投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【2023年7/24-7/28週の世界のリスクと経済指標】

先週の評点:

 

リスク   0点(30点):中立 (基準点30点) 

経済指標  -15点(104点):大幅悪化 (基準点119点)

 

 

【リスク】

 先週のリスクはプラスマイナスゼロの中立となりました。

先週はオースティン米国防長官がパプアニューギニアを訪問し、5月に締結された防衛協定の運用についてマラベ首相と議論を行いました。協定は15年間有効でパプアの海軍基地や空港、港湾などの6拠点を使用できるようになっている模様です。小笠原諸島から連なる第二列島線に位置するパプアはインド太平洋地域では要衝であり、ソロモン諸島に接近する中国を牽制するためにも、米国の関与が強まっていることは重要です。また同時にブリンケン国務長官もトンガを訪問し、トンガ首相と会談し両国関係の強化を議論しました。米国はトンガに新たに大使館も開設しており、中国に対抗するためにインド太平洋地域での外交活動を広げています。

 

 一方で中国では、その外交を司る秦剛外相が原因不明のまま突如解任されました。前任の王毅氏が外相に復帰することとなったため、外交自体は問題ないと考えますが、駐米大使を経験し知米派であった秦剛氏の解任は様々な憶測を呼びます。

 

【経済指標】

 先週の経済指標はマイナス15ポイントの大幅悪化となりました。

欧州PMIは軒並み悪化が見られ、特にドイツの製造業PMIは38.8と欧州の急速な景気悪化が示されました。

それを受けてECBの政策金利発表では予想通り25bpsの利上げとなったものの、急速な景気悪化からか、「今後はデータ次第」と利上げ停止を見据えた発言に変わってきました。

 米国のFOMCでも予想通り25bpsの利上げとなりましたが、今後の利上げは「データ次第」との見解が示されました。PCEデフレータも前月3.8%から3.0%に低下し、コア指数は予想4.2%に対して4.1%と下振れも示されました。

 

次週は米ISM景況指数と雇用統計があります。雇用統計では、予想値では堅調な値が出ることが予想されていますが、堅調なのかそれとも利上げの影響から悪化が示されるのか注目したいと思います。

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

 先週の株価指数は概ね堅調に推移しました。特に上海総合指数や香港ハンセン指数などの中国株価は、中国共産党が中央政治局会議を開催し、下半期に景気刺激策に動くとの期待が浮上し大幅に反発しました。

 

先週の株価の動きの要因は下記の通りです。

FOMCにて25bps利上げも、今後の利上げに関しては「データ次第」で予想通りとなり無難に推移。

・MSFTが見通しが悪く下げるも、GOOGL、METAが好調な決算でテック系の回復が鮮明。

・日銀金融政策決定会合で買いオペ上限が0.5%→1%に変更されるもYCCは継続方針で不透明感が後退。

・米PCEデフレータ、コアデフレータが共に鈍化を示しインフレ低下を確認。

 

 先週はFOMCがありましたが、25bpsの利上げで事前の予想通りとなりました。また今後の利上げについても「データ次第」とフォワドガイダンスは示されませんでした。FRBとしてはインフレ目標2%は届いていないため利上げ余地を残していますが、マーケットは最近のインフレ率の低下から今回での利上げ停止を織り込んでいるため特にネガティブな反応とはならなかった印象です。

 

 また先週はYCC修正を巡って日銀金融政策決定会合に注目が集まりました。日銀はYCCの枠組みは変更せず緩和を継続しながらも、現行はYCC上限の0.5%としている指値オペの利回りを1%に変更しました。発表直後はドル円が138円前半までの円高日経平均は2%安と株安となりましたが、NY時間も含めて週を終えてみるとドル円は141円前半、日経先物も1%高となり市場は無難に織り込んだ印象です。

 

 今回の修正は1%が事実上の金利上限となるため、パッと見は「引き締め」とも捉えられる内容でした。しかし、現行YCCの上限は0.5%で変更せずにアナウンスメント効果は維持しています。今回修正した金利上限0.5%超えの容認は、あくまでも既に到達しているその水準で無理に抑えつけることをやめて市場経済の自律性を復活させることが目的です。また指値オペを巡った投機筋との無駄な対決を避けるためのものと解釈できます。そういう意味では今回の政策変更は、YCCの枠組みが外圧により破綻させられない様にするための柔軟化であり、これにより日銀がよりYCCを継続しやすくなったと理解できます。

 

 それが、「日銀は長期的に金融緩和を継続していく」というメッセージとして捉えられ、発表当初の円高株安から反転して円安株高に繋がったと考えられます。やや複雑な内容で解釈に時間がかかりましたが、こうして落ち着いて考えると、今回の日銀の政策変更は、現在考え得る最良の政策だったのではないかと思います。

今後の植田新総裁の手腕に期待します。

 

 米国では、比較的好調なハイテク企業の決算や4-6月GDPの上振れを背景に、景気をある程度維持しながらインフレが落ち着く「軟着陸」の観測も再び出始めました。

FOMC、日銀金融政策決定会合を無難に通過したこともあり、引き続き株式50%の強気のポートフォリオを維持します。

 

以上