投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【11/28-12/2週の世界のリスクと経済指標】~粘い強い雇用とソフトランディング~

先週の評点:

 

リスク   -1点(29点):小幅悪化 (基準点30点) 

経済指標  +5点(103点):良化 (基準点98点)

 

 

【リスク】

 先週のリスクはマイナス1ポイントの小幅悪化でした。

先週は中国において、当局の厳しいゼロコロナ政策に対して各地で若者を中心に代金ボナ抗議デモが発生し、かつ世界各地の在外中国人も抗議活動に参加する事態となりました。ここ最近は習近平氏の強い独裁体制により目立った抗議活動はなく、現体制に対する不満が噴出した形となりました。当局はゼロコロナ政策の緩和を示したため一旦の落ち着きを見せそうですが、若者の経済的不安が解消したわけではなく、不満は燻りそうです。

 

【経済指標】

 先週の経済指標はプラス5ポイントの良化となりました。

ドイツ、ユーロ圏のCPIも減速を示し、米国に続き漸くピークアウトの兆しを見せ始めました。ユーロ圏PPIも前回41.9%から30.8%と大幅に減速を示しました。

 

米国指標ではISM製造業景況指数は2020年5月以来の50割れで景気縮小となりました。

一方で注目の11月雇用統計では、NFPが予想20万人は上回りながら前月28.4万人から減少、失業率は3.7%と横ばいとなりました。一方で平均時給は予想0.3%に対し0.6%と上振れとなり、雇用の粘り強さを印象付けました。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】~粘い強い雇用とソフトランディング~

 先週の株価指数は、概ね堅調に推移しました。日経は週間で139円台から134円台へと3.46%(4.82円)円高となった影響もあり反落しました。一方で米国株式は11/30の講演にてパウエル議長が「早ければ12月にも金融引き締めペースを落とす可能性が高い」と示唆したことが影響し反発して週を終えました。

 

 週末の雇用統計では平均時給が前月0.5%、予想0.3%に対して結果0.6%と上振れし、NFPが予想20万人に対して26.3万人と上振れしました。ここ数ヶ月の景況感や住宅価格指数などソフトデータの悪化を受けて、マーケットは明確な雇用の減速を期待していたため、やや消化不良となった印象です。12/2の株式市場も雇用統計直後に一時ドル高株安で反応していたのはその表れだと思います。

 一方でNFPに関しては、今回も前回値の修正が入っており、それらを考慮して推移をグラフ化すると下記になります。

やや緩やかではありますが、確実に雇用者数は減速しています。

そもそも、雇用指標は遅行指標であり、先行指数であるISM景況指数は今月に入って漸く50を割り景気縮小を開始したばかりです。雇用指標の悪化は今後徐々に現れてくるものであり、ゆっくりと減速していくことはあってもこれから改善するとは考え難いです。基本的には今後も雇用は減速基調で推移すると思われます。

 

 また平均時給は増加していますが、現在レイオフのニュースとして流れてくるのは低金利下+コロナ禍で効率度外視で拡大を続けてきたハイテク企業の従業員、所謂ホワイトカラーです。一方で母数が大きく平均時給に大きく影響するブルーカラーレイオフに関してはまだ余り聞こえてきません。コロナ禍での死者が110万人にも上っていることや移民の流入減、現役世代の早期引退など、そもそも現在の経済規模に拡大に対して構造的に労働人口数がついていけていない可能性もあります。(米国の人口増加率は2020年には2.68%増加していましたが、21年には0.95%、22年には0.83%と低下傾向)

 

つまりは雇用は減速基調ながらも、粘り強さと共にゆっくりと縮小しながら落ち着いてくるソフトランディングの可能性が出てきたと考えられます。それはポジティブに捉えられます。

 

ついては引き続きマーケットに強気な株式60%、国内債券40%のポートフォリオを維持します。

保有株式資産がMSCIコクサイであるため、円ベースにすると株価の値上がりが円高に吸収されて増加せず我慢の時期となっています。しかし、日米金利差及び経済力の差がある上、テクニカル的にも日足200MAに到達しており、そろそろドル円ボラティリティが落ち着いてくるのではないかと推測します。

 

以上