投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【11/29-12/3週の世界のリスクと経済指標】〜後手に回るFRB〜

先週の評点:

 

リスク   -6点(30点): 悪化 (基準点36点) 

経済指標  +5点(116点):良化 (基準点111点)

 

 

【リスク】

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 先週のリスクはマイナス6ポイントの悪化となりました。 

 先週はオミクロン株が欧米を中心に世界各地で拡がりを見せたことで警戒が強まりました。またモデルナが既成ワクチンのオミクロン株への有効性が低いとの見解を示したことで不透明感が高まりました。ドイツではデルタ株での感染拡大も続いており、ワクチンの義務化に向けて検討が始まりました。

 

また滴滴出行の米国上場廃止と香港上場が伝えられ、中国当局が企業の海外資金調達よりも自国の情報統制を優先することが明確となり、その他の米国上場しているADR株の株価下落へも影響しました。

 

次週は米露のオンライン首脳会談や米国が主催する民主主義サミットがオンラインで開催され、その動向が注目されます。

 

【経済指標】

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 先週の経済指標はプラス5ポイントの良化となりました。

注目指標である米国のISMサービス業景況指数が予想65.0に対して69.1と大きく上振れを見せ、好調さを堅持しました。

 米雇用統計は、非農業部門雇用者数変化は予想55万人に対して21万人となり下振れましたが、一方で失業率は予想4.5%に対して4.2%と下振れしました。まちまちな結果となりましたが、失業率がFRBの目標であった自然失業率4.0%に限りなく近い値となり、雇用の改善の終わりが近いことを示しました。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】~後手に回るFRB

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 先週の主要株価指数は、前週からのオミクロン株への警戒に加え、FRBタカ派転換で米株を中心に続落しました。前週に続き、PERの高いナスダックと小型で弱いラッセル2000の下落が激しい傾向となりました。

 

 11/30の議会上院公聴会でパウエル議長は「テーパリングの早期終了を次回FOMCで議論するのは適切」「インフレが一過性であるという表現をやめるとき」という発言を行いました。そしてこれまでの雇用を優先してインフレを許容するスタンスから対インフレにシフトするという大きな方針転換を示しました。

 またパウエル議長に続き4人のFRB高官もテーパリング加速を支持し急激なスタンス転換を後押ししました。従来強いハト派であったSF連銀のデーリー総裁までもがテーパリング加速支持しているところに、FRBの焦りを感じさせました。

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それらを受けて先週はイールドカーブも大きくフラット化し、利上げを見込んで短い利回りは強く上昇した一方、景気減速を見込んで長い利回りは大きく低下しました。

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 ここ数ヶ月は、強いインフレから米国債イールドカーブはフラット化し続け債券市場は悲観視していましたが、株式市場は一貫して楽観し上昇していました。

3Q決算の好調さもありましたが、大前提として「インフレは一過性であり緩和は継続する」というFRBからのお墨付きが与えられていたからだと考えます。

 

しかし、今回パウエル議長は急遽そのお墨付きを撤回しました。

しかも行き過ぎたインフレを抑え込むため、想定よりも迅速な引き締めが行われる可能性も示唆しています。

そう考えると株式市場は債券市場との乖離が意識され始めた10月上旬のレベル(S&P500で言えば4300ポイント)まで調整する可能性も考えられます。

 

いずれにせよこの1週間でFRBの金融政策が後手に回ったことが明確となりました。

FRBはマーケットのコントロールを失いかけているように見えます。

FRBが再びそれを取り戻し、インフレ率が目標である2%に落ち着き、かつ企業業績が回復してくるまでは株価は伸びにくいと考えます。

ついては引き続き警戒を解かずに弱気スタンスを継続します。

 

次週は11月の米国CPIの発表があります。

予想は6.8%と上昇を示していますが、今後はよりインフレ指標の重要性が増してくるためその加速度合いに注目したいと思います。

 

以上