【4/13-4/17週の世界のリスクと経済指標】〜株価半値戻し時点での振り返り〜
先週の評点:
リスク -3点(39点):悪化 (基準点42点)
経済指標 -14点(43点):大幅悪化 (基準点57点)
短期の相場観:やや強気
長期の相場観:強気
【リスク】
先週もCOVID-19の感染拡大によるリスク悪化が止まりません。
世界の感染者数は先週から32%増、死者数は54%増と拡大が収まりません。
そんな中、米国ギリアド社の開発した抗ウィルス薬レムデジビルがCOVID-19の感染者に効果があるとの報道があり、注目を集めました。
また米国は感染者数の増加が少ない州で段階的に外出制限を解除する方針を出し、経済活動を再開させることとなりました。
懸念となっていたサウジアラビアとロシアの原油減産交渉の決裂に関しては、メキシコの不足分を米国が補填するという約束のもと、OPECプラスにて日産970万バレルの原産で最終合意しました。
しかし、世界中の経済活動の停止から実際の原油供給量の過剰感は収まらず、原油価格は下落を続けていることから更なる減産調整が必要になるかもしれません。
全体としては減産合意でポジティブになりましたが、COVID-19のネガティブで今週もマイナス3ポイントの悪化としました。
【経済指標】
COVID-19の影響で経済が止まり始めた3月-4月の指標が出始め、軒並み悪化となっています。
特に米国の指標の痛みが激しく、NY連銀景気指数が-78.2、フィラデルフィア連銀景気指数が-56.6と記録的な悪化となっています。
また新規失業保険申請件数も524万件と雇用の悪化が拡大しています。
中国のGDPも漸く指標の粉飾を止めたのか、-6.5%と経済成長が大幅マイナスとなったことを示しました。
全体としてもマイナス14ポイントで大幅悪化としました。
【先週の振り返りと次週の展望】~株価半値戻し時点での振り返り~
一方で先週は米国を中心に株価指数は週足続伸しました。
週中では米国の経済指標やCOVID-19関連のニュースで激しく上下動を繰り返しました。
しかし、木曜日の米国市場の引け後にあった米国ギリアド社の抗ウィルス薬レムデジビルがCOVID-19感染者の治療に高い効果があったとの報道や、米国政府が感染者増加が収まっている地域から段階的に経済活動を再開するという表明によりリスクオンとなり、日経、米国株価指数は大幅に伸びました。
これにより、日経、米国指数(ダウ、ナスダック、S&P500)は高値底値の半値を戻しました。
2/12の高値から下落して来たマーケットですが、3/23に底を打ち一気に戻して来ました。
ここで、これまで株価下落のリスク要因として挙げて来ていた内容に関して、改めて現在の状況チェックを行ってみたいと思います。
①換金売り
今回の株価下落の特徴は3/9のサウジアラビアとロシアの原油減産交渉決裂からくる原油価格急落に端を発し、一気に株価が暴落しました。
それにより、レバレッジをかけて資産運用していたヘッジファンドが証拠金不足に陥り安全資産とされる債券や金、円資産まで売却にしてドル(現金)をかき集めたため、急速にドル高が進みました。
その状況に対してFRBを中心とした各国中央銀行が大規模なQE(金融緩和)を行い、市場に対して資金供給を行って来ました。
下記はダウ平均、米国債10年利回り、金、ドル円の日足チャートです。
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米国債10年利回り
FRBが無制限なQEに踏み切った3/23以降、国債利回りは安定して5%台後半~8%台中盤で推移しています。つまり順調に債券市場にもお金が回っていること意味します。
- 金
金も3/23の無制限QE以降、順調に上昇して最高値を更新しています。
直近値段を落としているのは株価が上昇し、相対的に株式市場にお金が戻り始めたための利益確定売りだと思われます。つまり通常の相関に戻って来ていると考えます。
- ドル円
ドル円も同じく3/23の無制限QE発表から急速に下落(円高)となり、ドルが売られていることがわかります。ドルキャッシュへの換金売りが収まっています。
上記のことからわかるのは、一時マーケットの不安を増長させていた「全資産が下落し、ドルキャッシュのみが上昇」という異常事態が収まって安定していることを示しています。
一方で通常は株価が上昇するとドル円も上昇(円安)になりますが、現在はFRBが大量にマーケットに資金供給しているため相対的にドル円は下落傾向にあります。
しかし、こちらも底堅く推移しており、金が通常時の相関に戻って来ていることもあり、株価が現在の水準で推移すればこれ以上の急激な円高にはなりにくいと考えます。
②原油安
次に上記の換金売りの引き金となった原油安ですが、4/2のサウジアラビアとロシアに対するトランプ大統領の仲介の報道から一時急騰し29.13ドルの高値をつけました。
しかし、OPECプラスでの日産970万バレルの減産合意以降、実需の減少は日産2900万バレルに及ぶとの観測もあり下落を続け4/17終値では18.18ドルまで下落しています。
そうなってくると再び産油新興国及び米国シェール企業に対する影響が心配されます。
[産油新興国]
下記はロシアルーブル/USD日足チャート、ロシアRTS株価指数日足チャートです。
3/23のFRBの無制限QE以降、急激なドル安となりルーブルは上昇して来ましたが、原油安の影響で若干値を下げています。
それに連られて株価指数も下落傾向にあります。
次にブラジルレアル/USD日足チャート、ブラジルボベスパ株価指数日足チャートです。
こちらも4/3以降に上昇していた通貨はここ最近の原油安の影響を受けて下落していますが、株価指数は米国の株価の戻りに合わせて上昇傾向にあります。
ロシアは株価、ブラジルは通貨の方が原油安の影響を受けやすいように思います。
しかし、ここ数日の原油安の影響は見て取れますが、産油国同士の決裂が回避され協調体制に戻っているための安心感からか限定的で、原油価格の落ち方ほど酷くない印象です。
[米国ハイイールド債券]
下記は米国ハイイールド債券利回り日足チャートです。
ハイイールド債券に含まれるシェール企業の割合は10%と言われているので、これがシェール企業の状態を表しているわけではありません。
しかし重要なのはシェール企業がデフォルトを起こしてハイイールド債券市場自体に悪影響を及ぼすことです。
3/23のFRBの無制限QEを境にハイイールド債券利回りは下がり続け、さらに3/9(日本時間)にFRBが2.3兆円の追加緩和でジャンク債の買い入れも対象となったため、さらに下がっています。
最高時は10.87%あった利回りは7.58%まで落ち着いています。
これらの状況から言えるのは、「FRBの無制限QE」と「産油国の協調体制の再構築」という事実を支えに、既に最悪期は脱して徐々に安定していきていると考えられます。
その表れが底値からわずか1ヶ月での「半値戻し」に繋がっていると思います。
ただし、今後続いてくる2020年1-3月期の業績発表で実体経済の悪化が確実である中で、このまま株価が更に上昇していくにはCOVID-19関連の今回のレムデシビルのような強いポジティブニュースが必要かと思います。
[短期] やや強気
先週の様にニュースに振られながら上下動を繰り返すと思います。
週明けはフィボナッチの節目で反発している日経、ダウをロング目線で見ていきたいと思います。
為替はドル売り一辺倒から変化して来ていると思うので、様子を見ながらエントリーして行きます。
[長期] 強気
上記で振り返った様に、株価は現在の水準で安定に入って来ていると考えるため、引き続きポートフォリオは変更せず強気のまま行きたいと思います。(米国株式31%、日本株式25%、国内債券30%、金6%、REIT4%、ブラジル株4%)
以上