投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【8/16-8/20週の世界のリスクと経済指標】〜テーパリングに対するFRBの迷い〜

 

先週の評点:

 

リスク   -9点(36点):大幅悪化 (基準点45点) 

経済指標  -5点(52点):小幅悪化 (基準点57点)

 

 

【リスク】

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 先週のリスクはマイナス9ポイントの大幅悪化としました。

ワクチン接種は拡大していますが、デルタ株の未接種の人への感染やブレークスルー感染により拡大が続いています。加えて米国では5人に1人が子供の感染者となり、デルタ株はこれまでのコロナとは違い子供が媒介となる可能性が高く、夏休みを終え学校に集まる子供を中心に更に拡大することが心配されます。

 

 また、アフガンではあっという間にタリバンが首都カブールも制圧しアフガン政府が崩壊、タリバンが20年振りに政権を奪取しました。

米軍の撤退は前政権から計画されていたことですが、ここ最近のタリバンの制圧スピードが凄まじく、欧米各国は予想外の混乱を伴った撤退作業を余儀なくされました。

そしてそれは「失敗」という印象を強く残し、バイデン政権に対する信頼性を低下させることとなりました。

 

 

【経済指標】

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 先週の経済指標はマイナス5ポイントの悪化でした。

先週は指標の悪化が見られるようになり、景気回復の鈍化が確認されました。

中国では小売売上高と鉱工業生産が共に前回/予想に比べて悪化となり、中国景気の減速を示しました。

また、米国も小売売上高や住宅着工件数も大きく悪化を示し、一旦の景気のピークアウトを示しました。

 

NZ準備銀行の政策金利は0.25%の利上げが予想されていましたが、前日の17日にコロナ感染者発生を理由に全土のロックダウンが決定したために一時的な景気減速が懸念され、金利据え置きとなりました。

 

足元での供給不安やデルタ株の感染拡大から、指標的にも頭が重い状況が示され始めました。

 

 

【先週の振り返りと考察】

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 先週は前週末のアフガンでのタリバン制圧のニュースで重い雰囲気の中で始まり、FOMC議事要旨の発表で、大半の当局者が年内のテーパリング開始を予想していたことが示唆されて弱含みで推移しました。

特に上海総合や香港ハンセンは、相次ぐ中国当局の規制強化に欧米の重い雰囲気が重なり、大幅に下落しました。

また日経も欧米、中国の下落に加えて、トヨタが9月の生産を4割減産する発表をしたことから景気敏感セクターが大きく売られ一時27,000円を割るところまで反落しました。

WTI原油先物も中国の減速気運の高まりから需要減を見込み10%近く下落しました。

 

〜テーパリングに対するFRBの迷い〜

さて、先週は様々な要因により市場がやや重い雰囲気となった週でした。

要因としては下記が挙げられます。

 

①各地でのデルタ株の蔓延(米国でも8/16に瞬間的に25万人の新規感染者発生)

FOMC議事要旨からのFRBの予想以上のタカ派化の確認

③中国の規制強化(中国恒大集団への当局の介入及び個人情報保護法の成立)

④供給不安(半導体不足、コロナでのサプライチェーンの停止によるトヨタの減産発表)

 

特に②FOMC議事要旨からのFRBタカ派化に関しては、7月末のFOMC以降多くのFRB高官が公の場でテーパリングを肯定する発言が増えていましたが、FOMCの議事要旨はそれを裏付ける内容となりました。

8/17にはFRBメンバーで最もハト派ミネアポリス連銀総裁までもがテーパリング容認を発言しています。

そのため、ダウはFOMC議事要旨の日は久しぶりの1%の下落となりました。

 

 しかし、そんな中、8/20に突如FRBメンバーのダラス連銀総裁が「デルタ株の感染拡大が収まらず経済の進展に悪影響を及ぼすようであれば、これまでの自身の見解を調整する可能性を否定しない」と発言しました。

ダラス連銀総裁はこれまでタカ派の急先鋒としてかなり早い段階から早期テーパリングの必要性を訴え続けてきた人物ですが、ここに来て急にアクセルを緩める発言をしています。

 

ここまで中国や欧米を中心とした景気回復により強いインフレ圧力が生じていたため、それに対応してテーパリング議論が進んできましたが、足元は中国景気の減速感から商品価格も落ち着きを見せています。

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期待インフレ率を表す米国のBEI指数も5月のピーク以降2.27%と落ち着いています。

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 経済指標的にも、足元の景気の先行指数である連銀指数や住宅着工件数などで下振れが目立ち景気のピークアウト感が出始めており、景気の減速も意識され始めています。

また、なんと言ってもテーパリングが現実味を帯びてきているにも関わらず、長期金利は1.2%台と3月末のピークから低下し続け、上昇の兆しが見えません。

 

そんな中でのダラス連銀総裁の発言は、足元での景気楽観論への影に対する迷いを感じさせます。

基本的にはテーパリングが年内に開始されることはコンセンサスとなっており、ほぼ間違いないと思います。

一方で先週NZ準備銀行が確実視された利上げをロックダウンを理由に延期したように、その開始時期に関して予想される10月から若干のずれが発生する可能性を連想させます。

 

いずれにしても次週の米国Markit PMI、PCEコアデフレーターの経済指標、そしてジャクソンホール会議でのパウエル議長の発言にサプライズがあるのか注目します。

 

以上