投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【2023年5/29-6/2週の世界のリスクと経済指標】

先週の評点:

 

リスク   -2点(28点):悪化 (基準点30点) 

経済指標  -6点(86点):大幅悪化 (基準点92点)

 

 

【リスク】

 先週のリスクはマイナス2ポイントの悪化でした。

6/2からシンガポールで行われるアジア安全保障会議にて、米国側が米中国防相会談を打診しましたが、中国側がこれを拒否し会談が見送りになりました。中国の偵察気球問題後、米中間の対話が途絶えており、ここ最近は米国側が接近する姿勢を見せていますが、中国側の態度の硬化により偶発的な衝突リスクが拭えない状況が続いています。

 

 一方でインド太平洋地域では、ここ最近、対中抑止を念頭に韓国の積極的な行動が目立ってきました。先週、韓国はソウルで太平洋島嶼国の首脳を招き首脳会談を行いました。そこで韓国は太平洋島嶼国に対して積極的に関与していくことを表明しています。韓国での政権交代により前政権からの政策姿勢が一転し、日米を含めた西側諸国との連携が強まっています。これまではインド太平洋地域においては日米豪を中心に西側外交を強化してきましたが、そこに韓国の存在感が増すことで、より厚みが加わることになります。中国に隣接する韓国が本格的に西側外交に加わることは、地政学的にも非常に重要度が大きいと考えられ、今後も韓国の動きには注目していきます。

 

【経済指標】

 先週の経済指標はマイナス6ポイントの悪化でした。

先週は中国の製造業PMIの発表がありましたが、国家統計局の指標では先月よりも景況感が低下し、48.8となりました。特に中堅企業や中小零細企業の景況感の悪化が激しく、ゼロコロナからの回復よりも、これまでの中国当局による構造的な問題が影響しているような気がします。

 また先週はフランスとドイツのCPIの発表がありましたが、両国とも大幅に鈍化が示され、ようやく欧州でもインフレの落ち着きが見え始めてきました。

 米国では雇用統計の発表がありましたが、NFPは予想19万人に対して33万人と大幅に上振れしましたが、失業率は予想3.5%に対して3.7%悪化、平均時給も前月0.4%に対して0.3%と鈍化を示しまちまちな結果となりました。失業率や平均時給が悪化したことは利上げの効果が徐々に現れてきていると考えられます。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

 先週の株価指数は概ね反発しました。日経平均は8週連続の反発で、ナスダックは6週連続の大幅反発となりました。

 

先週の株価の動きの要因は下記のとおりです。

 

・米債務上限引き上げに与野党が合意し、上下院議会でも可決したことでセンチメントが回復。

FRBのジェファーソン理事やフィラデルフィア連銀のハーカー総裁が、6月FOMCでの利上げ停止を示唆したことで下支え。

・米雇用統計がまちまちな結果となったことで、金利は上昇しながらも良いセンチメントを維持。

 

 先週は、米債務上限の引き上げ問題が漸く解決を見せました。前週末にバイデン大統領と共和党マッカーシー下院議長が引き上げに暫定合意していましたが、31日に下院で可決、1日に上院でも可決し、正式にデフォルト回避となりました。これでここ数ヶ月マーケットの重しとなっていた足枷が外れ、再びマーケットの注目はFRBの利上げに戻ってきました。

 

 そんな中、先週はFRBのジェファーソン理事やフィラデルフィア連銀総裁から6月FOMCでの一旦の利上げ停止を示唆する発言が相次ぎました。それによりマーケットの織り込みも前週には64%あった25bpsの利上げ確率が25%に後退し、債務上限問題の解決によるセンチメントの改善も相まって週中盤から株式マーケットは上昇しました。

また金曜日に示された雇用統計でも、NFPは相変わらず堅調さが示されたものの、失業率と平均時給の伸びが崩れたことで、利上げ停止の織り込みを後押し反発を強めました。

 

 マーケットでは6月FOMCでの利上げ停止が優勢となってきていますが、代わりに7月FOMCでは25bpsの利上げ確率が53%となっています。しかし、もともと6月で予想されていた利上げが7月にズレ込む形となっており、あと一回の利上げのコンセンサスは変わっていないため、深刻には捉えられていません。ここからは、「あと一回」というコンセンサスを基準に、FRBの政策とのギャップが出た場合にマーケットがどう反応していくかを見ていくことになります。

 

 次週はISM非製造業景況指数くらいしか材料がなく、次の注目は6/13のCPIと6/14のFOMCでの利上げの有無とドットチャートの発表に移っていくと思われます。

 利上げの有無は、「あと一回」がくるのが6月なのか7月なのかの問題であり、今となっては影響はそう大きくないと思われます。ただ、ドットチャートは3月に示された23年末5.125%の金利よりも上振れが示された場合、「あと一回」がそれ以上に増えることが警戒され、マーケットに動揺が走る可能性があります。最近のFRB高官の発言を聞く限り、今のところ可能性は低いと思われますが、注意が必要かと思います。

 

とはいえ、債務上限問題の偶発的リスクが去り、FRBの中でも具体的な利上げ停止議論が発生し、利上げがあと1回程度と想定されることから、改めて相場が大きく下落する可能性は低下したと考えます。先週末にMSCIコクサイの割合を30%から40%に増加し、中立のポートフォリオに変更しましたが、引き続き中立の構えで相場の動きを見ていきます。 

 

以上