投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【2023年9/4-9/8週の世界のリスクと経済指標】

先週の評点:

 

リスク   -3点(27点):悪化 (基準点30点) 

経済指標  +3点(30点):良化 (基準点27点)

 

 

【リスク】

 先週のリスクはマイナス3ポイントの悪化となりました。

先週はインドでG20首脳会議が開催されましたが、プーチン大統領習近平主席が参加せず、世界平和にとって重要なポジションにある2カ国の首脳が参加しない、機能不全を露呈した会議となりました。議長国のインドはグローバルサウスの代表としてG20サミットの成功に並々ならぬ意欲を燃やし、AUアフリカ連合)のG20に合意するも、存在意義の低下が深刻となっています。

 

 また先週はASEAN首脳会議も開催されましたが、開催直前に中国政府より発表された新地図について、反発が見られジョコ・インドネシア大統領は「国際法を遵守すべき」と中国代表の李強首相に苦言を呈しました。一方で、日本に対しては日ASEANの関係を「包括的戦略的パートナーシップ」に格上げする共同声明を発表しました。ASEANとの関係性において明暗の別れた会議となりました。ただ、米国もバイデン大統領が今回も参加を見送り、代わりに派遣されたハリス副大統領は何も存在感を示せないまま終了したことから、米国とASEANの関係性も停滞が続いたままとなっており、こちらもこちらで課題が残っています。

 

 

【経済指標】

 先週の経済指標はプラス3ポイントの良化となりました。先週は重要指標の発表が少なかったですが、中国のサービス業PMIが低下を示した一方で、米国のISM非製造業景況指数は上昇を示し、米国景気の底堅さが示されました。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

 先週の株価指数は概ね低調となりました。

米国株は長期金利の上昇を背景にナスダックが大きく下げたことに加え、中小型株で構成されるRussell2000も大きく下げました。Russell2000の下げは、中小企業での金利上昇による資金調達コストの上昇や、収益そのものの低下が懸念されていると推測されます。

 

先週の株価の動きの要因は下記の通りです。

・企業の大量の社債発行が重しとなり長期金利が上昇。

・ISM非製造業景況指数が予想52.5に対して54.5と予想外に上振れし、高水準の金利維持の観測が高まる。

・中国政府が中国国内でのiphoneの使用制限を拡大することを発表し、AAPLが大幅反落。それに連れてハイテク株も反落。

 

 先週はLabor day後の社債発行ラッシュにより、米国債からより利回りの高い社債への切り替えが発生し、米長期国債に売り圧力がかかったため長期金利が上昇しました。加えてISM非製造業景況指数が予想外の上振れを見せ、かつ雇用指数も54.7と22年11月以来の高水準となったため、FRB金利水準を高いまま維持する観測が高まりました。

 また先週は中国政府が政府職員や国有企業などの職員に対してアップル製品を使用しないように命じたとの報道により、AAPLの株価が急落しました。中国国外への機密情報の流出を防ぐためと言われていますが、未だに自国内で多く製造されており、経済を支えているはずの製品を締め出す姿勢はサプライズとなり、株価の下落を招きました。

 

 上記のiphoneに対する措置のように、ここ最近、中国政府の既存の経済的、政治的な関係からの離脱に拍車がかかっている印象です。G20サミットではバイデン米大統領が米中首脳会談を呼びかける中、習近平主席は出席しませんでした。G20はG7などの西側諸国が多く参加する会議であり、中国に対立姿勢を取る欧米諸国と議論しても意味がないと軽視している様子が見て取れます。

 逆に8月末に行われたBRICS首脳会議には、わざわざ南アフリカまで足を伸ばして習主席自ら参加しています。BRICSには新たに強権政治的な6カ国を追加しその勢力を拡大しています。中国政府としては、決して折り合うことのない西側と不毛な議論をするよりも、反欧米の新たな枠組みで議論した方が有益だと考えているのでしょう。

 

 さらに中国政府はこれまで秋波を送っていたASEAN諸国に対しても、態度を変えてきた印象があります。G20サミットの前にASEAN首脳会議がありましたが、その直前に「新地図」を発表し、ASEAN諸国と国境問題を抱える地域を自国領土・領海として示しました。このタイミングでの発表は明らかな挑発行為です。

 

 これらから推測されるのは、BRICS上海協力機構など自らが主導する地域を超えた枠組みの拡大による、政治的、経済的な対立を抱える欧米諸国や、国境問題を抱える近隣諸国であるASEAN諸国との相対的な関係性の重要度の低下です。

中国には反欧米的な強権国家で結束された新しい枠組みがあり、そこでは自らが主導権を握り新しい秩序を生み出せる可能性があります。そこから来る自信が中国を従来の枠組みから自立させ、協調性を失わせているのだと思います。この傾向は今後も続くと思われ、対話の機会が失われていくことから、偶発的な衝突が懸念されます。

 

 ISM非製造業景況指数は予想外の上振れがありましたが、サマーシーズンのリベンジ消費でホテルやレジャー施設などで一時的に上昇した可能性もあり、少し様子を見る必要があると思います。また原油の上昇も同様の理由も考えられますが、サウジとロシアが減産を続けていることも影響しているため、その推移には注意する必要があります。

ただ、ファンダメンタルズ的には今のところ大きな変化とは捉えられず、引き続き強気のポートフォリオを維持します。

 

以上