投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【12/19-12/23週の世界のリスクと経済指標】~二重の引き締めによる日本の厳しさ~

先週の評点:

 

リスク   0点(30点):中立 (基準点30点) 

経済指標  +2点(36点):良化 (基準点34点)

 

 

【リスク】

 先週のリスクはプラスマイナスゼロの中立でした。

先週はインドネシアのジョコ大統領がベトナムを訪問し、両国間で懸案となっていた南シナ海でのEEZ境界を画定し、協力関係を前に進めました。その背景には南シナ海でのより強力な境界問題を抱える中国に対して歩調を合わせるとされています。インド太平洋での中国の増長を抑えるためにもASEAN内での両国の協力関係の醸成は重要だと思われます。

 

また、中国では全国的な抗議デモからゼロコロナ政策を急速に緩和していましたが、それと同時に新型コロナ感染が急激に拡がってきました。一説によると一日当たりの新規感染者数は3700万人にも上り、死者数も5000人と推測されています。医療崩壊も噂されており、再び中国経済が止まり、インフレに影響してこないか懸念されます。

 

 

【経済指標】

 先週の経済指標はプラス2ポイントの良化となりました。

先週は日銀金融政策決定会合が開催され、政策金利は-0.10%で維持されたものの、YCCの変動許容幅を従来の±0.25%から±0.5%に拡大する方針が示されました。防衛増税に加え、実質的な利上げとなり、今後の日本経済には打撃となりそうな政策が続きます。

 

日本のCPIも予想値の3.9%は下回ったものの、前月の3.7%よりも悪化し3.8%となりました。日本でも他の先進国に遅れながら確実にインフレが浸透してきました。

一方で米11月PCEデフレーターは予想に一致の5.5%も前月の6.1%からは減速を見せ、CPI同様インフレの鈍化を示しました。また、住宅着工件数も、減少幅は前月比で改善しましたが、3ヶ月連続の減少となり利上げによる影響が続いています。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】~二重の引き締めによる日本の厳しさ~

 先週の株価指数はまちまちな動きとなりました。米株指数はナスダックが下げましたが、ダウは上昇、S&P500はほぼ変わらずとハイテク株の弱さとバリュー株の堅調さが目立つ値動きとなりました。一方で日経225は、日銀がYCCの変動許容幅を±0.5%に変更したことで137円から一時130円台まで円高が進んだことで大幅反落となりました。円安を背景に業績を伸ばしていた日本企業の利益減少が意識された形です。

 

 先週の話題を攫ったのは何と言っても日銀のYCC変動幅の拡大による日銀の変心でした。16日に与党がまとめて23日に閣議決定された防衛増税に加えて、今度は実質的な利上げと、財政・金融の両面において引き締めと捉えられる政策が続いています。確かに中国・北朝鮮による有事の可能性が高まっている中では防衛力を強化することは必要です。またインフレ率が3.8%に達している状況では利上げは必要とも考えられます。

しかし、経済がコロナ禍から回復し、インフレ圧力が高まりようやく念願の賃上げに動きそうな様相の中、立て続けに経済を冷やす政策が財政、金融両面から打ち出されることに対して違和感を感じます。

 

 特にこのタイミングでの日銀のYCC変動幅の拡大はその狙いがはっきりと捉えられない印象です。日銀としては表向きは「利上げではなくYCCの歪みの是正」とし、イールドカーブで10年債利回りだけが凹んでいることを改善することとしています。このイールドカーブは企業が社債などを発行する際にもベンチマークとなるため、綺麗に右肩上がりとなることが必要、との背景があります。しかし、その是正が今このタイミングでの絶対に必要だったのかと言われると非常に違和感が残ります。

 

 日本のCPIは11月に3.8%に上昇していますので、インフレを抑えるための変更だったのかもしれません。日本のインフレ要因はコストプッシュ型で、急激に進んだ円安の影響です。実質的な利上げを行うことでドル円を引き下げ、インフレを抑えようという動き狙いもあったのかもしれません。しかし、ドル円は10月21日の為替介入以来、円安から円高トレンドに転換しており、米国の利上げのピークが見え始めている状況で更に性急に円高を加速させる必要性があったのか甚だ疑問です。

 

 今回の日銀の政策には岸田政権や財務省の圧力があったとの推測もされていますが、岸田政権にしろ財務省にしろ真の狙いがよくわかりません。

ただ、ここ2週間の出来事ではっきりしたのは、今後の日本経済の成長性は著しく失われることが予想されるため、日本株に投資する魅力が更になくなったということです。

また言い換えれば、日本に住み、日本企業に勤める我々の生活にも成長性が無くなり、成長する外国に比べて貧しくなるスピードが早くなるということです。国の政策には逆らいようがありません。しかし、せめて自らの資産と家族の生活を守るため、知識を高め自分の価値を高められるように成長していくしかないと、痛切に感じた週でした。

 

外国株式と日本国債に投資しているため、先週の日銀の政策変更による国債価格の下落と円高で、私の資産価値は下落しました。しかし、MSCIコクサイは先週はほぼ変わらず推移し、FOMCからの株価下落は落ち着きを取り戻したような気がします。インフレ指標は引き続き低下を見せているため、引き続き強気のポートフォリオを維持したいと思います。

 

以上