投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【8/31-9/4週の世界のリスクと経済指標】~米国株はさらに調整するか~

先週の評点:

リスク   -4点(38点):小幅悪化 (基準点42点) 

経済指標  -4点(116点):小幅悪化 (基準点120点)

 

 

【リスク】

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先週もCOVID-19による感染拡大は続いていますが、ワクチンの開発も着実に進んでいます。

いち早く承認に漕ぎ着けたロシア製ワクチンも一定の効果が確認されているようです。それもあってか感染拡大は続きながらも以前のように大きく注目されなくなった印象です。

米中対立は先週はエスカレートするような出来事はありませんでしたが、今度はベラルーシ情勢を巡ってEUとロシアの対立が顕著になってきました。ロシアの反体制派のナワリヌイ氏への神経毒投与疑惑も相まってEUからのロシアへの批判が強まりそうです。

 

ブレグジットに関わる英国とEUの通商交渉も進展が見られず、停滞が続いています。

派手さはありませんが、EUに絡んだリスクが徐々に膨らみつつあるような気がします。

 

全体としてはブレグジット、中東情勢、ロシアとEUの問題からマイナス4ポイントとなり小幅悪化としました。

 

 

【経済指標】

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先週は米国の重要指標が相次ぎました。

ISM製造業指数は予想54.6に対し56.0で改善、非製造業指数は予想は下回ったものの、50を超えて堅調な回復傾向を示しました。

また、米雇用統計は失業率が予想9.8%に対して8.4%で大幅改善、雇用者数はコンセンサスによって見方が変わって137万人増でまずまずとなりました。

米国の経済指標としては堅調な回復を確認できた印象です。

 

一方でユーロは、8月の欧州での感染再拡大を背景にしてかやや低調な結果が続いた印象です。ドイツ、ユーロ共にCPIは予想を下回り、小売売上高も前月比でマイナスとなりました。

ここまで回復著しかった欧州指標が少し鈍化しています。

 

全体としてはネガティブがポジティブを若干上回り、マイナス4ポイントの小幅悪化としました。

 

 

 

【先週の振り返りと考察】~米国株はさらに調整するか~

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 先週は、9/2まではISM製造業景況指数の回復や、アップル、テスラ の株式分割ZOOMの好決算を追い風に米テック株が高値を更新し続け、ナスダックの9/2終値12000ポイントを超えました。

しかし、9/3には一転してテスラ、アップルが寄り付きから大きく崩れ、それに釣られる形でこれまで大きく上昇していたGAFAMを中心としたテック銘柄が崩れました。

特にナスダックは9/2終値12,056から9/4終値11,313まで6.16%下げ急落しました。

 

今回の米テック銘柄の急落は、ファンダメンタル的な大きな要因があったわけではなく、ここ最近急速に上昇し加熱し過ぎた大型テック株が、ちょっとしたきっかけから売られ調整が入ったと考えられます。

前週のジャクソンホールではFRBのパウエル議長が、雇用回復に注力するためインフレ率2%をオーバーシュートすることを許容する方針を出し、同じく9/4には雇用統計の良好な結果を見ながらも「低金利は何年も続く」と改めてコメントしています。

また、経済指標もISM製造業指数は54.6に対し56と大幅に改善、ISM非製造業も予想の57を若干下回るも56.950以上の好調をキープ、雇用統計も失業率8.4%と大幅な改善を見せています。

むしろ、ファンダメンタル的には株価に追い風になる状況が強まっており、ここからさらに大崩れしすることは考えにくい状況です。

 

先週大きく下落した状況でもナスダックおよびS&P500はコロナショック前の高値を上回っており、割高に見えるため今後も大きく調整が継続するようにも見えます。

しかし、明らかにコロナショック前とは前提が大きく違います。

コロナショックが始まった2/25時点で4.16兆ドルだったFEDの資産は7.02兆ドルまで膨張したままキープしており、FRBの無制限QE政策とゼロ金利政策により、マーケットに大量の資金が供給されています。

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つまりコロナショック前の時点と比較すると、ゼロ金利で低コストで資金が調達できる上、無制限QE31%も多い資金がマーケットに供給されています。加えて米国政府は既に2.2兆ドルの財政政策を打ち、更に追加対策を審議しています。

もちろんこれらはCOVID-19による経済的ダメージを和らげるために行われていますが、同時にその副作用として株式市場にも流れて行きます。

つまり現在の資金供給状況においては、現在の株価水準もある意味適正であると考えられます。

また、米国は金融政策、財政政策で拠出されている額も桁違いであるため、他国の株価指数に比べ、ナスダック、S&P500のようにコロナショック前の水準を大きく上回っていることも納得できます。

 

そのため、一時的な調整は次週も続く可能性はあるものの、基本的には上昇相場の調整と考え、長期ポートフォリオは強気継続です。

 

一方で注意点としては、先週末に急上昇した長期金利です。好調な雇用統計の結果を受けてインフレ期待が上昇し、長期金利は前日から大幅に上昇し0.721%となりました。

現時点では心配は必要ないレベルかと思いますが、今後インフレ期待から長期金利(米10国債利回り)が上昇し、1%を超えてくるような展開になると株価には向かい風となる可能性があります。

しかし、その時には先週クラリダFRB副議長が含みを残したように、より長い部分の金利を調整するYCCの導入検討の動きも出てくると考えます。

 

週明けは先週のテック株の暴落の影響がどこまで残っているかを見極めながらナスダックロング目線、9/7の米Labor Day明けから再度議会での追加経済対策の審議状況に注意していきます。

また為替は徐々に絡むリスクが増えてきて、指標も悪化傾向が観られるユーロショート目線です。

 

以上