投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【2023年2/20-2/24週の世界のリスクと経済指標】

先週の評点:

 

リスク   -2点(28点):悪化 (基準点30点) 

経済指標  +6点(102点):良化 (基準点96点)

 

 

【リスク】

 先週のリスクはマイナス2ポイントの悪化となりました。

米PCEデフレーターが前回5.3%に対して5.4%と再加速を示しました。前週のCPIでは予想に上振れも鈍化傾向に変化はありませんでしたが、今回のPCEデフレーターでは明確な加速となりました。ここまで順調に低下してきたインフレ率が、ここに来て下げ止まりの傾向が見られるようになり、利上げ停止が遠のいたことでリスクが高まりました。

 

またロシアのウクライナ侵攻開始から1年を迎え、国連総会やG20財務相会議でロシアを非難する決議や共同声明の採択が検討されました。国連総会では採択文言を弱目にしたため賛成国は多かったものの、インドなどのグローバルサウスなどの国々は相変わらず棄権に回りました。またG20財務相会議では中露の反対により共同声明見送りの事態となり、国際会議の手詰まり感と分断の継続が続いています。

 

【経済指標】

 先週の経済指標はプラス6ポイントの良化となりました。

先週は欧米のPMIの発表がありましたが、製造業PMIは停滞が続くものの、サービス業PMIは仏独ユーロ英米が軒並み50台を回復し、サービス業の強さを見せつけました。

また米国のPCEデフレーターでは再び加速が示され、インフレ率の下げ止まりが示されました。

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

 先週の株価指数は、当局が銀行への資金供給を拡充し緩和政策を進めた中国以外は概ね軟調となりました。特に年初来大幅な上昇を続けてきたナスダックは3.33%の下落となりました。

 

先週の株式市場の下落の要因まとめると下記の通りとなります。

 

・前週の米CPI予想への上振れを受けて警戒感が高かった。

・サービス業PMIが好不況の境目である50を予想外に回復しサービス業の強さが示される。

・PCEデフレーターが予想に上振れした上に再加速を示しダメ押し。

 

前週は米CPI予想への上振れを受けながらも、「ノーランディング」を予想する雰囲気から株式の下落が限定的でした。しかし、火曜日のサービス業PMIの予想外の強さからインフレ率の下げ止まりが意識されセンチメントが悪化し始めました。そして金曜日のPCEデフレーターが予想に上振れだけに止まらず、現実的にインフレの再加速を示したことでトドメを刺された形となりました。

 それによりFedWatchでも年内利下げが示されなくなり、マーケットの楽観も徐々に解消してきた印象です。またターミナルレートは5.25-5.50%に上昇し、FRBが予想する年末金利5.125%が現実的どころか上回る可能性も示され始めています。

 

これにより10年債利回りも一時4%に迫る勢いで上昇し、3.95%で週を終えています。前回FF金利の上昇局面で同水準に10年債利回りが到達した22年9月末〜10月中旬には、S&P500が直近安値の3600ポイントとなっていました。単純比較できるものではありませんが、現在は当時よりも金利水準が高い上にインフレの収束が見えず、かつS&P500のEPSも現時点で前期比4.8%減と企業収益も20年3Q以来初めて悪化しています。そう考えると現在の3970ポイントは、まだ割高であると考えられます。

また売上高、EPS共に予想を上回ったとは言え、NVDAが一晩で14%高となったことも未だマーケットが緩んでいることを示唆していると思います。

 

欧米を中心に引き締めを強めていますが、ここまで利上げしても粘着質なインフレが続いています。一方で日本は日銀の次期総裁候補も緩和継続の方針を示し、中国は銀行に対する資金供給を拡大し緩和政策を強めています。世界の経済規模2位、3位の国々が緩和を続けていることも影響している可能性があります。

 

そう考えるとインフレの高止まりは長期化する可能性が高く、まだまだ強気になれる状況ではないと思います。

 

以上