投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【12/21-12/25週の世界のリスクと経済指標】〜トランプ大統領の権威主義化〜

先週の評点:

 

リスク   1点(58点):小幅良化 (基準点57点) 

経済指標  -3点(30点):悪化 (基準点33点)

 

 

【リスク】

f:id:minarai_tousan:20201228081351p:plain

先週は長きに渡るブレグジットを巡る英EUの通商交渉が土壇場で合意したこともあり、プラス1ポイントの良化となりました。

 

 COVID-19を巡っては、英国にて感染力の高い変異種が確認されたため20日からロンドンで再ロックダウンとなり、世界各国で英国からの渡航を一時拒否する事態となりました。また南アフリカ、ナイジェリアでも感染力の強い変異種の確認が相次ぎました。

現在のところ既に投与開始されているワクチンは変異種に対しても有効との見方が強いですが、拡大スピードが早いために不安を煽っています。

 

 注目のブレグジットを巡る英EUの通商交渉は、土壇場で英国が漁業権において譲歩し、期限ギリギリで合意となりました。実際の通関業務などの現場は滞ることが予想されるものの、1/1からも関税ゼロとなることで企業運営や輸入品物価において混乱することはなくなりました。

 

 一方で同じく注目されている米追加経済対策ですが、こちらは共和、民主両党にて合意し上院下院議会を通過したものの、トランプ大統領が現金給付額を600ドルから2000ドルへ増加することを求め、修正しなければ拒否権を発動するとし、再び混乱しています。トランプ大統領の増額案に対して民主党が賛成し、再び共和党主導部との間で対立が再燃しています。失業給付の特例措置や、家賃滞納者の強制退去の猶予措置も切れるため、このまま対策案が成立しなければ米国民の生活に大きな打撃となります。

次週の動きに引き続き注目です。

 

 

【経済指標】

f:id:minarai_tousan:20201228081420p:plain

先週はマイナス3ポイントの悪化となりました。

先週は欧米がクリスマス休暇ということもあり指標発表が少なかったですが、米国の消費者信頼感指数、PCEコアデフレーター、新築住宅販売件数が低下し悪化しました。

一方で新規失業保険申請件数は2週間ぶりの減少を示しました。

 

 

【先週の振り返りと考察】

f:id:minarai_tousan:20201228081459p:plain

先週の株価指数は週足ではほぼ横ばいで動きの少ない週となりました。

欧米がクリスマス休暇で動きが少なかったということがありますが、ブレグジットを巡る英EUの通商交渉がまとまり、米追加経済対策も共和、民主両党での合意が得られたことでマーケットが落ち着きを取り戻し、ボラティティが低下してきた印象です。

COVID-19の感染拡大からの活動制限によって多少押すこともあるかと思いますが、基本的にはワクチンの投与も拡大している安心感から、大きく崩れることは少なくなってくるのではないかと思います。

次週は米追加経済対策案の修正がどのように進むのかが注目ですが、一度両党が合意しているだけに大きな問題にはならないような気もします。

 

 

トランプ大統領権威主義化~

さて、11/3の大統領選挙で敗北したトランプ大統領ですが、12/14に選挙人投票でバイデン氏が次期大統領に確定し、退任が決定したあとも持論の政策を発動し続けています。

そしてその政策内容は相変わらず独善的で強硬姿勢を崩していません。

下記は11月末以降のトランプ政権が打った主な政策です。

f:id:minarai_tousan:20201228081525p:plain

中国のSMICDJIなどに対する対中強硬姿勢は次期バイデン政権も踏襲する見込みが高いですが、敢えてひっくり返しにくい強硬政策を発動し、バイデン政権の選択肢を狭めています。

 またトランプ大統領自身に近い側近で、2016年の大統領選挙でロシアがトランプ氏勝利のために介入したという「ロシア疑惑」を巡って起訴や訴追されている人物たちを恩赦しています。

恩赦自体は大統領の正当な権限であり、オバマ前大統領も在任中に1700人を超える恩赦を与えています。しかし、その内容に自身の退任後の体制を整えるための政治的な思惑が働いているため批判が強まっています。

 そして極め付けは、超党派で合意し上下院議会を通過した9000億ドルの追加経済対策に対して突如大幅な修正を求め、拒否を匂わせました。また2021年度の国防権限法案に関しても、ドイツやアフガンの駐留米軍の削減を制限する内容に難色を示し、拒否権を行使しています。

両法案共に共和党も合意をしていた内容であったためすんなり署名すると思われましたが、それを覆して突然の拒否権発動、及び拒否を匂わせながらの修正要請には驚きを隠せません。

これは今回の経済対策を共和党内で主導したマコネル院内総務ら党主導部に対する反発であり、党主導部との溝が浮き彫りになったことを表しています。

またそこまでして退任後も政治的な影響力を残したいトランプ大統領の願望の強さを表しています。

 

そして選挙で退任が決まった後も敗北を認めずに強硬政策をとり続け、自らの側近の罪を免除し、議会が紛糾しながらも通過させた国民生活を支える重要な政策が気に入らないため拒否を匂わすこれらの行動は、程度の差はあれども中国やロシアで行われているのと同様の、自らの行動のみを正当化する権威主義的な匂いを感じざるを得ません。

 

米大統領選挙でかろうじて中道のバイデン氏が選ばれたことで、その流れは120日から一旦変わることになります。

一方でそのトランプ大統領が先の選挙では7380万票以上という歴代の共和党大統領候補史上最多の票を獲得しているという事実は、やはり自由民主主義を掲げる米国自体も大きく変貌し、自らが否定する権威主義がはびこる世界的な潮流に飲み込まれていることを示唆しているのだと思います。

 

今年は実に様々な出来事が起こり、人間社会における大きな問題点がいくつも確認できた年でした。

来年はそれらの問題が一つでも解決し、皆が幸福に生きられるようになることを切に祈ります。

 

以上