【3/16-3/20週の世界のリスクと経済指標】〜ヘッジファンドの換金売り VS 中央銀行の緩和政策〜
先週の評点:
リスク -6点(36点):大幅悪化 (基準点42点)
経済指標 -12点(63点):大幅悪化 (基準点75点)
短期の相場感:弱気
長期の相場感:弱気
【リスク】
先週もCOVID-19のヘッドラインに揺らされた一週間でした。
中国では震源地となった武漢市および湖北省でも新規感染者がゼロになったとの発表があった一方で、イタリアではついに死者数が中国を上回り、世界全体でも1万人を超えました。
特に欧州のイタリア、スペインでは医療崩壊が伝えられており、死者数が急増しています。
全米の感染者数も1.5万人を超え、NY州(NY市)、カリフォルニア州(ロス)、イリノイ州(シカゴ)の3大都市圏にて外出制限措置が取られる事態となりました。
また、COVID-19の影響で、ブレグジットに関わる交渉も停まっています。
全体としては先週もCOVID-19の悪化が強い影響を及ぼし、マイナス6ポイントの悪化としました。
【経済指標】
先週は金融システムの崩壊を防ぐために各国の緊急利下げが多く発表された週でした。
代表的なところでも日銀、FRB、RBNZ、BOE、RBAで政策金利が緊急発表され、新興国各国もそれに続きました。
また、先月までは比較的安定していた指標に急激な悪化が確認されています。
当然の話ですが、各国の指標が2月末からの景気の悪化を急速に織り込んできています。
全体としては指標の急激な悪化が影響し、マイナス12ポイントの大幅な悪化としました。
【3/16-3/20の振り返りと次週の展望】
①株価の動きについて
先週の各株価指数の週足の値動きを添付します。
週足では米国株価指数とブラジルボベスパの下落幅の大きさが目立った週でした。
日経と欧州勢は既に前週に大幅に下げていたのとドル高が影響していたのか、米国に比べると思いの外下げませんでした。
次に2020年高値から3/20終値の比較を添付します。
こうして見ると日経、米国、欧州は高値からは概ね同じような下落率になっていることがわかります。
また、ロシア、ブラジルの産油新興国の株価の下落が激しいことがわかります。
(そして何故か中国は下げなさ過ぎです。)
両国は原油安と通貨安により経済が激しく痛んでくることが織り込まれています。
②先週の相場の特徴
先週は、前週のアウトプットでも挙げた株以外の資産(債券、金、円)の換金売りの流れを受けて、先進国を中心に各国中央銀行が大きく動きました。
各国中央銀行の動きを下記に添付します。
3/9以来、原油安を発端とする急激な株価の急落によりハイレバレッジで運用していたヘッジファンドに大量の追加証拠金が発生したため、米ドルキャッシュが不足しました。
そのため株価の下落時に安全資産とされる債券、金、円その他通貨すらを売っても米ドルを求める勢いが止まりませんでした。
このままの状態が進めば全ての資産が下落し、マネーを融通して経済を回していく金融システム自体が破綻する危険性があります。
そのため大量の資金を供給してドル不足を解消しようと、各国中央銀行は矢継早に大規模な金融政策を発表しました。
正にヘッジファンドの換金売りVSそれを食い止めようとする中央銀行の金融緩和の様相を呈しています。
その効果か、3/9以来逆の相関をしていた米国債10年利回りが3/18から、GOLDが3/19から漸く本来の相関関係に戻りかけている兆しを見せています。
ドル円に代表される通貨はまだドル高傾向にあり、株価下落時にドル安になる相関に戻っていませんが、仮に次週、通貨がドル安に振れてくれば金融システムの破綻を一旦は回避できたことを確認できると思います。
次週は換金売りがターニングポイントを迎える「債券利回り」「GOLD」「ドル円」の動きに注目していきます。
③今後の展望
一方で、上記で述べた、現時点における各国中央銀行が発表した金融政策の目的はあくまでも金融システムの安定化であり、それによる株価の戻りは限定的だと考えます。
仮に上記で述べた全資産の換金売りが収束し、金融システムが機能してくる様になってくると、これまで現金として滞留していた資金が流れるべきところに流れるようになってくると思われ、債券価格上昇、GOLD上昇、ドル円下落、そして株価下落という動きに素直に反応してくると考えます。
また、そもそも今回の3/9からのパニック売りのきっかけとなった原油価格は一段と下落し、一時は20ドルを割りながら3/20終値では23.40ドルとなっています。
3/19にはトランプ大統領がロシア・サウジアラビアの原油を巡る対立に対して仲裁の意向を示したことで、一時25ドル近辺に戻しましたが、週末にかけて再度下落しています。
それに従って米ハイイールド債利回りも前週末からさらに1.73ポイント上昇しています。
原油安から来る危機は悪化しており、産油国同士のチキンレースはより激しさを増しています。
産油国がチキンレースを止めるために調整を計らない限り、引き続き負けた国を発端として悪影響が出て来る可能性が高いと思われます。
また、やはりCOVID-19が米国本土や欧州で日々拡大を広げており、人々の活動を止めているので実体経済への影響が重くなってきています。
ついては次週の見通しとしては下記の通りです。
短期:弱気のスタンス
換金売りが収まれば、株価はボラティリティは収まりながらも下値を探る展開
換金売りが続けばボラティリティが高いまま下値を探る展開
長期:引き続き弱気のスタンス
底値を探る展開
最後に各国の財政政策についても一覧にまとめたので参考までに添付します。
以上