【12/28-1/1週の世界のリスクと経済指標】〜米国衰退と中国興隆の2020年〜
先週の評点:
リスク 3点(60点):良化 (基準点57点)
経済指標 +1点(10点):小幅良化 (基準点9点)
【リスク】
先週は全体としてプラス3ポイントの良化でした。
COVID-19は感染拡大スピードが収まらず、累計感染者が1億人を越えるのも時間の問題となってきました。
米国では2000万人を超え、全人口の6%が陽性者となる事態となっています。
日本でも東京などの首都圏を中心に感染が爆発的に増えており、年末年始の移動でさらに増えていくことが予想されます。日本ではワクチン承認申請が始まったばかりで使用許可は早くても2月下旬になる見込みであり、まだワクチンに頼るフェーズではないため、首都圏を中心に再び緊急事態宣言が発出される気運が高まっています。
一方で英国ではアストラゼネカ製ワクチン、中国ではシノファーム製ワクチンがそれぞれ緊急使用承認が降り、使用可能なワクチンの総量が徐々に増えてきています。これらの影響によりいつ収束を迎えるのか注目されます。
前週末にトランプ大統領によって修正要求があり成立していなかった米国の追加経済対策は、週明けのトランプ大統領の急な翻意により署名され成立しました。これにより当面の米国民の生活が支えられることとなりました。一方でトランプ大統領からの修正要求である給付金の2000ドルへ増額に関しては、修正法案が民主党主体で通過しましたが、上院にて共和党にて阻止されました。
またブレグジットを巡る英EUのFTAは無事に暫定発行され、年明けも税関の混雑による大きな滞留も見られず落ち着きを払っています。
前週まで種々問題が紛糾していましたが年末ギリギリにかけて一定の解決を見せ、新年への明るい船出となりました。
【経済指標】
先週の経済指標はクリスマス休暇もあり注目指標はほぼありませんでした。
中国製造業PMIは微減の51.9、米失業保険申請件数は前回値、予想値より改善となりました。
【先週の振り返りと考察】
2020年最終週の主要株式指数は英国以外上昇しました。
特に日経は米追加経済対策の成立を好感し27,000円の節目を超えたことで大幅上昇しました。
同時に上海総合も大幅上昇し、7月以来抜け切れていなかった3450ポイントを抜けました。
一方で米株指数は日本株や上海総合ほど動かず、ボラティリティの低下を示しました。
~米国衰退と中国興隆の2020年~
明けましておめでとうございます。
2020年は激動の一年でした。
個人投資家としては、その激動に乗り1年を通じて投資資産を約18%増やすことができました。
一方で、COVID-19によって大きく世界が変化した一年であったと思います。
一言で表すと「米国の衰退および中国の興隆」です。
それぞれの要因を整理すると下記の通りです。
【米国衰退の要因】
①COVID-19初期対応を間違え、世界最大規模の感染拡大で財政負担増、内政重視
②感染拡大で職を失った貧困層(マイノリティ層)の不満爆発するも政権支持層重視で分断激化
③欧州への通商対立やNATO軽視、駐留軍削減により同盟国である欧州との対立激化で孤立
④WHO脱退などの国際機関への関与縮小
⑤シリア、アフガンなどの中東紛争地域への関与縮小
⑥大統領選挙での混乱(現職大統領が不正選挙を叫び未だ敗北宣言せず)
【中国興隆の要因】
①COVID-19の感染拡大を強権的な手法で迅速に乗り切る
②いち早くCOVID-19を押さえ込み、感染拡大に苦しむ世界各国へ支援外交を行い影響力を拡大
③COVID-19で民主派や民主主義国家が満足に活動できない中、南沙諸島に行政区設置、香港国家安全法案施行で香港を完全支配下へ
④COVID-19制圧でいち早く経済を回復させ輸出を伸長
⑤米国の内向き政策の最中、RCEP、EUとの投資協定を進め貿易体制を強化
元々米国では2016年の大統領選挙でトランプ氏が勝利しポピュリズムが顕在化したことにより、それまでの覇権国家としての影響力を後退させる動きがありました。
しかし、この1年に起きた感染拡大からの景気悪化でそれらの後退の力が国内での分断も含めて一気に噴出してきた印象です。
そしてその米国の影響力の後退を見逃さず、その隙に自らのイデオロギーの下での影響力の拡大を行ったのが中国でした。
私はこの中国の動きは非常に戦略的で、巧妙に練りこまれた動きであったと考えます。
様々なイベントが絶妙なタイミングで行われ、中国にとって有利な方向へ導かれたと思っています。
正に覇権国家が入れ替わるために、中国が大外から捲り上げているように見えました。
昨年末の米大統領選により、1月20日には米国の衰退の原因であったポピュリストのトランプ大統領から中道のバイデン大統領へと指導者が変わります。
それにより形はどうあれ、これまでトランプ大統領が取ってきた政策は改められる可能性が高いため、一旦は米国の衰退に歯止めがかかることを期待されます。
それにより中国の興隆を阻止できるとは思いませんが、少なくとも同盟国との連携を強化する方向にあり、孤立状態の現状よりは抑止力として機能するのではないかと楽観しています。
一方で、今年はその重要な連携相手である欧州において、今後を占う指導者を選ぶ選挙が行われます。
まずは1/16に行われるメルケル首相の後継を決める独与党の党首選が行われます。また、9月には独連邦議会選挙が行われます。
イギリスが去った後の欧州の牽引役であるドイツが、ポピュリズムに押されず米国での中道路線への回帰を受け止め、連携を強化できるのか注目されます。
また、その他3/17にオランダ議会選挙、10月にはチェコ議会選挙も控えており、これらの国々の動向も気になるところです。
最後になりましたが、本年も宜しく御願い致します。
以上