投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【12/7-12/11週の世界のリスクと経済指標】〜EUにおける二つの下支え〜

先週の評点:

 

リスク   -4点(53点):小幅悪化 (基準点57点) 

経済指標  +8点(74点):良化 (基準点66点)

 

 

【リスク】

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先週はマイナス4ポイントの小幅悪化となりました。

COVID-19の感染拡大は、欧州ではロックダウンにより徐々にピークアウトしてきていますが、米国、日本などでは依然止まりません。米国では10月末から約1ヶ月で500万人増加し、1日当たりの死者数も3000人を超えました。

 一方で英国では先週承認されたファイザー製ワクチンが投与開始されました。またカナダ、米国でも緊急使用許可が承認され、今後順次投与されていきます。

欧州でもEUの医薬品規制当局が年内にファイザー製ワクチンの承認を目指して審査中で、今後先進各国にてワクチン投与が進んでいくものと思われます。

 

 米国の追加経済対策は、先週超党派議員により9080億ドルの対策案が提示されましたが、相変わらず両党の主張に折り合いが付かず、合意に至っていません。

 一方でEUでは、ハンガリーポーランドが「法の支配」を条件にされたことに反発していましたが、先週妥協し合意に至りました。

EUでは英国との通商交渉が平行線を辿っており、13日を期限にハードブレグジットのリスクが高まっていますが、そのリスクに備えてできる限りの体制を整えている印象です。

 

 

【経済指標】

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経済指標はプラス8ポイントの良化となりました。

中国の貿易収支が予想を大きく上振れで輸出の好調さを示し、中国に生産設備を収めるドイツの鉱工業生産も大きく上振れ、同じく中国の影響の大きい日本の7-9月期GDP改定値も上振れました。

またドイツおよびユーロのZEW景況指数もワクチン期待からの改善を見せました。

 一方で中国のCPIは低下し、政府主導で景気は好調ながらも一般市民の消費が付いてきていないことを示しました。

また米国の失業保険申請件数も前回値および予想値よりも増加し、雇用の悪化を示しました。

 

 

【先週の振り返りと考察】

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先週は先進国株式は高値圏でフラフラと上下動しながら小幅に下落しました。

DAX12/11に英EUFTA交渉の不調が伝えられると大きく下落し、当事国である英国よりも下落しました。

一方で新興国原油価格の上昇とドル安を背景として、先週もロシアが大きく伸張しました。

またブラジルも堅調に株価を伸ばしています。

 

 

 

EUにおける二つの下支え~

さて、先週は欧州にとって重要なイベントが二つ重なりました。

 

一つ目は、欧州復興基金の合意です。

7月に基本合意されていましたが、復興基金の分配ルールを巡り、EU首脳が権力の乱用を法で縛る「法の支配」の順守を配分条件にしたことで、強権主義的なハンガリーポーランドが反発し、復興基金の成立合意の遅れが懸念されていました。

しかし、基金が欧州司法裁判所の裁定がない限りは供給することになると伝えられ、反対していた両国が妥結に応じ10日のEU首脳会議で中期予算と合わせて合意がなされました。

これで21年から基金の運用が行われることになります。

 

二つ目は、ECB欧州中央銀行)による追加金融緩和です。

同じく10日に開催されたECB欧州中央銀行)理事会にて半年ぶりの追加金融緩和が決定されました。

具体的には

①コロナ危機に対応する資産購入の特別枠(PEPP)を5000億ユーロ増額し、合計1.85兆ユーロ(約230億円)へと拡大

PEPPの資産購入期限を20216月末から20223月末へ延長

③銀行にマイナス1%という超低金利で貸し出す制度(TLTRO)の期限を20226月末まで1年延長

となります。

金融緩和の余地が限られてくる中、できる限りの政策を打った印象です。

 

これらの政策により、EUでは圏内の苦しい生活を送る国民に直接お金を配る財政政策、苦しい状況にある企業に対して資金を融資する金融政策の両面から下支えが行われることになりました。

 

また、ここでCOVID-19の感染者数を見てみます。

まずはアメリカです。

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未だ第三波のピークを迎えておらず、右肩上がりで上昇しています。

 

次に欧州主要国の感染者推移を見てみます。

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ロックダウンが緩やかなドイツは横ばいが続いていますが、強力なロックダウンを行っていたフランス、イギリス、イタリアは活動制限のおかげでピークアウトしてきています。

つまり欧州では感染拡大が落ち着きを見せ始めており、今後徐々に制限緩和で景気回復の方向へ動く可能性が高いと言えます。

 

欧州は足元ではロックダウンによる経済停滞や英国のハードブレグジットによるリスクに見舞われています。

しかし感染拡大はピークアウトして、財政、金融の双方の下支えが見えている状況です。

さらに前週に考察したように、現在は割安株に資金が流れやすい状況であり、遅れていた欧州株は上昇余地が大きいと考えます。

 

一方で米国は感染拡大の真っ只中であり、ワクチンが承認されるも実際に人々にワクチンが行き渡るには時間がかかる見込みであり、追加経済対策も一向に合意に至らない状況で景気の下支えに遅れが見えます。

短期的にはハードブレグジットで下落する可能性がありますが、やはり中長期では欧州株が米国株より相対的に有望であると考えます。

 

以上