投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【5/11-5/15週の世界のリスクと経済指標】〜米中対立激化とWHO総会〜

先週の評点:

リスク   1点(43点):小幅良化 (基準点42点) 

経済指標  -32点(67点):大幅悪化 (基準点99点)

 

短期の相場観:やや弱気

長期の相場観:強気

 

【リスク】

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先週はCOVID-19に関しては世界的に感染者は拡大しつつも、欧米先進国では新規感染者の鈍化を見て徐々に規制解除の動きが出てきました。

米国で一番感染者数が多かったNY州でもNY市以外の一部地域で経済活動を再開、英国でも一部外出規制緩和、日本では39県にて緊急事態宣言が解除されることとなり、経済活動再開が進みました。

中国、韓国などでは第2波が観測され予断は許しませんが、COVID-19に関しては明るい兆しが見えた1週間でした。

 

一方で米中対立は米国が急速に先鋭化してきている印象があり、米中関係に溝が深まってきました。

14日にはトランプ大統領がインタビューで「習近平主席と話したくない」と話し、中国との断交も示唆しました。また、同じく14日に米議会上院にて中国ウイグル自治区での中国政府の弾圧について対中制裁発動を認める法案を可決しました。

また、連邦職員年金の中国株式への投資中止も検討していると報道がありました。

中国側の反発も必至で、米中対立が激化してくる観測が広がりました。

 

全体としてはCOVID-19関連のポジティブとサウジの追加原産のポジティブが米中対立での悪化と香港情勢のネガティブを若干上回り、1ポイントの小幅良化としました。

 

 

【経済指標】

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前週に引き続き、欧米の経済指標は言わずもがなほぼ悪化でした。

アメリカのCPIコア指数は-0.4%PPIコア指数も-0.3、小売売上高に至っては-16.4%と過去最大を更新し、米国経済にとって最も重要な「消費活動」が大きく痛んでいることが改めて示されました。

一方で中国は鉱工業生産や小売売上高が若干上向いており、経済活動が動き始めていることを示しました。

米国も先行指標である5月のNY連銀製造業景気指数やミシガン大学消費者態度指数は、悪い数字ながらも先月よりも上向き始めており、わずかながら経済活動の再開による明るい兆しも示していると思われます。

 

全体としては欧米の指標悪化に伴い、マイナス32ポイントとなり大幅悪化としました。

 

 

【先週の振り返りと次週の展望】~米中対立激化とWHO総会~

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前週のナスダックの高値更新を受けて、先週は週明け日経が戻り高値を更新しましたが、COVID-19の第二波の懸念や米中対立激化を受けて下がりながらも、経済活動再開で底堅さを見せて上下動を繰り返す動きでした。

経済活動再開から来るポジティブと米中対立から来るネガティブがせめぎ合う展開でした。

 

 

3月末頃から米中政府高官の間でお互いの批判が始まり顕在化してきた米中対立ですが、ここに来て米国側の対応が先鋭化してきている印象です。

14日朝にトランプ大統領が中国どの断交を示唆、また同じく14日に米議会上院にて中国のウイグル自治区でのイスラム教徒への弾圧に対する制裁発動を求める法案が可決されました。

ファーウェイに対する輸入禁止の例外措置も8月に撤廃される見込みです。

トランプ大統領COVID-19対策の初動の遅れに対する矛先を掏り替える思惑も見えますが、米国内での対中感情の悪化を背景にかなり踏み込んできています。

 

その背景には、未だに武漢での発生源に関する調査にWHOすら関与させていない隠蔽体質や、自らの国内で発生した感染症が世界中に拡大して甚大な被害を出す中、悪びれることもなく相手の弱みに付け込んだ外交政策を行うような「価値観の違う不気味さ」を伴う中国共産党に対する強い不信感が露わにことがあると思います。

 

ここで、世界で感染が本格化してきた4月以降の中国の横暴さを表す代表的な出来事を記載します。

 

4/18 中国が周辺国と領有権を争う南シナ海にて突如海域を管轄する自らの行政区を設置すると発表。

         ベトナム、フィリピンが反発。

   

4/18 香港で現職議員を含む民主派幹部15人を一斉逮捕。

        また5/10にもデモ参加者230人を一斉逮捕。民主派に対する弾圧が再開。

 

5/8 尖閣諸島沖で操業中の日本漁船を4隻の中国海警局巡視船2隻が接近し追尾。また日本政府の抗議に
  対して「日本漁船が中国の領海で違法に操業」と批判。

 

5/12 4/23の豪州モリソン首相がCOVID-19の感染経緯について「独立した調査の実施」を主張したことに
    対し、豪州の食肉処理業4社に対して中国が輸入停止措置をとると報道。

 

この他にも昨年来ウイグル自治区での人権侵害が大きな問題となっています、

このタイミングで南シナ海および尖閣諸島での海洋主権の主張を強め、中国共産党を批判する人々を弾圧および制裁するのはまさに火事場泥棒です。

また、SNS等で中国共産党COVID-19の対応を賞賛するプロパガンダ活動が行われているとの報道もあります。

世界中が苦しむ中で、平気でこれらの行動を起こす覇権主義に対し、欧米などの先進国および周辺各国では不信感を募らせていると思われます。

 

一方で、正に現在感染爆発期を迎えているアフリカ新興国に対しては、従来より経済支援していた29カ国に加え54カ国に医療支援を広げています。

これらの国々は脆弱な経済と医療に悩む国々が多く、中国の不気味さは理解しながらも足元ではこれまでで通り中国からの経済援助、医療援助が非常に重要であり、中国の支援を喜んで受け、今後も中国支持を続けていくのではないかと思います。

 

私はおそらく米中対立が収束することは難しいと思います。

これまでは「途上国」という隠れ蓑に隠れた中国が世界中で自由経済の実りを享受してきましたが、一方で外国企業は中国内では規制にまみれ正当に競争できませんでした。

不当な競争の中で強大な力を持った中国に対し、米国はそれを改善させようと貿易協議を続けてきましたが、今回のCOVID-19での対応で更に中国の身勝手な覇権主義の本性が露呈し、現在の共産党体制が続く限りは改善は難しいと理解したのではないでしょうか。

今後はそれに気づき、中国との経済関係に距離を置く「欧米・日本を中心とした経済圏」と「中国とその支援から抜け出せない国々を中心とした経済圏」の緩いブロック経済体制に変化していくのではないかと思います。

ここまでグローバル化が進んでいる中、例えば海外企業が今中国にある工場を急に畳むような可能性は薄いと思いますが、徐々に時間をかけて緩やかに二極化が進んでいくと思われます。

 

私は18日に行われるWHO総会に注目しています。

現在、台湾のオブザーバー参加の是非を巡って各国と中国の駆け引きが続いています。

COVID-19に対して迅速に対策を講じ、見事に封じ込めた台湾の持つノウハウと経験は、世界の中で存在感を増しています。

その状況下でのWHO総会での今回の台湾問題は、中国に不信感を表すか表さないかの試金石だと思います。

これまでに米国、日本、カナダ、英国、フランス、ドイツ、オーストラリア、ニュージーランド8カ国の支持が伝えられています。

また、前回の総会でも台湾に関して発言をしている国交樹立国15カ国に加え、どこまで台湾に言及する国が出てくるか注目しています。

はっきりとは明言はしないまでも台湾に対して何らかの言及をする国が出てきたら、中国に対して不信感を抱き、距離を置く国を確認出来る事になると思います。

 

 

次週の相場観は下記の通りです。

[短期] やや弱気

上述の通り、米中対立はより激しさを増して来ると思われます。

COVID-19の影響に加えて米中対立が重しとなり調整する気がしますので、日経、ダウのショート目線で向かいます。

 

[長期] 強気

長期投資のポートフォリオは引き続き、強気のスタンスとします。

米中対立問題はあるものの、各国中銀の金融緩和の下支えにより、トレンドが大きく下に崩れる可能性は薄いと思われます。

尚、先週は余り動きのないREITを売却し、上昇基調が強いナスダック100連動投信を購入しました。

次週はもう少し米国株式を売却し、ナスダック100連動投信に移し替えます。

 

米国株式(楽天VTI)32%、米国株式(ナスダック)8%日本株25%、国内債券29%、金6%

 

以上