投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【8/17-8/21週の世界のリスクと経済指標】~ユーロ高は一旦調整か~

先週の評点:

リスク   -7点(35点):悪化 (基準点42点) 

経済指標  -1点(89点):小幅悪化 (基準点90点)

 

 

【リスク】

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先週は米中対立は大きなニュースはありませんでしたが、欧州に絡んだリスクが高まってきました。

 一つ目はCOVID-19の感染再拡大により第2波懸念で人々への行動制限の再開です。フランスではオフィスでのマスク着用が義務化され、スペインでは飲食店の深夜営業が禁止、英国は欧州大陸からの旅行者に対して14日間の隔離措置を義務付けることを決めました。

 二つ目は英国とEUブレグジット交渉の行き詰まりです。妥協点が見つからず、年内合意が難しくなってきました。

 三つ目はベラルーシ情勢です。大統領選を巡り、不正行為が行われたとしてルカシェンコ大統領への退任圧力で抗議デモが行われていましたが、EUが混乱解消のため介入姿勢を見せ始め制裁を表明しました。それに対してルカシェンコ現大統領を支援するロシアが警戒を強めています。今の所は大きな衝突になるようなことはなさそうですが、またひとつEUとロシアの代理戦争の場が増えたことは気がかりです。

 

全体としては上記のリスクとイランに対する経済制裁をめぐる問題で7ポイントの悪化としました。

 

 

【経済指標】

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先週は欧米のPMI発表の週でした。

フランスは製造業、サービス部門共にネガティブ、ドイツは製造業はポジティブもサービス部門はネガティブ、ユーロは製造業、サービス部門共にネガティブと、これまで順調に回復を見せていた数値が下向きになりました。

一方でイギリス、米国は順調にPMIの回復を見せました。

また、低金利を背景に米国の住宅着工件数や中古住宅販売成約指数は大きな伸びを見せ経済の回復を示しました。

 

全体としては欧州のPMIのネガティブや米新規失業保険申請件数のネガティブによりマイナス1ポイントの小幅悪化となりました。

 

 

【先週の振り返りと考察】~ユーロ高は一旦調整か~

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先週の8/197月の米FOMC議事録要旨が開示され、年後半の経済回復はCOVID-19の感染抑制の状況に左右されるとの認識が示され、また議論となっていたYCCイールドカーブコントロール)の導入に消極的であることが示されました。

そのため、一時米10年国際利回りが上昇し、米株を中心に大きく調整することも予想されましたが、フォワドガイダンスに関する言及もあったためすぐに金利は落ち着きを見せ、株価も落ち着きを取り戻しました。

8/21IHS Markit社の米国PMIでは製造業/非製造業共に改善を見せ、また米中古住宅販売件数の記録的な伸びも後押ししたため週足でダウは変わらず、S&P500は微増、ナスダックは2.65%の上昇となりました。

 

一方で欧州は3月以降順調に回復を見せていましたが、8月はPMIが総じてネガティブとなり、特にサービス部門の指標が悪化しました。

6月に欧州各国はCOVID-19からの行動制限を解除しましたが、7月から再び感染が拡大したため、8月に入り再び行動制限が取られ始めている影響が出ていると思われます。

英国は8/15にフランス、オランダ、マルタなど欧州6カ国からの旅行者に対して14日間の自主隔離を義務付けることを開始しています。

COVID-19の感染第2波が、欧州大陸でのさらなる混乱と経済的打撃を招くと警戒されていることを示しています。

 

米国指標の好調さを受けて最終的には若干戻していますが、先週末は独DAXは一時200ポイント以上下落しユーロも大きく下落しました。

また、21日にはブレグジットに関わるEUと英国の7回目のFTA交渉において交渉が難航し、年内の合意が「現段階では可能性が低い」と伝えられました。

ベラルーシを巡る欧州とロシアの新たな対立も気になるところです。

 

これまでユーロは7/217500億ユーロのEU共同債の発行合意をきっかけに上昇を続けて来ましたが、週足チャートも上値を抑えられている感じもあり、これらのリスク面、市表面の悪化から一旦落ち着きを見せる可能性があります。

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一方で次週は8/27-28にて主要国の中央銀行首脳による国際経済シンポジウム(ジャクソンホール会議)があります。この会議においてFRBのパウエル議長はゼロ金利政策を長期間維持する新しい政策指針に言及する可能性が高いと言われています。

ここでフォワドガイダンスに関する具体的な手法が示されれば米金利は下がり、テック銘柄が多いナスダックに対して追い風になると思われます。

一方で銀行株を含むダウ、金利下落からの円高の影響を受ける日経、そして欧州株も上値は重くなると考えます。

為替に関してはドル安傾向になる可能性が高く、先述の通りユーロは上への反応が鈍くなる可能性がありポンドもFTA交渉の行き詰まりで鈍いことが考えられますので、素直にドル円の下落もしくは強い中国を背景にした豪ドル米ドルの上昇に強く反応するかと考えます。

 

以上