【5/4-5/8週の世界のリスクと経済指標】〜テック企業の底堅さ〜
先週の評点:
リスク 0点(42点):中立 (基準点42点)
経済指標 -27点(60点):大幅悪化 (基準点87点)
短期の相場観:やや強気
長期の相場観:強気
【リスク】
先週は、COVID-19の拡大について先進国での新規感染者数がピークアウトしたことで、経済活動の制限緩和の動きが一層活発になりました。ドイツでは一部小規模商店のみとしていた営業再開を大規模商店も含めた全店店舗での営業再開、またプロサッカーリーグの再開へと緩和を強めました。
また、前週の米FDAでのギリアド社のレムデシビルの緊急使用認可に続き、先週は米製薬大手ファイザー社でもワクチンの臨床に入ったとの報道があり、徐々に具体的な治療薬やワクチン実現に向けた動きが活発になってきました。
一方でイラン、ブラジル、ロシア、インドなどの新興国での感染が急速に拡大しました。
ロシアでは軍や病院でのクラスター感染が相次ぎ、9日間連続で新規感染者数が1万人超え、ブラジルでも貧困層での感染が拡大し直近で1万人を超えています。
5/8には新興国全体で1日5万人の新規感染者数を記録しました。
COVID-19に関しては先進国での経済活動制限の緩和、ワクチン開発の進捗で良化と評価しましたが、新興国での拡大から経済悪化の深刻化が気がかりです。
また、米中対立に関しては、米大統領戦を睨んでトランプ政権が自らのCOVID-19対策の初動の遅れの責任を逸らすために中国批判を続けており、注意が必要です。
5/8にUSTRと中国当局により電話会談が行われ、事前の米国側からの発言内容から先鋭化することが懸念されましたが、ひとまずは穏便に終了した模様です。
全体としてはCOVID-19のポジティブを米中対立のネガティブが打ち消し、中立としました。
【経済指標】
先週は米国の重要指標であるISM非製造業景況指数、雇用統計の発表がありました。
ISM非製造業景況指数は事前予想よりは良かったものの、サービス業の需要と雇用の急減で11年ぶりの低水準となりました。
また、雇用統計は非農業部門雇用者数がマイナス2050万人と史上最多、失業率は14.7%と史上最高を記録しました。
ただ、どちらも既にマーケットは織り込み済みで、株価への影響は限定的でした。
一方で中国は貿易収支が大幅改善、サービス業PMIも予想値には達しなかったものの底打ちしており、COVID-19収束からの活発な動きを示しました。
全体としてはその他の欧米の指標も悪化を示したため、マイナス27ポイントの大幅悪化となりました。
【先週の振り返りと次週の展望】~テック企業の底堅さ~
先週もポジティブ要因とネガティブ要因が入り乱れた印象ですが、株価は全体的に上昇傾向にありました。
特にテック企業やバイオ企業を含むナスダックが週明けから続伸し続け、週足では6%の上昇となりました。これでナスダックは2月の最高値にあと7%と迫っています。
テック企業の代表格であるGAFAMは、コロナ禍のテレワーク環境の中で圧倒的な強みを発揮し、1-3月期決算も前年同月比増収で堅調に推移していることが支えになっているものと思われます。
ここで現在のポジティブ要因とネガティブ要因を挙げてみます。
今回はそれぞれの要因に対して独断で3:強、2:中、1:弱と影響度を加味してみました。
ポジティブ要因:
①欧米でのCOVID-19による新規感染者数の伸びの鈍化により、経済活動再開に向け制限緩和が進む
:2ポイント(中)
②米国でレムデシビルが治療薬として使用開始、米製薬大手ファイザーもワクチンの臨床試験開始
:2ポイント(中)
③コロナ禍の中、マイクロソフトを中心とした米テック企業の決算が順調:3ポイント(強)
合計:7ポイント
ネガティブ要因:
①米中対立が激化の可能性。ただし、直近のUSTRと中国代表の電話協議では貿易合意履行に向けて無難な
会談があり懸念が一時後退:2ポイント(中)
②実体経済が過去最大級に悪化。経済活動の停止によりサービス業を中心に労働人口の8人に1人が
失業中:2ポイント(中)
③イラン、ロシア、ブラジル、インドなどの新興国での急速なCOVID-19感染拡大により経済悪化懸念が
深刻化:2ポイント(中)
合計:6ポイント
上記の通り、現時点ではポジティブ要因が7ポイント、ネガティブ要因が6ポイントと1ポイント上回ったため、次週のファンダメンタルから来る短期相場見通しはポジティブと判断します。
やはりテック企業の底固さから突出した強さを見せるナスダックがどこまで伸びるのかに注目したいと思います。
当面の大きな懸念点は米中対立問題ですが、5/8の電話会談を無難にこなしたことで、一旦は大きな動きにはなりにくいのではないかと考えます。
引き続き注意が必要ですが、恐らく頻発するであろうトランプ大統領の中国に対するネガティブコメントはある程度マーケットは織り込んできていると考えられます。
4月中旬に半値戻しを達成してからレンジ相場に入っていた株価指数ですが、ナスダックの上昇に連れて
日経、ダウも上昇傾向にあり、4月末の直近高値を抜けるかどうかがポイントかと思います。
[短期] やや強気
上述の通り、短期はやや強気のスタンスとします。
ナスダックを注目しながら、日経、ダウの直近高値の上抜けを確認したいと思います。
[長期] 強気
長期投資のポートフォリオは引き続き、強気のスタンスとします。
一方で先週はファンダメンタルが急速に悪化しているブラジル株ETFを売却し、米国株投信に移し変えました。
ただ、やはりナスダックの強さを目の当たりにし、その分を再度ナスダックへ移し変えることを検討します。
(米国株式35%、日本株式25%、国内債券30%、金6%、REIT4%)
以上