投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【2023年10/2-10/6週の世界のリスクと経済指標】

先週の評点:

 

リスク      -4点(26点):悪化 (基準点30点) 

経済指標    0点(87点):中立 (基準点87点)

 

 

【リスク】

 先週のリスクはマイナス4ポイントの悪化でした。

米国では前週末につなぎ予算が可決され政府機関閉鎖が回避されましたが、その可決に協力したマッカーシー下院議長が同じ共和党の保守強硬派の造反により解任されました。今回の解任は少数派である保守強硬派を納得させる案を出せなければいつでも解任される可能性を示したため、11月中旬に切れるつなぎ予算の承認はさらに難航する可能性が出てきました。

 また一時は落ち着いていた中東情勢ですが、この週末にパレスチナガザ地区を収める組織であるハマスにより、数千発のロケット弾と共にイスラエルに対して奇襲攻撃が行われました。稀に見る規模での奇襲攻撃で、イスラエルは虚をつかれた形となり一般市民に多数の犠牲者が出たため、イスラエルは戦争宣言を行い反撃に出ています。またレバノンを中心に活動する武装組織「ヒスボラ」もイスラエル北部より参戦との報道があり、戦争の規模が拡大してきました。ヒスボラはイランの支援を受けていることもあり、今後戦争相手国がイランに拡大するかが懸念されます。仮にそうなると戦争は長期化し、ウクライナ同様欧米はイスラエルも支援する必要があります。ただでさえウクライナ戦争でも弾薬が足りていません。ウクライナ支援のつなぎ予算も成立していません。それはインド太平洋地域が手薄になることを意味します。中国の台湾侵攻の実現性が増してきます。我々にとっても対岸の火ではありません。

イスラエルパレスチナの関係性は色々な悲劇の歴史が絡んでおり、ここまで衝突が広がってしまうと解決は容易ではありませんが、とにかく一般市民への被害が少なくなることを祈るばかりです。

 

 

【経済指標】

 先週の経済指標はプラスマイナスゼロの中立となりました。

ISM非製造業景況指数が下振れて悪化を見せる一方で、製造業はやや回復を見せてきました。またJOLTS求人件数が予想外に上振れ、雇用の堅調さを示しました。

雇用統計ではNFPは大きく上振れる一方、平気時給と失業率は減速を示しました。

米国の重要な指標が目白押しでしたが、全体的には強弱がまだら模様となっており、明確な方向性が見えにくい結果となりました。

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

 先週の株式指数はダウ平均が0.3%安となったものの、ナスダックは1.6%高、S&P500は0.48%高となり、9月に入って続いていた反落が漸く落ち着く兆しを見せました。

一方で、日経平均はこれまでの高騰の反動安、欧州株式は景気悪化を表してか、反落が続きました。

 

先週の株式市場の動きの要因は下記の通りです。

・JOLTS米求人件数が予想880万件に対し961万件と上振れたため、FRB金利を高水準で維持する観測が高まり長期金利が上昇し反落。

・ADP雇用統計が予想15.3万人に対して8.9万人に下振れ。またISM非製造業景況指数は予想に一致の53.6となり安堵感から長期金利が落ち着き反発。

・雇用統計でNFPが33.6万人と雇用の強さを示す一方、失業率は3.8%、平均時給は0.2%と減速を示す。一時長期金利が4.88%まで上昇するも徐々に値を戻して株式は反発。

 

先週も金利の上昇に振り回された週でした。

前週末に4.70%だった30年債利回りは4.96%まで上昇(5.33%高)、4.58%だった10年債利回りは4.79%まで上昇(4.72%高)となりました。

 

 前週までの長期金利の上昇は、インフレ期待、経済成長期待の織り込みであったと考えますが、先週はそれに加えて米国債へのリスクプレミアムが上昇したように感じます。金融ショック以降、米国はグローバリゼーションの恩恵による低インフレにより低金利を実現し、景気刺激でどれだけ国債を増発してもFRBが買い取り量的緩和することでその低金利を維持できました。

しかし、コロナショック後のグローバリゼーションの衰退により中国からのい労働力、ロシアからの安いエネルギーの供給が途絶え、かつ莫大な財政政策により需要が持ち上げられたことで世界が変わりました。高水準のインフレ下においては簡単には利下げできず、保有債券の満期時に再投資せず償還させる量的引き締めも続けなければならず、むしろFRBが売り方に回っています。一方で大盤振る舞いの財政政策は現在も続いており、米国政府は国債の増発を継続し米国債への売り圧力が増しています。加えて5月末の債務上限引き上げ法案や、前週末のつなぎ予算承認など、政治的な理由から米国債への信頼が揺らいでいます。それによってムーディーズでも格付けを下げようとする動きがありました。日本に次いで米国債保有する中国が残高を徐々に減らしていることも影響していると推測します。とにかく様々な状況から米国債の売り圧力が強く、買い手の不在が意識されたと考えます。

 流石に30年債利回りが5%を超えたところでショートカバーが入り金利は多少戻されました。しかし、これはコロナ禍やグローバリズムの衰退、米国政治の分断によって起こった構造的な変化であり、これらの要因がすぐに元に戻るとは考えにくいです。つまり先週の長期金利の動きは、高金利な世界が今後長く続くことを明確に示唆しているものだと考えます。一方で、長期金利がここまで上昇し実質金利が2%超え(10/6には2.5%)となっている以上、実体経済への引き締め効果も高まっていると考えられ、今後インフレ指標は確実に鈍化してくると思われます。市場が織り込むように利上げなし、来年6月からの利下げの可能性も現実的となってくると思われます。

また、先週金曜日の金利が上昇する中での株価の反発は、9月に入ってからの長期金利の上昇に漸くマーケットが慣れ始めた兆しだと考えます。

先週の長期金利の急上昇にはやや驚きましたが、ファンダメンタルは変化していないと判断し、株式60%の強気のポートフォリオは継続し、次週のCPIに臨みたいと思います。

またイスラエルで起こっているハマスとの戦争は、欧米各国が直接的に関わっていないだけに影響は少ないと思いますが、一時的に原油高や株安などになることが考えられるため、注意していきたいと思います。

 

以上