【6/8-6/12週の世界のリスクと経済指標】〜G7結束に向けての日本の重要性〜
先週の評点:
リスク -6点(36点):悪化 (基準点42点)
経済指標 -5点(49点):悪化 (基準点54点)
【リスク】
先週はCOVID-19の新興国での感染拡大が深刻化し、これまで先行して拡大していた先進国の感染者数を逆転しました。
またアメリカではアリゾナ、カリフォルニア、テキサス、フロリダなどの早い段階で制限解除が行われ、人口が多く経済的に重要な州にて感染者数が再拡大を見せ、全米でも200万人を超えました。
また、アメリカ国内で続く白人警官による黒人暴行死の抗議デモは続いており、シアトルでは抗議集団による街なかの占拠も行われ緊迫しています。
今後抗議デモ参加者の感染者も増えてくることが予想され、米国内での第二波の懸念が大きくなっています。
その抗議デモに対するトランプ大統領の対立を煽るような発言で、同氏の支持率は急落しており、次期大統領選の支持率も競合のバイデン氏に14%のリードを許しています。
全体としてはCOVID-19の米国での第二波懸念とトランプ大統領の支持率低下、北朝鮮と韓国の通信遮断のネガティブでマイナス6ポイントの悪化としました。
【経済指標】
先週はFOMCが開催されました。
政策金利は0.00-0.25%を据え置き、22年までゼロ付近で維持され引き続き景気回復のため支援を続けるとの表明がなされました。
またCOVID-19の経済に対する影響は予想以上に大きく長引くことになると示しました。
その他は米国、中国の5月のインフレ系指標の発表がありましたが、経済活動制限の影響を受けて数値は低下となりました。引き続き中央銀行による金融緩和の必要性を示した形となりました。
全体としてはマイナス5ポイントの悪化としました。
【先週の振り返り】
先週は前週末の雇用統計のポジティブサプライズを受けて週明けに各指数高値更新し、ナスダックも10000ポイントを超えて史上最高値を更新しました。
しかし、FOMC後のパウエル議長の「新型コロナの経済に対する悪影響が長引く」という観測と、人口が多く経済的に重要な州での新型コロナ感染拡大及び全米の感染者が200万人を超えたことが伝えられると一気にリスクオフとなりました。
ダウは1日で1861ドル下落(6.9%減)し、ナスダックも527ポイント下落(5.27%減)となりました。
週足でもダウは5.5%の大幅下落、前週プラス10%と上昇が大きかった独DAXも7%の下落となりました。
先週は高値からの大き目の調整となりましたが、数値的には6月に入ってからの急激な上昇が調整されてほぼ5月末に戻っており、過熱感を消化した状態だと解釈しています。
各国中央銀行の下支えは万全であり、今後は6月に入ってからの上昇一辺倒のような状況にはならないまでも、上下動を繰り返しながらもゆっくりと株価は上昇していくものと推測します。
【G7結束に向けての日本の重要性】
さて、経済ネタから少し外れますが、先週私が注目したのは9月以降に米国で予定されているG7サミットに関する動きです。
6/10に日本の安倍首相が衆院予算委員会で、香港国家安全法に対し「一国二制度を前提に、声明を発出する考え方の下にG7の中で日本がリードしていきたい」と表明しました。このことはG7において結束を促す大きな動きになるのではないかと感じています。
元々6月中旬に米国にてG7サミットが開催される予定になっていましたが、新型コロナの影響で現在のところ9月以降に延期されることになっています。
議長であるトランプ大統領は、G7サミットを世界に対して強権を続ける中国に対する牽制の場としたい意向で、従来のG7以外のロシア、豪州、韓国、インドも招待すると提案しています。
つまり、トランプ大統領の狙いはG7以外の国々も含めて対中勢力としてまとめ上げることだと理解できます。(ロシアがその勢力として適当なのかは疑問ですが)
ここで、それらの米国以外のG7メンバー国及び招待国の現時点でのスタンスを一覧にまとめてみました。
これを見ると、特にG7メンバーにおいて一枚岩となっていない印象が見て取れると思います。
元々、イギリス、フランス、ドイツ、イタリアの欧州各国は中国との結びつきが強く、経済的にも依存しているためトランプ大統領の対中政策には一歩引いて構えているような印象でした。
事実、米国がファーウェイの通信機器を使用しないように呼びかける中、フランスはファーウェイ製品を排除せず、ファーウェイの工場進出も許可しています。
また欧州各国は中国の「一帯一路」政策にも積極的に参加しています。
そのため、欧州各国は巨大な中国経済への影響を気にして中国の強権的な振る舞いに対しても積極的に発言していません。(イギリスは香港問題もあり徐々にスタンスを対中に変化させている印象です。)
また、ここ最近のトランプ大統領の言動や行動は米国の信頼性を著しく低下させており、それも各国に米国との距離を産んでいるものと推測します。
つまりはトランプ大統領の思惑とは違い、G7メンバーは中国に対して一枚岩で対抗する体制にはなっておらず、米国はG7メンバーからの明確な支持を得られていない状況だと言えます。
そんな中、安倍首相の示したこのスタンスは、日本で長期政権を築き、各国首脳とも積極的な外交で関係構築をしてきた安倍首相が、先鋭的なトランプ大統領と各国首脳との緩衝役として立ち回ることを意味します。
そしてそれは孤立する米国を支援し、他国からも信用され働きかけられる存在として非常に重要なポジションとなる可能性が考えられます。
実際、安倍首相の表明の同日に、日仏外相による電話会談が行われ、フランス外相から「香港問題に関して懸念を共有する」という同意を得ています。
9月以降に行われるG7サミットまでに日本政府の地道な働きかけが続けば、参加国が民主主義を標榜する国々として結束を高め、G7サミットでの共同声明が強権を強める中国に対しての牽制力として力を持ってくるものと考えます。
今後もG7サミット参加国に対する日本政府の動きに注目したいと思います。
以上