【12/14-12/18週の世界のリスクと経済指標】〜コモディティ価格上昇の裏付け〜
先週の評点:
リスク -4点(53点):悪化 (基準点57点)
経済指標 +2点(137点):小幅良化 (基準点135点)
【リスク】
先週はマイナス4ポイントの悪化となりました。
COVID-19の感染拡大は勢いを増し、米NY市では病床数の逼迫から屋内での飲食サービスが禁止され、再ロックダウンも検討され始めています。
一方で米国でもファイザー製ワクチンの投与が開始され、またモデルナ製ワクチンもFDAから緊急許可が承認されました。
今後は急拡大するウィルスにワクチン投与がいつ追いつき、収束を見せるか注目されます。
それまでの経済のつなぎ役として重要な米追加経済対策は、先週「合意間近」との報道もありましたが、未だ妥結せず20日まで協議継続となりました。
また英EUのFTA交渉も英海域での漁業権を巡って難航しており、こちらも20日までに合意しないと年内の法案批准が間に合わない状況で、週末に二つの大きなリスクのヤマ場を迎えることとなっています。
【経済指標】
先週の経済指標はプラス2ポイントの小幅良化となりました。
先週は米FOMC、米中小売売上高、欧米PMIなどの注目指標がありましたが、全体の印象としては下記の通りです。
①中国は小売売上高、鉱工業生産も上振れで好調を維持
②欧州PMIは総じて好調。COVID-19の感染ピークアウトとワクチン期待、中国向け輸出好調を反映か。
③米国鉱工業生産、PMI、小売売上高は総じて低調。FOMCはサプライズなしで財政政策の必要性を強調。COVID-19感染急拡大からの活動制限、追加経済対策の遅れが指標に反映された形。
先週の経済指標は中国、欧州、米国の雰囲気の違いを如実に表していると思います。
【先週の振り返りと考察】
先週は独DAX指数、米ナスダック指数が大きく伸張しました。
DAXは前週の振り返りで述べたように、EUが金融、財政の両面からの支援を得られつつ、ハードブレグジットが決まらなかったことに加え、好調な中国向けの輸出を好感して上昇しました。
米株価指数はワクチン接種が始まったものの足元の感染拡大から巣篭もり需要の伸びが期待されナスダックが強く上昇しました。
次週はこの週末に雌雄を決すると思われる米追加経済対策とハードブレグジット次第で動いてくると思われるため注目したいと思います。
~コモディティ価格上昇の裏付け~
さて、ここ最近、株価指数はもちろんのこと、ビットコインや様々なコモディティ価格も急上昇しています。
実体経済はCOVID-19の拡大の影響から未だ回復せず苦しい状況が続く中、上昇を続ける様々な資産に過熱感も感じられます。
特にここに来て金属関連のコモディティ価格も上昇し高値圏で推移するようになりました。
以下は11月以降の金属コモディティ価格の増加率のグラフです。
11月は米大統領選挙で民主党バイデン氏が優勢となったことによる巨額の経済対策期待と、COVID-19ワクチンの高い有効性が認められたことで、経済の正常化が織り込まれるようになりました。
それに従ってこれらの金属コモディティ価格も原油価格の上昇同様、急上昇を見せています。
しかしこれらは投機的というよりもむしろ将来の実需を見越した動きが大きいと考えられます。
下記は今後、EVやFCVなどの新エネルギー車での需要が期待される金属類の用途です。
バイデン次期米大統領は重要政策として環境政策に力を注ぐことを明言しており、11月上旬のバイデン氏の当確から新エネルギー車への需要が急速に意識され始めました。
元々自動車生産台数が米中を主体に大幅に回復基調にある上、経済正常化期待で鉄鉱石、アルミなどの価格が上昇していましたが、プラチナ、銅、ニッケルなどの新エネルギー車に必要な金属も意識されて大きく上昇したと考えられます。
(逆にガソリン車の排ガス処理に使用されるパラジウムは小幅上昇に留まっています。)
つまりこれらの商品の価格上昇には実需および将来見込める需要の裏付けがあります。
私はビットコインの価値の裏付けが理解できませんが、ビットコインの様にただ単に投機的な資金が集まっただけではないと考えます。
現在は各国中央銀行が強烈な金融緩和を行い、各国政府が大量の財政政策を行い続けているため、コロナショック前と比較しても相対的に通貨の価値が下がっています。
緩和によるインフレ圧力からの過熱上昇とも考えられますが、実需の裏付けも強いため、現段階では正常な範囲ではないかと思います。
以上