投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【4/12-16週の世界のリスクと経済指標】〜米外交の選択と集中と日本〜

先週の評点:

 

リスク   -6点(27点):悪化 (基準点33点) 

経済指標  +18点(108点):大幅良化 (基準点90点)

 

 

【リスク】

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 先週は米中対立に関わるニュースが続き、マイナス6ポイントの悪化としました。

こちらの詳細は後述します。

 

 

【経済指標】

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先週の経済指標はプラス18ポイントと大幅良化となりました。

注目の米国CPIコア指数は予想1.5%に対して1.6%と上振れを見せインフレの加速を示しましたが、これくらいの数値で緩和姿勢は拒否されないと理解され、金利は低下しました。

また、米国の小売売上高は予想5.9%に対して9.8%と驚異的な上振れで、ワクチン接種拡大による米国内での消費活動の活発化を示しました。新規失業保険申請件数も減少し、雇用の回復も示されました。

 

中国の1-3月期GDPは前年度が激しい落ち込みだったこともあり、18.3%の成長率となりました。一方で前期比では予想1.5%に対して0.6%と低下しており、これまで世界を牽引してきた中国経済の成長率が、バブル懸念の締め付け傾向もあり他国に先駆けてやや鈍化傾向にあることも示しました。

 

 

 

【先週の振り返りと考察】〜米外交の選択と集中と日本〜

先週の主要国株価指数は米長期金利が1.5%台へ低下したことから概ね伸長し、米株3指数や欧州株価指数は1%を超える上昇を見せました。ダウ平均とS&P500、DAXは最高値更新、ナスダックも最高値まで0.3%と迫っています。

またロシアRTS指数やブラジルボベスパも原油価格の戻りを背景に大幅に上昇しました。
一方で日経平均は、前週に続いて微減となりました。

欧米に比べてワクチン接種が一向に進まない中でコロナが急拡大していることが重しとなり、3万円を前に足踏みを続けています。

また、上海総合指数も中国当局によるバブル抑制の動きが重しとなり2週連続で下落となりました。

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さて、先週も米国を中心とした政治ニュースが続きました。

以下がその内容です。

①バイデン政権が9/11でアフガンからの撤収を表明。

ウクライナ東部紛争に関連し、ウクライナ国境沿いへロシア軍が集結。バイデン氏が懸念表明。

③米バイデン政権がロシアによる選挙介入やサイバー攻撃を理由に追加制裁警告。

④米政権が中国製IT機器やサービスに規制強化。中国製IT利用が許可制に。

⑤日米首脳会談の共同声明で「台湾海峡の平和と安定の重要性」と明記し、中国への対峙を鮮明化。

 

 中でも①のアフガンからの撤収表明と⑥日米首脳会談はそれぞれ転機として意味が大きいと考えます。

米国のアフガンからの撤収は、既にトランプ政権で表明され既定路線であったものの、バイデン政権に変わってから半年の延期が伝えられていました。

トランプ政権ではあくまでもビジネス的な損得勘定でアフガンへの「駐留コストの削減」のために表明された印象ですが、バイデン政権では少し意味合いが違い、「集中と選択」の要素が強い印象です。

つまりは対中政策を本格展開するにあたっては、生半可なリソースでは対峙出来ないため、米国にとって既にメリットの薄い中東を捨て、全力で中国に対峙することを選択したことを意味します。

 

 そしてアフガン撤収表明から2日と経たずに行われた日米首脳会議では「台湾海峡の平和と安定の重要性」を共同声明として明記し、日本に対しても共闘する責務を負わせています。

ここでも、対中の最前線として地政学的に重要な日本を取り込み、全力で中国の台頭に対抗する意向を強く表しています。

 

この二つの出来事は、米国が今後対中を軸としてアジアを最重要視して取り組んでいくことを明確に示しており、米中を軸として後戻り出来ない二極化が進んでいくものと思われます。

 

そして日本にとっては、難しい状況になると考えます。

これまで日本の対中の防波堤として機能していた韓国は中国に取り込まれつつあり、明確な民主主義陣営としては日本が最前線となっています。そのため朝鮮半島ではなく東シナ海を中心とした近海での衝突が現実的なものとなってきており、有事の際にはシーレーンが断絶されることにより経済的な影響も大きくなります。

また、市場として大きく経済的にも依存度の高い中国から直接的に揺さぶりをかけられる可能性も高いと考えます。

 

 実際には今すぐ衝突などの有事が起こるとは思いませんが、日本にとっては先週の政治の動きにより地政学的リスクが増したため、日本市場は嫌気される展開が続くと思われます。引き続き米国>欧州>日本というマーケットの見方が優勢かと思います。

また今週も日本電産やディスコ、エムスリーなどの決算が発表がありますが、ここまでのファストリ安川電機の株価への反応を見る限り、ハードルが高くなっている気がします。

ワクチン接種拡大によって景気回復機運が高まり欧米株は上昇していますが、引き続き日経平均は上値の重い展開が続くと思われます。

 

以上