投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【7/6-7/10週の世界のリスクと経済指標】〜上海総合指数の驚異的上昇はホンモノか〜

先週の評点:

リスク   -5点(37点):悪化 (基準点42点) 

経済指標  +11点(62点):大幅良化 (基準点51点)

 

 

【リスク】

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先週もCOVID-19の感染拡大は収まる気配を見せず、全世界の感染者が1200万人を突破しました。5日間で感染者数が約100万人増加する事態となっています。

また、米国でも1日の感染者増加数が6万人を超え、特にここ最近感染者の増加が激しいサンベルト地域での死者数も増加傾向にあります。

これを受けて漸くトランプ大統領がマスクを装着することとなりました。

 

また、香港国安法の施行を受けて早速中国の出先機関が香港市内の建物に設立され、香港民主派に対する圧力が次々に強化されています。

国安法の内容も公表されましたが、インターネット情報や報道などの対しても中国当局の意識が恣意的に働く可能性が高い内容となっています。

それを受けて、先進国の政府や企業の間では香港当局への情報提供の停止や、関係の見直しを行い始めました。

 

全体としてはCOVID-19関連および香港国安法のネガティブが重しとなり、マイナス5ポイントの悪化となりました。

 

 

【経済指標】

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先週の注目の経済指標は米国ISM非製造業景況指数でしたが、前週からの米経済指標の回復基調を受け継ぎ、予想50.0に対して57.1と大幅に良化しました。

その他の指標も概ね回復傾向を見せ、全体としてはプラス11ポイントの大幅良化となりました。

 

 

 

【先週の振り返り】~上海総合指数の驚異的上昇はホンモノか~

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先週は、前週から引続き上海総合指数およびナスダックが強く、それ以外は週足ではほぼヨコヨコの動きでした。

特筆すべきは上海総合指数で、7/6に中国国営メディアが株式市場の強気相場を促す報道を行ったことをきっかけに、週足で7.31%、またこの2週間では13.55%もの驚異的な伸びを見せました。

私は、先週は米国でのCOVID-19の感染者数の爆発的な伸びが各地での経済活動制限を再開させ、株価は調整するのではないかと考えていましたが、ナスダックと上海総合指数の上昇で否定された形となりました。

 

これまで日米欧の株式市場の回復具合に比べると際立った動きをしていなかった中国市場に対して、私はあまり気にしていませんでしたので、今回の急騰を「香港国安法を正当化するために官製相場で動いているのではないか?」と違和感を感じながら眺めていました。

そのため今回は改めて中国経済のファンダメンタルズを確認してみたいと思います。

 

まず、株価の推移です。上海総合指数とダウ平均を比較してみます。

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3/23の今年の底値においては、ダウ平均が年初来高値から37%下落したのに対し、上海総合はわずか14%の下落で堪えています。

元々中国の景気に陰りが見えてきていたのと米中貿易摩擦の影響で、最高値を更新していたダウ平均と比べて今年の高値が高くなかったということはあります。しかし、中国のCOVID-19新規感染者がピークだった2月初旬に大幅下落を経験し、そこからの回復途上で3/23を迎えていたので最高値から転げ落ちたダウ平均とは状況が異なったことが推測されます。

 

次に中国のPMI推移を見てみます。

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中国国内でのCOVID-19感染者数がピークを迎えた2月は製造業、非製造業共に大幅にPMIが悪化していますが、3月からはすぐにV字回復で正常値である50以上に戻っています。

 

また次に中国内での自動車新車販売台数の推移を見てみます。

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こちらも昨年末から販売台数を減らし、2月には31万台という底をつけますが、3月以降はV字回復を見せ4月からは200万台の大台を回復しています。

 

つまり、中国の景気は2月に底をつけましたが、そこからは企業の景況感はもちろん、高級品である自動車に対する消費者の購買意欲や、それに対応する製造業の供給能力も急速に回復していたことになります。

 

また、中国政府の発表だけだと信頼性に欠ける部分もあるので、補足として私の本業である工作機械業界の中国向けの受注高の推移を見てみます。青い部分が中国向けです。

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工作機械は「マザーマシン」として製造業の根幹を担う機械であり、日本が強い分野ですので中国の製造業が強くなればそれだけ中国向け工作機械の受注高が増えます。

これを見ても中国経済が止まった2月を底に中国向けの受注が徐々に戻り、それどころか2月以前よりも伸びていることがわかります。

つまりここからも中国の製造業が強い回復を見せていることが伺えます。

工作機械業界全体の受注高も5月で底打ちを示し6月は上昇していますが、恐らくこちらの中国の回復の影響が多いものと推測されます。(6月の受注高は速報値であり販売先毎の情報がまだ発表されないためわかりません。)

 

今回の上海総合指数の急騰は、7/1の香港国家安全法の施行や7/6の国営メディアの報道などの政治絡みの事柄がきっかけとなっており、やや過熱感も見られます。

しかしながら今回分析してみたデータを見る限りは、ファンダメンタルズ的にも製造業を中心とした経済が回復を見せており、しっかりと地に足をつけた上昇であることも伺えるかと思います。

また、冒頭に挙げた3/23の世界各国の株価が下落した際に中国の下落幅が少なかったと言う事も、既に中国は急回復の途中であったから傷が浅かったと考えられます。

 

今回の考察を経て中国経済の回復状況を改めて確認できたため、今後中国に関わりの大きい国(日本、ドイツ)および分野(機械関連、ロボット、FA関連)への影響に注目して行きたいと思います。

 

また、7/16に発表される中国4-6月期GDPの数値にも注目したいと思います。

 

以上