投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【11/9-13週の世界のリスクと経済指標】~民主主義国のリーダーとしての米国の品格~

先週の評点:

 

リスク   -2点(52点):小幅悪化 (基準点54点) 

経済指標  -6点(54点):悪化 (基準点60点)

 

 

【リスク】

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先週は米国時間の7日にバイデンの当選確実報道が出たためバイデン氏が勝利宣言しましたが、トランプ大統領は激戦州での選挙に不正があったとして提訴し、未だ敗北宣言をしていません。

そのためトランプ政権から次期バイデン政権への政権移行が進まず、米国の政治に空白期間が生まれそうです。

また、トランプ政権は追加経済対策の民主党との交渉を、5000億ドル規模を主張するマコネル上院議員に委ねるスタンスを見せ、追加経済対策の早期実現に向けて先行き不安感を煽りました。

 

COVID-19は再び急速に拡大しており、ここ1週間で全世界約600万人の感染者が増加、死者も6万人増加しています。
一方で米ファイザーと独バイオンテックにて開発中のワクチンが治験で90%の有効性を確認できたと発表があり、COVID-19の収束に向けたポジティブなニュースとなりました。

 

またナゴルノ=カラバフ紛争は、不利が伝えられたアルメニアの完全撤退により4回目の停戦合意がなされ、ようやく終結を迎えそうな様相を呈しています。今後は停戦仲介したロシアの介入により合意の履行プロセスに移行することになりますが、同時にアゼルバイジャンを支援していたトルコも介入の姿勢を見せ、ロシアが神経質になっている様子があるため、引き続き注意が必要です。

 

全体としてはワクチンとナゴルノ紛争の終結などで良化を見せましたが、その他の細かなネガティブが上回りマイナス2ポイントの小幅悪化としました。

 

 

【経済指標】

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経済指標はドイツの貿易収支、米国の失業者保険申請者数がポジティブとなりましたが、その他は低調な結果となりました。

ここ最近は欧米にてCOVID-19が再拡大していることもあり、全体的に徐々に指標が悪化している印象です。

マイナス6ポイントの悪化としました。

 

 

【先週の振り返りと考察】

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先週はこれまで市場を牽引してきたナスダックが週足で減少に転じる中、バリュー株を多く含む日経225、ダウ平均、独DAX、英FTSE100などこれまでの延びが限定的だった指数が4%を超えて大きく伸長しました。

日経2252018102日のバブル後高値を、ダウ平均も場中最高値を更新しています。

COVID-19による活動制限措置は日に日に強まっていますが、バイデン候補の当確のみでなくワクチン開発でのポジティブニュースが重なり、前週末には8%強だった米国10年債利回りも一時1%に迫る勢いで上昇し、マーケットのトレンド転換を示唆しました。

これまでは低金利を支えとし、巣篭もり需要を取り込んで業績を伸ばしてきたハイテク株が強かったマーケットですが、民主党主導の大規模な追加経済対策期待とCOVID-19ワクチンによる従来型経済への回帰を見据え、弱かったバリュー株が巻き戻しています。

この現象を確認しながら、私の長期投資のポートフォリオ日本株式を加えました。

今週は、一旦は上昇が踊り場にくる可能性がありますが、基本的には上目線を継続です。

 

 

 

〜民主主義国のリーダーとしての米国の品格~

 さて、米大統領選挙において11/14の夜時点で米50州での勝敗が判明し獲得選挙人数はバイデン氏306人と過半数を超え、より確実なものとなりました。

バイデン氏は11/7夜の勝利宣言にて4つの理念を示しました。

Unity(結束):分断でなく結束を目指す大統領になる。赤い州青い州というものはない。

Diversity(多様性):南アジア系黒人女性のハリス氏が副大統領となり歴史を作った。
           選挙戦は最も広範で多様な人々の連携が支えとなり、アメリカらしさを体現した。

Possibility(可能性):アメリカは可能性の国。より自由で公平なアメリカへ。アメリカの魂を取り戻す。

Decency(品格):品格を取り戻すための闘い。民主主義を守り全ての国民に平等な機会を与える。

 

私はこのバイデン氏の演説に「きれいごと」という印象の一方で、従来のアメリカという国の「大人な」姿を見ました。

アメリカ人は表裏の激しい人たちなので、この話を真に受けて心底から信用することはありませんが、少なくとも民主主義国家の頼れるリーダーとしてのアメリカに戻るのではないかとの安心感を得ました。

私の個人的な政治スタンスは保守派寄りですが、この4年間の共和党政権のポピュリズム大衆迎合主義)、ナショナリズムという政治思想は保守派としても余りにも急進的過ぎたと感じています。

その背景には、世界的に「経済格差」という資本主義の弱点が顕在化し、そのストレスの捌け口としてポピュリズムの躍進を招いたという事実があり、必然性があったものと考えます。

そして対中強硬戦略や中東でのイスラエルとアラブ周辺国との和平など一定の外交上の成功も得られていると思います。

しかし、同時に周辺国や同盟国との関係性よりも自国、政権自身およびその支持者のエゴを優先し過ぎた事で自らの品格を傷つけ多くの対立と混乱を生んできました。

しかも、極め付けは大統領選挙でバイデン氏の当選確実となり大勢が決した後でもトランプ氏は敗北を認めないため政権移行が遅々として進まず、それどころかポンペオ国務長官やマコネル上院議員などの共和党有力者までもがそれを支持しており、反対する議員の声があまり聞こえてこない事態には呆れるしかありません。

確かに今回論点となった郵便投票は、各自治体でのルールの若干の違いや運営方法に問題があったのかもしれませんが、それは制度上の問題であり選挙結果自体を否定する事には繋がりません。

おそらく共和党としては、残されたジョージア州上院議員の決選投票での選挙戦術が絡んでのものと思われますが、投票結果を否定することは民主主義の基本理念を否定することであり、さらに中国・ロシアなどの強権国家に付け入る隙を与えるだけだと考えます。

 

新バイデン政権は中道的なリベラル政権ではありますが、急進的な共和党ポピュリズム政権からの揺り戻しとすると、ちょうど良い具合の政権のような気がします。

しかしながら、民主党内にもサンダース議員やウォーレン議員らの急進的な左派ポピュリスト達を内包しています。

バイデン政権がそれらの勢力に侵されて過度に急進的とならず、大人な品格を持って民主主義国家のリーダーとして政権運営していってくれることを切に願います。

 

以上