経済の影響が大きい欧州株式指数が大きく売られました。

 

先週の株式の動きの要因は下記の通りです。

 

FOMC議事要旨で大半の当局者が追加利上げが必要と予想していたことが判明し金利が上昇。

・ADP雇用統計、ISM非製造業景況指数が大幅上振れ、引き締め継続観測が強まる。

・雇用統計でNFP下振れも平均時給は上振れ、失業率は下振れとなり次回FOMCでの利上げ観測が高まる。

 

 先週はFRBの利上げ継続観測に注目が集まったことで、金利が上昇し相場が調整しました。

まず水曜日に発表された6月FOMCの議事要旨で、ほぼ全ての当局者が6月の金利据え置きで支持した一方、大半が今後の追加利上げが必要となると予想していたと判明し金利が上昇を始めました。

 続く木曜日に発表されたADP雇用統計では前回26.7万人、予想22.8万人に対し49.7万人と強く上振れし、ISM非製造業景況指数でも予想51に対して53.9と上振れしました。この雇用と景気の底堅さを受けて金利上昇がさらに進み10年債利回りは4%、2年債利回りは5%を突破する動きとなりました。

 また金曜日の雇用統計では、NFPが予想22.5万人に対して20.9万人で下振れしましたが、平均時給は予想0.3%に対して0.4%と上振れ、失業率は3.7%から3.6%に低下し根強い雇用の強さも示されました。これらの雇用や景気の強さがFRBの追加利上げ姿勢を後押しし、金利の上昇と株価の反落が継続しました。

 

 一方で今回の雇用統計では平均時給の上昇と失業率の低下が利上げを支持することになりましたが、失業率の内訳を見てみると雇用も弱含み始めている兆しも見えます。下記は人種ごとの失業率の推移を表したものです。

 6月の白人の失業率は前月3.3%から3.1%に低下していますが、サービス業の多くを担う黒人やヒスパニック系の失業率は4月を底に上昇を見せています。全労働人口の66%を占める白人の失業率低下により全体失業率が押し下げられたと考えられますが、サービス業従事者の多い低所得層では確実に失業率が上がっています。また平均時給の上昇も高所得者の多い白人層が強かったことが原因と考えられます。つまり、低所得者が多いサービス業での雇用の減少傾向も漸く始まったと考えられ、今後必然的に失業率全体や平均時給も落ち着いてくるものと考えられます。

 

 先週は10年債利回りがこの1週間で0.225%(5.86%高)も上昇した一方で、株価の調整は限定的だったような印象です。恐らく株式市場は、この辺りのサービス業での雇用の緩みも織り込んでいるのではないかと考えます。そしてあと2回利上げがあろうが、景気が強さを保ちながらゆっくりと悪化し、それと同時にインフレ率が下がっていくことを想定しているのだと思います。また私もその可能性が高いと感じています。

 

 従って次週も引き続き強気のポートフォリオを維持したいと思います。

 

 尚、先週は金利が上昇する中でも円高となり、ドル円は2.25円高(1.56%高)となりました。これは雇用統計でNFPが予想を下回ったことと、10年債利回りが4%を上回ったことで日銀が円買い介入する可能性が高まり、ショートカバーで売りが増えたものだと考えられます。まだ利上げ観測が残っている中では円安基調は崩れていないと思いますが、為替リスクを負う資産が

多いだけにこちらも値動きに注視したいと思います。

 

以上