投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【8/24-8/28週の世界のリスクと経済指標】〜ジャクソンホールと安倍首相退任の影響〜

先週の評点:

リスク   -2点(35点):小幅悪化 (基準点42点) 

経済指標  +6点(54点):良化 (基準点48点)

 

 

【リスク】

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先週は米中合意の進展が両国の代表によって確認されたものの、一方で南シナ海では牽制し合うこととなりました。

米政府が7月に「中国の南シナ海での領有権は違法」と非難し同海域に空母を派遣したことに対して、26日に中国側が威嚇の意味を込めた「空母キラー」と呼ばれる弾道ミサイルを同海域に向けて4発発射しました。

それに対し米国は翌日にミサイル駆逐艦南シナ海で航行させ中国を牽制しました。

ポンペオ国務長官も活発に各国を訪問して中国共産党に対する批判を強めており、米中対立がさらなる激化の様相を見せています。

また、米国第一主義、対中強硬路線をとる米国と他国との橋渡し役を勤めてきた日本の安倍首相が健康を理由に辞任することとなり、調整役がいなくなることも米中対立の悪化に拍車をかけることになり兼ねません。

 

全体としてはイランのIAEAの査察受け入れというポジティブニュースもありましたが、米中対立の悪化でマイナス2ポイントの悪化としました。

 

 

【経済指標】

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先週の注目の経済指標は米国の指標が主で、概ね良好な回復状況を見せました。

インフレを表す数値としてFRBに注目されるPCEコアデフレーターは1.3%と前回よりは回復を見せていますが、未だFRBが目標とする2%には余裕を見せています。

 

全体としてはプラス6ポイントの良化としました。

 

 

 

【先週の振り返りと考察】~ジャクソンホールと安倍首相退任の影響~

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先週は大きな二つの出来事がありました。

 

1.  ジャクソンホール会議

 一つ目はジャクソンホール会議にてパウエルFRB議長が雇用最大化の追求のために一時的な2%を超えるインフレを容認する方針を示しました。

これまでFRBインフレ目標である2%に対してこれを到達地点として考え、それを上回りそうだと先回りして金利を引き上げると考えられていました。

しかし、今回の方針転換によってある一定期間の平均が2%になれば問題ないとし、利上げ判断に至るまでに柔軟性を持たせることになりました。

これにより当面の間、低金利政策を正当化できることになるため、相対的に価値の上がる株式、金などの商品の上昇を後押することとなります。

 

2. 安倍首相退任

 二つ目は我が日本の安倍首相の退任です。

安倍首相は28日に健康の悪化を理由に突然退任を発表しましたが、これにより下記2点の影響が考えられます。

 

①安部首相の象徴であったアベノミクスによる異次元金融緩和の後退観測

アベノミクスは「3本の矢」と呼ばれる3つの経済政策から成り立っていましたが、何よりもその効果が大きかったのは日銀と共に行ったインフレ目標2%へ向けた大胆な金融緩和だと思います。

この大胆な金融緩和が行われた事により、安部政権発足前には80円程度だったドル円は大幅に円安へ振れ、輸出企業を中心に業績と株価も回復していきました。

言わば金融緩和政策がアベノミクスの根幹であり、これを主導してきた安倍首相が退任することよって不透明感が出てくることから揺り戻しで円高に振れ、日本企業及び株価には痛手となると推測します。

事実、ジャクソンホール会議後に一時107円手前まで円安が進んでいましたが、安倍首相退任の報道を受け105円台前半まで円高が進んでいます。

 

対中包囲網の結束鈍化

現在、中国の強権化を巡る世界の体制は大きく下記の3体制に別れていると思います。

⑴強権国家を中心とした中国陣営

⑵米国・英国などのファイブアイズと呼ばれる国々(米、英、加、豪、NZ)を中心とした対中強硬の米国陣営

⑶対中の経済実利を求めるためにダンマリを決め込むドイツを中心としたEU陣営

日本は⑵の米国陣営に近い立場を取っており、これらの国を含めシックスアイズとして機密情報を共有する話も出ていたことが記憶に新しいです。

一方で同じ民主主義を掲げながらも、米トランプ大統領と独メルケル首相は予てから確執を抱え融和せず、英連邦(英、豪、NZ等)の中心である英国はブレグジット問題でEUとの協力体制に壁があり、ファイブアイズとEUとの関係には依然隔たりがある状況です。

 私は以前より6/8-6/12週の振り返りで述べたように、対中戦略において米国陣営(ファイブアイズ)とEUの結束を高めるには日本、すなわち安倍首相の力が重要だと考えていました。

https://minarai-tousan.hatenablog.com/entry/2020/06/14/111352

 

両陣営から遠く離れた日本で長期政権を築き、各国首脳とも積極的な外交で関係構築をしてきた安倍首相が、強硬な米国陣営と煮え切らないEU陣営の調整役として立ち回ることで両陣営のかすがいとなり対中結束を図ることを期待していました。

しかし、今回の退任でそれは叶わないこととなり、中立な立場で両陣営と立ち回れる人物は今のところ見当たらない状況です。

強権化し増長する中国を止めるためには、米国陣営、EU陣営が一枚岩にならなければ難しいですが、今後は結束に向けた動きは鈍化するものと思われます。

 

安倍首相は在職78ヶ月が過ぎ、確かにここ最近は金融緩和すれども一向に上昇しないインフレ率や、新型コロナ対策での迷走など政権としての晩年を意識させることが多くありました。

しかしながらとりわけ外交においての安定感と存在感は代え難く、米中を巡って混沌とする世界情勢の先行きを考えると、自らの国の元首であることを差し引いたとしても偉大な存在を失ったと言わざるを得ません。

 

 

 

 先週のこの「ジャクソンホール会議」と「安倍首相退任」の二つの出来事を金融的に見ると「低金利がより長期的に続くことが確認され緩和が続く米国」と「緩和を主導してきた安倍首相の退任で不透明感のある日本」という反対方向の流れが見えます。

となると米国株>日本株という図式が生まれるため、長期投資は全て日本株を解約し米国株、中でも低金利の旨味を一番享受できるテック銘柄が多く含まれるインデックスに移し替えました。

投資信託は先週日本株を全て解約しFANG+インデックスと新興国株に振り分け、また残していたDC確定拠出年金)でのTOPIXインデックスも全て解約し外国株式インデックスへの変更手続きを行いました。

 

短期は今後もドル安傾向が続くと見られ、引き続き円高、豪ドル高が続くと予想します。

ドル円105.15円辺りが硬そうですが、これを下抜けたらショートエントリーのタイミングかと思います。

株は引き続きナスダックが強く、日経は円高傾向とアベノミクスの不透明感で上値は重いと考えます。

 

以上