【2023年5/1-5/5週の世界のリスクと経済指標】
先週の評点:
リスク 2点(32点):良化 (基準点30点)
経済指標 4点(106点):良化 (基準点102点)
【リスク】
先週のリスクはプラス2ポイントの良化でした。
先週はフィリピンのマルコス大統領がフィリピン大統領としては11年ぶりにホワイトハウスを訪問し、バイデン大統領と首脳会談を行いました。マルコス大統領は就任当初は米中両国との関係強化を図ろうとしていましたが、ここに来て米国との距離が急接近しています。今回の訪米では米国のみならず、日本や豪州などを含めた多国間での防衛協力に向けて指針を策定していくことに一致しています。台湾有事を念頭に置いた際に地理的に重要なフィリピンが西側諸国寄りになることは、重要な一歩であり今後の同国の動向に注目されます。
【経済指標】
先週の経済指標はプラス4ポイントの良化となりました。
先週は多くの重要指標が発表されました。
まずISM景況指数ですが、製造業、非製造業共に前月、予想を上回り堅調さが示されました。特に非製造業は前月に大きく低下しましたが、再び上昇し基準値である50を維持しました。
またFOMCでは25bpsの利上げが決定され、利上げの打ち止めも示唆されました。一方でパウエル議長が会見で「インフレが高止まりすれば利下げはしない」と利下げまでは簡単には踏み込まない姿勢が示されました。
最後に雇用統計ではNFPと平均時給は前月、予想を上回り、失業率は3.4%と前月3.5%、予想3.6%を下回り、雇用の堅調さが示されました。
【先週のマーケットの振り返りと考察】
先週の株価指数はまちまちな動きとなりました。
米株指数はダウやS&P500は景気後退を受けて反落しながらも、AAPLの好決算に牽引されてハイテク株が伸長しナスダックは年初来高値を更新しました。
先週の動きの考えられる要因は下記の通りです。
・FRCに続いてPACWやWALなどの他の地銀の預金流失が懸念され株価が暴落。それにより景気後退が連想され景気敏感銘柄は反落。
・利下げは否定されながらも利上げの打ち止めが示唆されたためFOMCを無難に通過。
・AAPLの好決算と雇用統計の好調さが示されたため、足元での景気後退が否定されてショートカバーで全面的に反発。
先週は「不安」と「堅調」が交雑した複雑な週となりました。
週初めはFDIC主導によるJPMのFRC買収報道から開始され、一旦は銀行問題が落ち着きを見せたかに思えました。しかし、問題はFRCに止まらず、次の不安要素としてPACWやWAL、FHNなどが売り浴びせに遭い、それぞれ週足で43%安、26%安、37%安となりました。それらの動きをきっかけに景気後退不安が再燃しました。
一方で雇用統計ではNFPは予想16万人に対して25.3万人、失業率は予想3.6%に対して3.4%、平均時給も前月・予想共に0.3%に対して0.5%と好調さを維持しました。前週に示された雇用コスト指数も増加が示されており、雇用はまだ景気後退を織り込んでいないことが証明されました。
また先週決算発表のあったAAPLもiPhoneの回復から売上高、EPS共に予想を上回り好決算となりました。これで大手ハイテク企業決算は概ね予想を上回り、景気後退の懸念がある中でも逆に回復傾向が示される形となりました。
そしてFOMCでも「インフレが高止まりすれば利下げはしない」との発言がありながらも、利上げ停止は「近づいている感触、すぐそこの可能性も」との示唆があり、ここでも不安と堅調が混在している様子が示されました。
これらを受けて、株価は週頭からFOMCを挟みながら木曜日まではずるずると反落しながら、金曜日にはAAPL決算と雇用統計を受け大幅反発するなど方向性に欠ける動きとなりました。
一方向に景気後退に進むのであれば分かりやすいのですが、ここまで雇用と企業業績が底堅さを見せるとFRBがインフレ率2%に向けての引き締めの手を簡単に緩められるとも思えません。加えて債務上限問題も重くのしかかってきています。先週はイエレン財務相が6/1にも債務不履行となる可能性を指摘し、よりそのリスクが明確になってきた印象です。
FOMCでは利上げ停止が示唆され相場の転換点が近いことが示されたものの、同時に今後の金融政策については「入ってくるデータと経済見通しに基づいて会合毎に決定していく」と明確に示されませんでした。言い換えればFRBですら現在の状況は不確定要素が多いため慎重にならざるを得ず、見通しを示せない状況です。
ついては、まだ無理に株式を増やしてリスクを取りに行く状況ではないと考え、引き続き株式30%の弱気ポートフォリオとします。
次週は米国のCPI、PPIの発表があります。銀行問題がインフレ率にどのような影響を及ぼしているか注目したいと思います。
以上