【6/1-6/5週の世界のリスクと経済指標】~最高値を射程圏に捉えた株価指数~
先週の評点:
リスク -5点(40点):悪化 (基準点42点)
経済指標 +15点(117点):大幅良化 (基準点102点)
【リスク】
先週は米国内で発生した白人警察官による黒人暴行死に対する抗議デモが全米に拡大して一部暴徒化し、リスクが顕在化しました。
トランプ大統領はデモ隊の中に極左の過激派が潜んで煽っているとして暴徒化するデモ隊に対して軍隊を配備することを示唆し、波紋を呼んでいます。
また対立を助長するような繰り返しているため、さらに混乱を煽り急速に支持率を低下させています。
米国内での混乱に乗じて中国も攻勢に出ており香港で中国国歌の侮辱を禁ずる国歌条例を成立し、9月の立法選挙前に国家安全法を施行してしまおうと圧力を強めています。
またブレグジットに関して、EUと英国のFTA交渉が行われましたが、またもや平行線を辿り進捗しなかった模様です。今のところ英ジョンソン首相に交渉期限延期の意思はなく、「合意なき離脱」が現実味を帯びてきました。
全体としてはブレグジット、米国での抗議デモによるトランプ大統領再選への影響、香港情勢のネガティブでマイナス4ポイントの悪化としました。
【経済指標】
先週は米ISM製造業/非製造業景況指数、雇用統計の発表がありました。
ISM景況指数は製造業が前回41.5から43.1へ、非製造業が前回41.8から45.4へ上昇し底打ちを示しました。
また雇用統計は失業率が前回14.7%から13.3%へ改善(予想は19.8%)、非農業部門雇用者数は900万人減の予想から250万人の増加へ改善とポジティブサプライズが起こりました。
これにより米経済が制限緩和により徐々に回復してきていることが数値として示されてきました。
その他の指標も概ね改善を示したため、全体としてはプラス15の大幅良化としました。
【先週の振り返り】~最高値を射程圏に捉えた株価指数~
先週は前週の香港国家安全法に対するトランプ大統領の言及が穏やかだったことを受けて週明けから株価が続伸しました。また、米国のISM製造業/非製造業景況指数の底打ち感、雇用統計のポジティブサプライズを背景に米国3指数は週足で大きく動きました。
欧州株も前週の独仏首脳による「コロナ基金」の設立推進に加え、今週ECBがPPEP(パンデミック緊急購入プログラム)の枠を大幅増額して期限も延長することを発表したことにより大幅伸長しました。
加えて1300億ユーロの新たな財政政策を打ち出したドイツDAXは週足で10%の伸びを記録しました。
これまで巣篭もり経済下でも好調なテック企業を背景に、特に強い伸びを見せていたナスダックですが、先週ついに一時史上最高値を更新しました。
ここで2020年最高値の数値と6/5終値の比較増減表を添付します。
ナスダックは終値ベースで最高値まであと0.03%、日経、ダウ、S&P500、DAXも残すところあと5~8%と射程圏に入ってきました。
一方でブレグジット問題を抱える英FTSE100、中国の統制が厳しくなっている香港ハンセンや、経済基盤が脆弱でCOVID-19の感染拡大が続くロシアRTS、ブラジルボベスパは回復が遅れていることがわかります。
これらの株価指数も底値からは大幅に戻していますが、個別要因によりマーケットから選好されていない様子が分かります。
これまでの株価の戻りを私なりの解釈としてダウ平均のチャート上に表したのが添付の通りです。
私なりの解釈だと、これまでの回復は3つのステージに分類できるかと思います。
①3月23日~4月半ば:全世界的な大規模な金融緩和、財政政策による下支え時期
②4月半ば~5月末:制限緩和による経済のV字回復期待時期
③6月第1週:実体としての経済指標の底打ち確認
③に上げた先週の上昇はこれまで見えなかった実体経済の回復が、経済指標という数字となって現れ始めたことが好感された事により、さらに株価をブーストアップさせた印象です。
未だCOVID-19の第二波懸念や米中対立の激化、加えて米国内での白人警察官に対する抗議デモの激化が大きな懸念材料として存在しますが、マーケットでは上昇期待がそれらを打ち消す程強い勢いとなっています。
今後はこの強い勢いが射程圏に入った最高値をも試す展開になるのか、それとも抵抗にあって一旦下落するのか注目されます。
次週は米国の金融政策を決めるFOMC(米連邦公開市場委員会)が開催されます。米国時間6/10には政策金利発表とパウエル議長の会見が行われ、引き続き経済下支えの政策が発表されると観測されます。
さらにマーケットに推進力を与える事になるのか、注目したいと思います。
以上