【8/3-8/7週の世界のリスクと経済指標】~米国の回復状況の確認~
先週の評点:
リスク -10点(32点):悪化 (基準点42点)
経済指標 +18点(114点):悪化 (基準点96点)
【リスク】
先週も米中対立と香港絡みで多くの悪材料がありました。
まず、米国が中国バイトダンスが運営するTiktokの米国事業について、安全保障上の問題から禁止もしくは売却するように迫り、且つバイトダンスは売却により莫大な利益を得るので米政府に一部を納めることを要求しました。
そしてそれに付随して従来からあったクリーンネットワーク計画を拡充して新指針を出し、米国の配信事業者に対して中国製アプリやクラウドサービスを排除することを促しました。
また、香港では立法会選挙への民主派候補12人の立候補資格が取り消され、選挙自体もCOVID-19感染予防を理由に1年間の延期が表明されました。民主派からは中国への反発が高まっている現時点では勝ち目が薄いと見て意図的に延期したとの見方で反発が出ています。
また、トランプ政権はキャリーラム香港行政長官ら11人に自治権侵害を理由に資産凍結などの制裁を行うことを表明しています。
全体的には米中対立と香港絡みの悪材料が大きく、マイナス10ポイントの大幅悪化としました。
【経済指標】
先週は米国の重要指数であるISM製造業/非製造業景況指数と雇用統計の発表がありました。
ISM製造業、非製造業景況指数は共に予想を上回り上振れしました。
ADP雇用統計は予想を大幅に下回り心配されましたが、米国労働省の雇用統計は予想を上回る+176万人でポジティブとなりました。
全体としては米国重要指標がポジティブだったことでプラス18ポイントと大幅良化となりました。
【先週の振り返りと考察】~米国の回復状況の確認~
先週は米国ISM景況指数や雇用統計などの指標に改善が見られたことから、全般的に株価は伸長しました。
特にこれまで戻りが悪かったダウ平均が6日続伸で3.8%高となりました。
さて、先週は米国の重要指標であるISM景況指数と雇用統計の発表がありました。
雇用統計は4月に非農業部門雇用者数が2050万人の大幅減を記録しましたが、5月250万人増、6月480万人増、そして7月が176万人増と順調に回復を見せています。
また米株価指数自体もコロナショック前の年初来高値比で見てダウはマイナス7.22%となっていますが、より分散の効いているS&P500はマイナス1.03%、テック株が多いナスダックに至ってはプラス12.6%となって順調に回復を見せています。
このアメリカの回復具合を製造業の切り口で、データを以って確認してみたいと思います。
まずは先週発表のあったISM製造業PMI、非製造業PMIの推移です。
4月を底に製造業、非製造業共に回復を見せ、6月、7月は景気拡大を示す50を超えて推移し7月にはコロナショック前の直近高値(製造業50.9、非製造業57.3)を上回っています。
次に鉱工業生産指数です。
こちらも4月を底に回復し、特に6月は5.4%とここ数年見ないほどの数値で景気向上を示しています。あくまでも前月比なので3月、4月がひどかったということもありますが、製造現場での回復傾向が読み取れます。
次に設備稼働率です。
製造現場での設備の稼働率は、以前は77%前後で推移していましたが、コロナショックで5月に64%台まで落ち込み、足元の6月には68.6%まで回復しています。一方で70%台には達しておらず、稼働率はやや力強さにかける印象です。
次に自動車販売台数推移です。
こちらも設備稼働率と同様、以前は140万台程度で推移していましたが、コロナショックで4月に74万台まで落ち込みました。7月には122万台まで戻していますが、やはり以前の水準である140万台には戻っておらずこちらも力強さに欠ける印象です。
次に日本の工作機械受注高に占める米国向けの推移です。(青色が米国向け受注額)
こちらは5月の84億円を底に6月には一気に140億円まで反発しています。しかし前年同月(2019年6月)には188億円の受注高があったことを考えると、こちらも回復半ばという印象です。
総じて見ると、
①FRBの金融政策(主に対企業)と米政府の財政政策(主に対個人)により手厚い支援が行われており、それを受けて全体的な景況感は良好。
②製造業にも回復は見えるもののやや力強さに欠け、本格回復はまだまだこれから。
といったところでしょうか。
中国は製造業およびテックの両輪で力強く回復している印象です。
一方で、現在の米国の回復状況は、テック企業は力強い成長を見せているものの、失業保険継続受給者数が1610万人もいる中では製造業が力強さに欠け、いまいちその回復に厚みを感じられない印象です。
今後それが徐々に厚みを増していくのか、まずは次週に発表される鉱工業生産指数と設備稼働率に注目したいと思います。
以上