投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【2023年8/28-9/1週の世界のリスクと経済指標】

先週の評点:

 

リスク   1点(31点):小幅良化 (基準点30点) 

経済指標  -3点(112点):小幅悪化 (基準点115点)

 

 

【リスク】

 先週のリスクはプラス1ポイントの小幅良化となりました。

先週は米国のレモンド商務長官が訪中し、李強首相や王文濤商務相などの中国政府高官と相次ぎ会談しました。半導体関連の輸出規制を中心とした対立が続く米中ですが、対中輸出を行う米国企業にも影響が出ています。今回の訪問はその緩和に向けて米中間の経済的な対話を再開させるためのものと考えられ、米国側が歩み寄った形となっています。中国は西側への輸出拡大での景気悪化からの回復、米国は24年の大統領選での支援に向けた経済界への配慮、が見え隠れしますが、いずれにせよ米中が歩み寄りを見せるのは偶発的な衝突を避けることにも繋がります。

またここに来て英国も米国同様クレバリー外相が訪中し、王毅外相と会談し、西側諸国の対中関係の緩和が目立ちます。

 

一方で中国が先週公開した自国の新しい領土や領海を示した新しい地図が、国境問題を抱えるアジア諸国の領地を自国領と示したことで反発を呼んでいます。従来は九段線だった領海地図も十段線に拡大しており、南シナ海のほぼ90%が中国の権益が及ぶとされています。9/5-7にかけてインドネシアASEAN関連首脳会議が行われますが、その直前での物議を醸す発表に、ASEAN会議での中国の動向に注目が集まります。

 

 

【経済指標】

 先週の経済指標はマイナス3ポイントの小幅悪化となりました。

先週は米国の重要指標が目白押しでしたが、雇用統計を始めとしてJOLTS求人件数など雇用系の指標は概ね悪化を示し、雇用過熱の落ち着きが示されました。

一方で7月PCEデフレーターは予想に一致も前月の3.0%から3.3%へと再び加速を示しました。またISM製造業景況指数も予想47.0に対して47.6と基準となる50は割れつつも回復を示しました。特に雇用指数は予想44.2に対して48.5と強さを示し、まだ粘り強さも残っていることが示されました。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

 先週の株価指数は堅調に推移しました。主要株価指数は全て大幅反発となりました。

先週はこれまで反落を続けていた中国株も、中国政府の打ち出した政策により4週ぶりに反発となりました。

 

先週の米国株式指数の動きの要因は下記の通りです。

・米7月JOLTS求人件数、消費者信頼感指数が大幅に下振れ。また4-6月期GDPも下方修正。経済指標が悪化を示してFRBの利上げ継続の観測が後退。

・8月雇用統計でNFPは18.7万人と上振れも失業率が3.8%に上昇、平均時給も0.2%と低下し雇用の落ち着きが見られる。

 

 先週は二つの側面から雇用の引き締まりの緩和が確認されました。

一つは需要サイドからの緩和です。7月JOLTS求人件数では予想946.5万件に対して882.7万件と21年3月以来の900万件割れとなりました。22年3月をピークに減少トレンドは続いていましたが、6月分も958.2万件から916.5万件に改定され、ここ数ヶ月でトレンドが明確になってきた印象です。

 

 一方、雇用統計からは供給サイドからの引き締まりの緩和が確認されました。

注目したのは労働参加率です。労働参加率は2022年初めから62%~62.6%の間で推移していましたが、8月雇用統計では労働参加率が62.8%となり、コロナ前の2020年2月以来の数値が示されました。この背景にはこれまで働くことを拒んできていた人々が、いよいよ働かざるを得ない状況になってきていることがあると考えます。

 31日に発表された米国の貯蓄率は前月の4.3%から3.5%に低下し、コロナ禍の現金支給で増えた米国人の過剰貯蓄がほとんど解消されつつあります。またここ最近の傾向としてクレジットカード債務残高が増加しており4-6月期の残高は過去最高の1兆ドルを超え、かつ延滞率も増加しています。

これまでコロナ禍での手厚い給付金により、サポートされていた人々が貯蓄率の低下とクレジットカード債務の増大により、労働市場に戻ってき始めたと考えられます。

 

 つまり需要サイドでは利上げの影響から徐々に景気過熱が落ち着いて来ており、かつ供給サイドでも供給制限が解決に向かって来ており、雇用需給の両方から過熱改善の兆候が見られます。また失業率は3.8%に上昇し、平均時給は0.2%と低下しています。NFPが予想17.0万人よりも上振れし18.7万人となりましたが、同時に7月は18.7万人→15.7万人、6月も18.5万人→10.0万人に下方修正されていることから下振れする可能性が高く気にする必要は薄いと思います。

これまで粘り強さを見せていた雇用ですが、急激に悪化することなく、ゆっくりと順調に鈍化傾向を示していると言えると思います。

 

雇用統計後にはISM製造業景況指数が上振れたため、雇用統計でのポジティブを打ち消し、株価は伸びませんでしたが、ファンダメンタルズは良好な状態を維持していると思います。

引き続き株価50%の強気のポジションを維持します。

 

以上