【10/3-10/7週の世界のリスクと経済指標】〜まだ早かったタカ派スタンスの反転期待〜
先週の評点:
リスク -8点(22点):大幅悪化 (基準点30点)
経済指標 -10点(74点):大幅悪化 (基準点84点)
【リスク】
先週のリスクはマイナス8ポイントの大幅悪化となりました。
ロシアがウクライナ4州の併合に関して議会での採択とプーチン大統領の署名を完了しました。一方でウクライナ軍はロシア占領地域での攻勢を強め、陣地奪回を進めています。
強まる劣勢により9/21のプーチン大統領の「核兵器使用の用意」発言に対して核兵器使用の警戒が高まっており、バイデン大統領も「人類滅亡する危険性がキューバ危機以来の最高水準」と発言しています。
一方でOPECプラスが11月以降の原油生産量を200万バレル減産することを合意したことで、再び原油価格が90ドルを超えてきました。再び原油価格が高止まりすることに加え、バイデン大統領がサウジを訪問して増産の申し入れをしたにも関わらず大幅増産に踏み切ったことで、サウジと米国の関係も悪化する可能性が高まってきました。
【経済指標】
先週の経済指標はマイナス10ポイントの大幅悪化となりました。
ISM製造業景況指数は予想52.2に対して50.9と悪化、一方でISM非製造業景況指数は予想56.0に対して56.7と上振れし堅調さを見せました。
雇用統計はNFPが予想25万人に対して26.3万人とやや上振れ、失業率も予想3.7%に対して3.5%と改善を見せました。
8月米求人件数は前月から110万人の大幅減となっており、雇用の鈍化が予想されていましたが根強い雇用の強さが示されました。
次週は米9月CPIの発表があります。雇用統計ではインフレ圧力が示されましたが、その流れがCPIにもつながるか注目します。
【先週のマーケットの振り返りと考察】
先週の株価指数は週足で見れば堅調に推移しました。
一方で中身を見ると指標により大きく動いた1週間でした。
〜まだ早かったタカ派スタンスの反転期待〜
前週末にダウ、S&P500は年初来安値を更新しましたが、先週は週明けと共に9月ISM製造業景況指数と8月求人件数が鈍化したため、FRBのタカ派スタンスの反転が期待され、株価は大きく反発しました。10/4にはナスダック、S&P500共に前週末比5.7%高となりました。
しかしその後のISM非製造業景況指数や雇用統計で堅調さが示されたことでタカ派スタンスの反転がすぐさま否定され、再び大きく反落しました。
10年債利回りも株価の反発と共に9/30の3.83%から10/4には3.62%まで低下したものの、週末にかけて再び上昇し、イールドカーブ全体としても前週末を上回って週を終えました。
私は先週前半の株式市場の反発に「まだ早い」と違和感を覚えていました。
ISM製造業景況指数や求人件数により景気が鈍化していることが示されましたが、それが即インフレの鈍化に繋がるとは限らないからです。
現在FRBは、利上げにより景気を抑えることでインフレを抑制することを目標としていますが、まだISMが50を下回っていない中では明確に景気後退していると言えません。
加えて9月FOMCではパウエル議長自ら「痛みを伴わずにインフレを抑えることはできない」と発言しまています。これは仮に景気後退したとしても、それを受け入れながら利上げを行っていくという覚悟であり、ISMが求人件数が鈍化したからと言ってそう簡単に揺らぐものではないと考えます。
まずは何よりもインフレ率の明確な鈍化が必要なのであり、現在見るべきは景気後退のシグナルではないと思います。
現にISM製造業景況指数や求人件数などの指標発表後にもFRB高官は下記の通りタカ派発言を繰り返しました。
・SF連銀総裁:コアインフレ減速や雇用の落ち着きなしではシフトダウン困難
・ミネアポリス連銀総裁:利上げを停止するのはかなり遠い先
・シカゴ連銀総裁:政策金利は来春までに4.5%-4.75%に達する可能性が高い
次週には米9月CPIの発表があります。
SF連銀総裁が示したように、足元で注目すべきなのはエネルギーや食品を除くコアインフレ率です。
投機が絡むコモディティ価格は景気後退を織り込んで落ち着きを見せてきており、第一段階はクリアしたと考えられます。次は実需要素が強いコア指標が落ち着きを見せるかが重要です。
一方でコア指標に注目が移ってきているということは、徐々にインフレの天井が見え始めてきているとも言えます。
今後はよりじっくり経済指標とFRB高官の発言内容に耳を傾け、また次週から本格化する企業決算へのインフレと利上げの影響を確認して行きたいと思います。そしてインフレ率の低下からの相場の転換点を見極めていきたいと思います。
以上