【2023年2/13-2/17週の世界のリスクと経済指標】
先週の評点:
リスク +2点(32点):良化 (基準点30点)
経済指標 +3点(65点):良化 (基準点62点)
【リスク】
先週のリスクはプラス2ポイントの良化でした。
中国の偵察気球問題で関係が悪化していた米中ですが、米国・カナダ領空で撃墜した3体の飛行物体は中国の証拠がないとして、中国の習近平主席と協議する意向を示しました。気球問題で冷や水を浴びていた米中対話が再び再開への軟化の姿勢を示し始めました。訪中を取りやめていたブリンケン国務長官もミュンヘン安全保障会議で中国の王毅氏と接触する報道も出ています。
一方で南シナ海では、中国海警局の艦船からフィリピンの警備隊の巡視船に対してレーザー照射されたことで、マルコス大統領が在比中国大使館に抗議しました。マルコス大統領は1月に訪中し、南シナ海での領有権を巡って協議していくこととしていましたが、早速対立が生まれています。
【経済指標】
先週の経済指標は、プラス3ポイントの良化でした。
米国はCPI、小売売上高、PPIと消費系の指標が発表されました。CPI、PPIは前月の数値からは低下しインフレの鈍化傾向は維持しましたが、どちらも予想を上回り鈍化の勢いの低下も示されました。
また小売売上高は前回-1.1%からも大幅に改善し、かつ予想の1.8%も大幅に上回る3.0%と消費需要の底堅さも示されました。
【先週のマーケットの振り返りと考察】
先週の株価指数はまちまちでした。ダウ平均、S&P500が前週に続き続落するもナスダックは反発となりました。一方でま欧州株式は英FTSE100と仏CAC40が最高値を更新するなど好調な動きとなりました。
〜エネルギーの影響力〜
さて、先週は米CPI、PPIにてインフレ鈍化の勢いの低下が見られました。
その結果、金利は利上げ継続を織り込んで短期を中心に上昇、10年債利回りも前週末の3.74%から3.82%に上昇しました。FedWatchでもターミナルレートが5.25%に切り上がり利上げの継続が意識されました。金利の影響を強く受ける為替は大きく動き、ドル円は前週末の131.41円だったのが、一時135円にタッチしながら134円台前半で週を終えています。
一方でナスダックはプラス、ダウ、S&P500も小幅反落と、インフレ率が予想より強く出で金利が切り上がった割には株価は動かなかった印象です。インフレは確実に低下し、また小売売上高が強く出たことで、深刻な景気後退に陥らずに「ノーランディング」で景気を維持できる、と楽観が勝っているように感じます。
しかし、今回のCPIを細かく紐解いて見ると、そもそも「インフレが確実に低下している」という前提もやや危うさを感じる見方ができます。
下記はCPIの内訳を前月比で比較したグラフです。
CPIの内訳の中で影響力が大きいのはエネルギーとサービスです。こうして見るとサービスのインフレ率は安定していますが、エネルギーはブレが激しく、ウクライナ侵攻が始まった昨年3月やインフレがピークを迎えた6月には大きく伸びています。また7月以降はエネルギーのマイナスが続いており、インフレの鈍化に強く影響を及ぼしていたことがわかります。そして直近の1月CPIでインフレ鈍化の勢いが落ちたのは、エネルギーがやや上昇したことが影響していると言えると思います。つまりCPIの変数としてはやはりエネルギーに左右されやすいと言えます。
今冬は欧州が記録的な暖冬だったこともあり、エネルギー価格は足元では安定していますが、まだ寒波が来ないとは限りません。また西側諸国がロシア産ガスや原油の購入に制限をかけていることもあり、エネルギー価格はかつてのように下がりにくい傾向にあります。中国が景気回復するのであればエネルギー需要も増える傾向にあることを考えられます。
ここまでは主にエネルギーの価格鈍化によってインフレ自体が順調に鈍化してきましたが、上昇要因も考えられここから先は一筋縄ではいかない可能性があります。
足元では米国景気が堅調であることに対する楽観が強く、株式は堅調です。しかし、今後、「ノーランディング」で業績相場に移行する、もしくは利下げで金融相場へ移行する、と短絡的に考えるには不確実性が高いと感じます。本格的な上昇局面にはまだまだと考え、警戒を強めながら日々のニュースを追っていきたいと思います。
以上