投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【6/15-6/19週の世界のリスクと経済指標】〜急速に悪化する設備投資〜

先週の評点:

 

リスク   -5点(37点):悪化 (基準点42点) 

経済指標  +6点(84点):良化 (基準点78点)

 

 

【リスク】

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先週はCOVID-19の感染拡大による不安が再度じわじわと頭をもたげてきた印象です。ブラジル、インドなどの新興国での拡大が激しさを増し、ブラジルでは感染者数が100万人を超えました。

また米国内での感染者数も早期に制限解除した州を中心に増加傾向が強まり、アリゾナ、フロリダなど4州においてアップルストアの再閉鎖が発表されました。

これを機に経済活動制限再開となるのか、今後の米国州政府の動向に注目します。

 

また、香港国家安全法に関して、先週の安倍首相の「G7をリードする」という表明から1週間で早速G7外相が「重大な懸念」として中国に再考を表明しました。

しかし、中国政府は「中国の内政」として制止には応じず、香港国家安全法を7月上旬までに立方させることを目指している模様です。そしてその中身は香港に治安維持期間を設置し、かつ国家安全法を全ての香港の法律に優先するとの内容になっていることが判明しています。

 

全体としてはネガティブ要因が多く、マイナス5ポイントの悪化としました。

 

 

【経済指標】

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先週は米国の5月小売売上高の発表がありましたが、米国での経済活動制限緩和と政府からの給付金支給を背景に消費活動が大きな戻りを見せ予想8.0%増に対して17.7%増となりました。

またNY連銀指数やフィリー連銀指数などの6月景況指数も大幅な改善を見せました。

米国の経済指標はISM景況指数、雇用統計に続き底打ちを示しています。

 

全体としてはポジティブな指標が多く、プラス6ポイントの良化としました。

 

 

【先週の振り返り】

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先週は、週足では前週の大幅下落の反発から全ての指数で増加となりました。

しかし内実は、「COVID-19の第二波懸念」のマイナス要因と 「中銀・政府の下支え政策+経済指標の回復」のポジティブ要因の間で揺れ動いた週でした。

 

ただ、週を通しての全体としては、COVID-19感染者の米国の特定州での増加が第二波懸念を強くし上値が重い印象です。FRBや米国政府による新たな政策が発表され経済指標も回復しつつある中で、ややCOVID-19関連の下向きなニュースへの反応が強いように思います。

大きく崩れることはないと思われるも、やや下押し気味になることを予想します。

個人的には先週ボーナスが支給されましたので、下押ししたところで長期投資に追加資金を投入したいと思います。

 

 

【急速に悪化する設備投資】

さて、私は個人投資家として金融リテラシーを高める活動をしつつ、サラリーマンとして「工作機械」という機械やプレス機械、工場の自動化関連の産業機械を販売する機械商社に勤めています。

この工作機械は簡単に言うと金属を削り、切り、磨く機械のことです。機械を作るための機械であり、設備機械業界の最上流に位置するため別名「マザーマシン」とも言われます。

そのためこの業界は機械関連の中でも特に景気に敏感で、景気が傾き始めると一番先に悪くなり、景気が回復し始めて一番遅く回復する業界です。

ここで経済指標としても扱われる日本工作機械工業会が発表する毎月の受注統計をまとめたグラフを添付します。

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工作機械業界の好不調のバロメーターは単月の受注高が1000億円を超えるかどうかです。(最高額は20183月の1828億円)

2019年の米中貿易摩擦が激しさを増してきた頃から受注高が1000億円を下回り始め、足元ではコロナショックを受けて500億円に迫っています。

4月、5月は営業活動すらできない時期であったので、それを加味すると5月を底に反転してくる可能性もありますが、売り上げがピークの1/3以下、平常時の半分しかない状況でかなり危機的水準となっていることがわかります。

 

私の現在の顧客は自動車部品製造業をしている企業が主体です。

幸いなことに現在私が主として取り扱う設備は、一般的には工作機械よりも不景気の波が一歩遅れるFAFactory Autommation:工場の自動化)設備であるため、日本で緊急事態宣言が発出される前は、悪いと言われながらも設備投資の商談は続いておりさほど実感はありませんでした。

しかし、緊急事態宣言が解除され、6月に入って営業活動を再開し情報を集めてみると、軒並み計画中止か計画延期となり出しました。

顧客の中でも緊急事態宣言の解除や海外各国のロックダウンの緩和で少し落ち着きを取り戻すと共に徐々に今後の生産計画の実態が把握され始め、急速に色々なものが止まり始めていることが顕になってきました。

それにより、元々景気が下降し始めていた設備業界においてはトドメを刺された形となり、設備投資が萎む速度が早まったため仕事の取り合いが激化しています。

実際に私が現在取り組んでいる商談では、緊急事態宣言前に1.1億円だった機械の値段が6千万円まで下がり、「キャッシュインがないよりマシ」として採算度外視で安値を永遠に提示し合う「泥仕合い」が活発になってきています。

コロナショックは当初サービス業に大きな打撃を与えてきましたが、一歩遅れて本格的に製造業にもその打撃が波及し、日本の強みである設備産業にも大きな打撃を与えていることを肌で体感しています。

半導体業界など比較的好調な業種もありますが裾野は小さく、やはり日本の製造業の根幹である自動車業界が戻らない限りは日本の設備産業は厳しい状況が続きます。

 

この状況はすぐには回復を望めず長期化する恐れがあり、国や日銀による短期的な支援があるとは言え今後設備産業を支える中小企業に倒産の波が押し寄せてくることは容易に想像できす。

日本の大手製造業企業では、リーマンショック以降での急な海外進出によりコアとなる人材が海外工場に出たことで、国内に残る若い技術者に技術の伝承が行われず技術力低下が顕著となっています。

ここ数年はその技術力の低下を設備メーカーが補うことで何とかバランスを保ってきた印象です。それらの設備メーカーが失われることになればさらに技術力の低下を招き、ひいては日本の製造業全体の競争力の低下を招くことが危惧されます。

 

私の勤める会社もこの波を乗り越えて生き残れるよう、私も当面は本業の建て直しに力を注いで行こうと思っています。

 

以上