【2023年7/31-8/4週の世界のリスクと経済指標】
先週の評点:
リスク 0点(30点):中立 (基準点30点)
経済指標 -15点(104点):大幅悪化 (基準点119点)
【リスク】
先週のリスクはプラスマイナスゼロの中立となりました。
先週はEUのフォンデアライエン委員長がフィリピンを訪問し、マルコス大統領と会談しました。会談では中国を見据えた海上安保での協力強化が表明されました。また経済面では欧州とフィリピンのFTA締結への取り組みも表明され、EUのインド太平洋での関与が強まりました。欧州主要国である仏独は中国への配慮からインド太平洋地域への関与に対して最近消極的ですが、NATOやEUなど欧州全体としては引き続き積極的な印象です。EUには仏独の消極姿勢に引っ張られず、引き続きインド太平洋地域への関与を継続して欲しいところです。
【経済指標】
先週の経済指標はマイナス15ポイントの大幅悪化となりました。
米ISM製造業景況指数、非製造業景況指数は共に低下し景気の落ち着きが示されました。また雇用統計も失業率と平均時給は強めに出た一方でNFPは低下を示しまちまちな結果となりました。
豪準備銀行は利上げが予想されていた中、サプライズで据え置きを発表しました。中国需要の鈍化もあり、景気後退リスクが懸念されていることが示されました。
【先週のマーケットの振り返りと考察】
先週の株式指数は上海総合指数以外は軟調となりました。米3指数も大幅に調整し、米ナスダックは2.85%安となりました。
先週の株価の動きの要因は下記の通りです。
・ISM景況指数が製造業、非製造業共に下振れて景気の悪化が示される。
・フィッチの米国債の格下げやADP雇用統計が強く出たことで長期金利が上昇。
・雇用統計でNFPが予想を下回ったことで長期金利は低下し、またAAPLの決算で売上高をミスしたことで景気悪化が意識される。
先週は米長期金利が大きく動き、株式市場を振り回しました。元々、前週の日銀のYCCの柔軟化に連れて長期金利が上昇しやすい状況でしたが、フィッチが米国債の格下げしたことや、米国債の四半期定例入札での中長期債の発行額引き上げが発表され債券が売られました。加えてADP雇用統計が予想18.9万人に対して32.4万人と強目に出たため、米景気の先行きの堅調さも意識され長期金利が大幅に上昇しました。
一方で金曜日に発表された雇用統計では失業率は3.5%、平均時給が0.4%と強さを見せたものの、NFPは下振れて18.7万人、前月の数値も下方修正されて18.5万人となりました。NFPは2ヶ月連続で20万人を切っており、雇用も確実に弱含んできていることが示されました。加えてこれまで市場を牽引してきたAAPLの決算で主力のiphoneの売上が主に米国で減少したことを受けて、景気悪化も意識されました。それにより一時4.2%まで上昇していた10年債利回りは急降下し、4%近辺まで一気に戻しました。
先週のこの長期金利の動きは、景気の堅調さと弱さが混ざり合っていることで軟着陸かリセッションか、掴みどころのない状況に迷っているマーケットの様子を表していると思います。労働市場はまだ堅調さを保っていますが、ISMは製造業は50割れが続き、非製造業も徐々に数値を下げています。またこれまでの米企業決算も強弱まちまちな傾向もあります。優等生だったAAPLやMSFTが決算発表後に売られる一方、期待が薄かったMETAやAMZNなどが買われるなど何とも言えない中途半端な雰囲気が漂っています。
その不透明感の表れか、株価指数は金利が上昇しても売られ、金利が下落しても売られと大幅に反落しています。S&P500が節目の4500を挟んでフラフラしていることからも、やはり利下げが明確に見えてくるまではここから上には抜けきれない状況が続くのではないかと思われます。
とは言え、ファンダメンタルズとしては、景況感は悪化し雇用もNFPは確実に低下してきており、徐々にではありますが、確実にインフレ鈍化の方向に向かっています。つまりはFRBが望んでいる通りの軟着陸に向かっており、FRBから利上げ停止のアナウンスがされる日もそう遠くはないと思います。
それを期待して引き続き株式50%の強気を維持します。
以上