投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【2023年6/19-6/23週の世界のリスクと経済指標】

先週の評点:

 

リスク   -1点(29点):小幅悪化 (基準点30点) 

経済指標  -19点(56点):大幅悪化 (基準点75点)

 

 

【リスク】

 先週のリスクはマイナス1ポイントの小幅悪化となりました。

先週はブリンケン米国務長官が訪中し、習主席とも会談して米中首脳会談の地ならしを行いました。しかし、その直後にバイデン大統領が講演にて習氏を「独裁者」と表現したことで歩み寄りの気運に水を差す形となりました。バイデン大統領は失言で有名ですが、両国関係が改善に向かおうとしているタイミングでの不用意な発言は、世界からの信用を無くしかねない行動となりました。

 一方で関係強化に努めるインドのモディ首相が国賓待遇で米国に招かれ、米印首脳会談が行われました。会談では戦闘機用エンジンのインドでの共同生産やドローンの供給などの防衛協力で一致しました。対中国においてインドは魅力的なパートナーであるために、今回の協力関係強化は歓迎されるべきものであったと思います。一方で、自らを民主主義国と標榜しながらも宗教問題や人権問題を抱え、またロシアとも関係を保つインドに対して、米国がどこまでビジネスライクに許容できるか、今後試されていくと思います。

 

【経済指標】

 先週の経済指標はマイナス17ポイントの大幅悪化となりました。

先週は英国のCPIが鈍化予想に対して前月と変わらず8.7%を維持しました。それを受けてBOEは25bpsの利上げ予想に対して50bpsのサプライズ利上げを行いました。

また、欧州のPMIでは、製造業はおろか、これまで堅調さを維持してきたサービス業も軒並み低下し、ECBの利上げを受けて景況感が徐々に悪化してきたことが示されました。今後これらの悪化が雇用に移り、インフレに移っていくことが予想されるため、より注目していきたいと思います。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

 先週の株価指数は全体的に軟調となりました。

日経平均、ナスダックは週間で久しぶりの反落となりました。

 

先週の株価の動きの要因は下記の通りです。

・パウエル議長が議会証言で年内にあと1回か2回の利上げを示す。

・英国CPIが依然高止まりしており、BOEがサプライズの50bps利上げ。

中国経済の回復遅れに対して中国人民銀行が利下げするも、予想よりも利下げ幅が少なく失望を誘う。

・6月の欧州PMIでの欧州景気の失速傾向が顕著に。

 

 先週はパウエル議長が議会証言を行い注目を集めましたが、年内にあと1回か2回の利上げが必要になる可能性を改めて示唆されました。それを受け株価は頭が重くなりましたが、内容的には前週のFOMCでのスタンスと何ら変わっておらず、新たな材料にはなっていません。

 

 一方でイギリスのCPIが鈍化の事前予想に反して前月と変わらず8.7%と高止まりし、それを受けたBOEがサプライズの50bps利上げに踏み切りました。またノルウェー中銀も予想に反して50bps、スイス中銀も25bpsの利上げを実施し、欧州での利上げ継続の傾向が見られました。週末の株価はそこから世界的な引き締め継続が意識され反落した印象です。

 

 ただ、英国のインフレ率の高止まりは、ブレグジットを経た英国固有の問題の可能性が高く、欧州全体で見るとCPIは確実に低下してきています。またPMIで示されたように、中国需要の低迷もあり既に製造業PMIはドイツを中心に相当収縮しています。さらにサービス業PMIも50は超えているものの、製造業景気の収縮と利上げの効果で低下傾向が顕著になってきました。従って今後も欧州全体のインフレ率はこのまま鈍化するものと思われます。

 

 また、高インフレが残る欧米とは対照的に中国経済ディスインフレが深刻です。ゼロコロナ後にも戻らない需要を喚起するために、先週は人民銀行による利下げが行われました。しかし、予想よりも小幅に止まり、米中対立に加えて利上げが続く欧米との金利差拡大で資金逃避が懸念される中では、思い切った利下げもできないジレンマが浮き彫りになりました。中国景気もすぐには回復せず、当分中国のディスインフレが欧米各国にも波及してくることが考えられます。

 

従って、先週の下げはこれまでの上昇相場での一旦の落ち着きを見せただけで、ファンダメンタルズは変わっていないと考えます。引き続きインフレ鈍化からの利上げ停止は近いと考え、株式50%の強気のポートフォリオを継続します。

 

以上