投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【3/2-3/6週の世界のリスクと経済指標】〜下落する原油価格の影響〜

先週の評点:

リスク   -4点(38点):悪化 (基準点42点) 

経済指標  +8点(89点):大幅良化 (基準点81点)

 

短期の相場感:やや弱気

長期の相場感:弱気

 

リスク

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先週は欧米でのCOVID-19の感染者数が急拡大し、いよいよ先進国でも自らの問題として意識されました。

イタリアでは感染者5000人超、死者200人超となり、ミラノ市を含む北部ロンバルディア州は封鎖となりました。

また米国でもペンシルベニア州ワシントン州カリフォルニア州NY州では感染拡大を受け、非常事態宣言が出される事態となりました。

これらの国を始め、各国で人の移動への制限が拡大し、実体経済へも着実に影響が出てきました。

 

また、2020年末の移行期間終了に向けての英国、EUの交渉が行われましたが、不調に終わった模様です。

今はCOVID-19をきっかけに世界が混乱していますが、合意なき離脱の問題も再燃してくると思われるので注意が必要です。

 

一方でポジティブなニュースとしてはシリアで衝突していたトルコとロシアの停戦合意、米民主党候補予備選挙での穏健派バイデン氏の躍進がありました。

 

全体としてはネガティブニュースのインパクトが上回り、マイナス4としました。

 

 

経済指標

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先週の経済指標は中国の非製造業PMIが急激に悪化しました。

一方で重要指標であるアメリカのISM製造業指数はほぼ予想通り、非製造業景況指数は良化、雇用統計も雇用者数は27.3万人で良化、平均時給と失業率も良化となり、ほぼパーフェクトな内容でした。

米国の指標は2/24からの株価急落を織り込んでいないため、最新の状況を現していませんが少なくとも2月までは米国の実体経済は好調であったことを示しています。

全体としては良化の指標が多かったためプラス8ポイントで大幅良化としました。

 

 

先週の振り返りと次週の展望〜下落する原油価格の影響〜

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 先週は月曜日に各国中央銀行の協調緩和の構えから反発、火曜日にFRB50bpsの緊急利下げで反落、水曜日はSuper Tuesday(米民主党大統予備選挙)でのバイデン候補の躍進が伝えられると反発、木曜日にCOVID-19の拡大が伝えられると反落とダウは1000ポイント程度の値幅で大きく上下動しました。

米株指数は週足では3週間振りにプラスで引けましたが、日経はFRBの利下げの影響で為替が2/28終値から2.77円も円高に振れたこともあり、前週に引き続きマイナスで引けています。

 

 一旦は米株を中心に株価指数の下げ幅も落ち着きを見せてくることも考えられますが、一方で原油価格の下落が非常に気になります。

WTI原油価格は年初の1/6の直近高値63.27を境に中国需要の低下懸念から下落傾向にありましたが、ここにきて金融相場のリスクオフ、また3/6OPECプラスの会合でロシアが協調減産を拒否したため一気に41.51まで急落しました。

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OPECプラスでの結果を受けて、3/8にはサウジアラムコ4月から大幅増産し、原油販売価格の大幅引き下げを行う報道も出ており、それに反応して更に下落する可能性も高まってきました。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-03-07/Q6UIDUDWRGG401?utm_medium=social&utm_content=japan&cmpid%3D=socialflow-twitter-japan&utm_source=twitter&utm_campaign=socialflow-organic

 

 原油価格の下落は産油国の収入減に直結します。

原油の輸出を収入源とするブラジル、ロシアなどの新興国にとっては大きな打撃です。

ブラジル、ロシアの通貨、および株価は3/6WTI原油の急落に伴い、急落しています。

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3/6だけでブラジルのボベスパ指数は4.14%、ロシアRTS指数は4.97%下落しています。

原油による収入源による経済低迷および通貨下落は、これらの国に経済危機でありながら物価高という最悪のスタグフレーションを引き起こし、また外貨建て債務の膨張も引き起こす可能性があリます。

更なる原油価格の下落はこれらの新興国に経済危機を引き起こし、更に世界経済の低迷を引き起こす可能性があります。

 

また原油安は米国での資源関連セクター、特にシェールオイルを生産する企業の業績にも影響してきます。

下記に米国の代表的なシェール企業の株価推移を添付します。
※青線:Oasis Petroleum Inc., 水色線:Devon Energy Corp,
   黄色線:Range Resources Corp, 紫線:EOG Resources Inc.

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これらの企業は年初の原油価格のピークからの下落に伴い株価を下げており、原油価格の下落が株価に直結していることがわかります。

シェール企業の生産コストは一般的には50ドル程度と言われており(実体は技術革新でもう少し低いコストかもしれませんが)、これ以上原油価格が深掘りし、その状態が常態化すると急速に業績が悪化しデフォルトする可能性も出てきます。

これらのシェール企業は一般的に石油メジャーではなく独立型の企業であるため潤沢な資金を所有しているわけではなく社債を発行して資金調達をしています。

このシェール企業の社債はハイイールド社債市場の10%を占めていると言われ、これらがデフォルトとなった場合のインパクトは大きいです。

 

ついてはマーケットの次の動きを占う指標として原油に注目して行きます。

 

短期は米国株価指数が週足陽線で終えたこともあり、やや弱気のスタンス、長期は原油価格が下落していくことを予想し、引き続き弱気のスタンスです。

 

以上