【1/4-1/8週の世界のリスクと経済指標】〜ポピュリズムの結末〜
先週の評点:
リスク -3点(39点):悪化 (基準点42点)
経済指標 0点(105点):中立 (基準点105点)
【リスク】
※終了したブレグジット、成立した米追加経済対策は項目から除外しました。
先週のリスク推移はマイナス3の悪化としました。
COVID-19の影響は言わずもがな感染拡大によりネガティブな状況です。
日本もついに2度目の緊急事態宣言となり、今後サービス業を中心とした雇用の悪化が心配されます。
日本以外での先進国ではワクチン接種が進んでいますが、予想以上に接種を拒否する人が多い様で、ワクチン接種拡大の遅れからCOVID-19克服への遅れに繋がることが心配されます。
注目の米ジョージア州での上院決選投票は、予想を覆して民主党が2議席を獲得し、トリプルブルー達成となりました。これで民主党による国民への財政支援拡大方向への政策やグローバリズム回帰の政策が議会を通りやすくなり、政権運営の自由度が増しました。
一方で、1/6の上下院合同議会において、トランプ大統領に扇動されたトランプ大統領支持者が議事堂に押し入って占拠し、議事が一旦停止となる前代未聞の事態が起こりました。この事態によりトランプ大統領は同じ共和党議員や側近からも見放され、両党議員から免職も検討されています。大統領選挙以来、民主主義国家の国家元首とは思えない身勝手な行動が目立ったトランプ大統領は最後に自滅した形となりました。
【経済指標】
先週は全体としてプラスマイナスゼロの中立としました。
先週はドイツ、アメリカ共に雇用に関する指標発表がありましたが、ドイツはCOVID-19によるロックダウンの影響はありながらも好調な中国の影響で失業者数は前月比-3.7万人と回復を示しました。
一方で米国はCOVID-19の再拡大を正面から受けて非農業部門雇用者数が-14.0万人と雇用の悪化を示しました。
これらの差は好調な中国の影響を受けやすいか否か、また製造業従事者が多いかとサービス業従事者が多いかの産業構造の違いを表しているものと思います。
一方で米国のISM景況指数は製造業は2018年8月の好景気時以来の60越えを示し、非製造業も予想54.6に対し57.2と高い数値を示しました。これらはバイデン次期大統領の財政拡大方針とワクチンの普及による経済正常化期待の現れであると考えられます。
【先週の振り返りと考察】
先週は週前半は1/5の米ジョージア州の上院決選投票で民主党候補が2議席を獲得しトリプルブルーとなったことで、大規模な財政政策期待から10年債利回りは急上昇して1%を突破し、株価も上昇しました。
事前予想では共和党優勢だったためサプライズとなりましたが、民主党が掲げる大規模経済対策を好感して欧米、日本の株価指数が上昇しました。
また、好調な中国経済を背景に、原油、鉄鉱石価格も上昇し、それらの資源国であるロシアRTS指数やブラジルボベスパ指数も強く上昇しました。
~ポピュリズムの結末~
さて、先週は1/6のアメリカ連邦議会での大統領選の投票結果を承認するための上下院合同議会の最中に、トランプ大統領支持者が議事堂に押し入り議会を占拠する事態となりました。
トランプ大統領は以前からツイッターにて自身の支持者に対してホワイトハウス前に集まることを呼びかけ、バイデン氏の大統領承認を阻止するために支持者を議事堂まで行進する様に扇動しました。
この集会の前には合同議会を取り仕切るペンス副大統領に対して選挙結果を認めない様に働きかけ、また1月2日にはジョージア州の州務長官に対し、同州の選挙結果を覆すのに十分な票を「見つける」様に圧力をかけていたことが判明しています。
前週にもトランプ大統領による政策で米国が衰退を迎えていると論じましたが、それらはあくまでもポピュリズム政権が執った政策の結果でありました。
しかし、今週に入ってからのトランプ大統領の行動は、政策ではなく単なる脅しと攻撃でした。
そして立場を守るために証拠の出てこない不正を訴え続け、長年に渡って支えてもらった腹心にルール無視を強要し、自らの支持者たちを使って民主主義の象徴である議会を襲わせた行為は、自身が標榜する「ポピュリズム」という概念自体を「民主主義を脅かす恐ろしいもの」として全国民および世界中に明確に印象付けてしまった様な気がします。
今回の大統領選ではトランプ大統領は7400万票もの支持を得ましたが、それはあくまでも、時には異端でありながらも民主主義に則ったトランプ政権の「政策」に対する支持であったと思います。
しかし、今回の行き過ぎた行為は、さほど熱烈ではない多くの支持者の失望を誘うこととなってしまったのではないかと思います。
格差が消えない限り今後もポピュリズム自体は米国の中でも概念として残り、熱烈な支持者と共に活動を続けていくと思います。
しかし、今回の一件でポピュリズムの行き着く先として「民主主義に対する脅威」になり得ることが強烈に意識されました。
議会占拠後、トランプ政権幹部が次々と辞任という形で逃げていっている様に、脅威の象徴となってしまった以上はポピュリズムは「政治の潮流」としての役割を終えたのではないかと思います。
それほどまでに衝撃な出来事でした。
これで英ブレグジット、米大統領選挙と、当面の大きな政治イベントが完全に終了しました。
COVID-19による影響は依然大きく残りますが、ワクチンが開発されている以上、いずれ収束を迎えると思っています。
しかし、その過程においては財政、金融両面において大規模な支援が必要となり、各国政府および中央銀行により適切に措置が行われていくと思います。
そしてその支援を背景に、今後株価は緩やかに成長していくと思います。
先週はこれまで株式に対するリスクヘッジとして保有していた金のETFを売却しました。
緩やかな上昇の中で少しボラティリティーを上げるために、その資金を使って今年は個別株運用も取り入れていきたいと思います。
以上