投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【9/26-9/30週の世界のリスクと経済指標】〜世界の金融の脆弱性に注意を払う〜

先週の評点:

 

リスク   -9点(21点):大幅悪化 (基準点30点) 

経済指標  -4点(58点):悪化 (基準点62点)

 

 

【リスク】

 先週のリスクはマイナス9ポイントの大幅悪化となりました。

ウクライナ東部・南部4州の親露派主導でロシアへの編入を巡る住民投票が行われ、賛成多数としてプーチン大統領が併合文書に署名し、併合を宣言しました。クリミア併合時と同様、既成事実を作って自国領として取り込みを図ることが想定されます。G7は併合を非難し、追加経済制裁を発表しましたが、現在のロシアにとっては効果は見込めません。国際秩序の後退が鮮明化しています。

 

 

【経済指標】

 先週の経済指標はマイナス4ポイントの悪化となりました。

注目のドイツCPI、ユーロ圏HICPは共に予想を上回り10.0%と加速し二桁台に載せました。一方でフランスは前月、予想共に5.9%に対して5.6%と鈍化しました。これでフランスは2ヶ月連続の鈍化となり、欧州内でもエネルギー政策の違いが影響しているのか、濃淡が伺えます。

 

また米PCEデフレーターは前月6.3%に対して6.2%とやや鈍化を見せましたが、コアデフレーターは前月と予想を上回り4.9%と加速を見せました。

世界的なコモディティ価格の落ち着きから、米国ではエネルギーと食品を除いたコアデフレーターの数値が重要になってきました。

 

次週は米ISM景況指数と米雇用統計の発表があります。

ISMはここ2ヶ月底堅さを見せており、それが継続するのか崩れるのか注目したいと思います。

雇用統計は市場予想は下振れとなっていますが、新規失業保険申請件数は減少しており、こちらも底堅さを見せる可能性があると思っています。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

 先週の株価指数も大きく反落しました。

米10年債利回りは一時4%を超え、それに連れる形で株価が下落し、ダウ平均は最高値から20%安で弱気相場入りし、S&P500・ナスダックは6月の安値を下抜けて年初来安値を更新しました。

先週は米国FRBの金融引き締めに対するタカ派姿勢に、英国の金融政策と財政政策のチグハグさが加わって市場が混乱した印象です。

 

 週明け早々にポンドが一時1.0384ドルまで売られ、それに対応して英中銀が利上げを行うと思いきや、代わりに英中銀は時限的な長期国債の購入を発表しました。英国債の急激な価格下落により、年金などの多くのファンドに大量のマージンコールが発生する可能性があったため、緊急措置として行われました。

それにより一旦は市場は落ち着きを取り戻しましたが、その後英トラス首相が自身の財政政策を擁護する発言を行ったため、再び先行き不透明となっています。

 

 また先週は米企業のナイキの6-8月決算でインフレによる運送費上昇や値下げ、為替の影響で収益が悪化したとして市場予想を下回り、12.81%安となりました。今後はナイキのようにインフレ要因による収益が悪化する企業が増加すると思われ、10月中旬から始まる3Q決算に注目したいと思います。

いずれにせよ見通しはまだ弱気を継続します。

 

 

〜世界の金融の脆弱性に注意を払う〜

 先週は多くのFRB高官の発言があり、どのメンバーも総じて金融引き締めを継続するタカ派な姿勢を見せました。

ハト派の筆頭であるブレイナード副議長も「インフレを抑制するため米政策金利をしばらく高く維持する必要がある」「時期尚早な転換は避ける」と引き締めの継続を訴えました。

またそれとと共に、「国境を超えた政策の波及効果が金融の脆弱性にどのように作用するか注意を払っている」とも発言しました。

 

つまりこれは米国ここ最近の急激な米国の利上げによる引き締めと、それによるドル高によって特に新興国がより苦しい状況に陥っていることを懸念してのことだと思います。

米国はインフレに苦しみ、それを抑えるためにFRBが懸命に舵取りをしていますが、米国が懸命に引き締めを続ければ続けるほど、相対的に弱い新興国の通貨は売られています。

その通貨安から考えられる新興国のリスクは下記の通りです。

 

①輸入品価格が上昇してインフレ圧力に繋がり、更に強い利上げが必要。

金利負担が増えることで政府、企業、個人の債務の持続可能性の低下。

③資金調達コスト増となり経済が弱体化。

④自国通貨建での対外債務が増加することによって利払い増加で歳出増。

⑤対外収支赤字化で外貨準備高が減少し、外貨建て支払い能力低下。

 

米国は米国でインフレに苦しみ厳しい状況にあり、それを解決するために引き締めを行なっていますが、その対策によって経済的に弱い国は更に苦しい状況になっていると思われます。

つまりそれは米国民の生活苦が回復するために、新興国はより厳しい生活苦を味合わなければならないという事実です。

実際にスリランカは4月にデフォルトを宣言し現在IMFに支援を要請していますが、バングラデシュラオスパキスタンなどの南アジアの貧しい新興国IMFに支援要請をしています。

これらの国々は単体では世界的な経済への影響は小さいかもしれませんが、仮にデフォルトが連鎖してくれば少なからず影響は出てくると思います。

また何よりもその国の人々の生活がままならなくなり、暴動が起き現体制の崩壊に繋がります。

それが新たな地域の治安悪化や民主主義の後退にも繋がっていくと思います。

 

そのため、このブレイナード副議長のコメントは非常に重要で、基軸通貨であるドルを持つ米国には、自国のみならず世界の金融に関して目を配っていく責任があると思います。

 

以上