投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【11/2-6週の世界のリスクと経済指標】〜日本企業の回復を示すトヨタ2Q業績〜

先週の評点:

 

リスク   -11点(43点):大幅悪化 (基準点51点) 

経済指標  +3点(99点):良化 (基準点96点)

 

 

【リスク】

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先週は何と言っても米大統領戦で盛り上がった1週間でした。

事前の下馬評からバイデン氏優位が叫ばれていましたが、蓋を開けてみればトランプ大統領が激戦州での票を伸ばし、大接戦となりました。

またコロナ禍と言うこともあり郵便投票が多く開票作業に時間がかかっており決定が遅れていましたが、11/7にバイデン氏の当選が伝えられました。

一方でトランプ大統領は郵便投票に不正があるとして訴訟を起こしており敗北宣言しない可能性が高く、問題なく政権移管されるかどうか不透明感は残っています。

 

大統領選挙で盛り上がる中、米国や欧州でのCOVID-19の感染が急拡大し、各国での経済活動制限が活発になってきています。先週はベルギー、イタリアもロックダウンを再導入することとなりました。

米国でも1日当たりの新規感染者数が過去最高を更新しており、欧米での病床の逼迫解消のために活動制限を導入薄る自治体が増えていくと思われます。

 

英国、EUFTA交渉も相変わらず合意が見えず、次週も交渉が続きそうです。

現在欧州はCOVID-19に揺れ、テロや近隣でのナゴルノ紛争などの多くのリスクに晒されており、「FTAなし離脱」となると更に大きな混乱に陥ると思われます。

 

全体としては、米大統領選は終了したもののCOVID-19が急拡大、ブレグジットFTA交渉も不調でマイナス11ポイントと大幅悪化としました。

 

 

【経済指標】

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先週は米国のISM製造業景況指数、非製造業景況指数、米FOMC、米雇用統計と重要指標が多くありました。

ISM景況指数は、製造業は大幅増加で堅調な経済の回復を見せましたが、一方で非製造業は低下となり、COVID-19による活動制限による影響が伺えました。

FOMC政策金利0.00%-0.25%で変わらず、パウエル議長発言も従来通り米政府による財政政策を期待する発言となりました。

雇用統計は、概ね予想を上回り雇用回復を示しましたが、回を重ねるごとに鈍化しているような印象もあります。COVID-19による活動制限が行われているものの、期待される政府の追加経済対策が実現せず苦しい状況も感じ取れます。

 

全体としてはプラス3ポイントで良化としました。

 

 

【先週の振り返りと考察】

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先週は何と言っても米大統領選挙により相場が大きく動きました。

選挙日当日は金利0.9%まで上昇しバイデン氏の勝利を織り込みながら株価も上昇しました。

その後開票が進むに連れトランプ氏の健闘と上院での共和党の優勢が伝えられると、民主党による「トリプルブルー」の可能性が後退し、バイデン氏が当選したとしても「ねじれ議会」により民主党が掲げる増税案が通らないなど大きな政策転換は難しいとの観測が織り込まれました。

そのため金利が下がり、ナスダックがアウトパフォームし週足9%と大幅上昇しました。 

マーケットは一旦は重要イベントであった米大統領選挙をポジティブに織り込んだ形となりました。

 

11/7になってバイデン氏の当選が伝えられましたが、先週の上げ幅が大きかったのとマーケットは既にバイデン氏の当選を織り込んでいたため、次週は一旦軽い調整するような気がします。

 

 

~日本企業の回復を示すトヨタ2Q業績~

さて、ここ最近日本でも7-9月期の2Q四半期決算が発表されていますが、思いの外強い回復が見受けられます。

資源、エネルギー、建設、観光、空運、陸運、銀行などの業種においては回復が遅れていますが、情報・通信、機械や電子部品などは順調に回復している印象です。

そして象徴的なのがトヨタを筆頭にした自動車関連の回復です。

自動車産業は今や日本の基幹産業であり、裾野産業を含めた製造業におけるインパクトは非常に大きいものとなります。

 

ここでこれまでの決算発表にて判明している自動車メーカー各社の今期の業績見通しを見てみます。

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1Q決算で発表した通期見通しからトヨタはほぼ倍増、ホンダも2.3倍の大幅上方修正となっています。

SUBARU1.3倍と順調に業績が回復していることを示しています。

そもそも業績の悪化していた三菱自動車は据え置きとなっていますが、今後決算発表する日産やマツダにおいても上方修正が期待されます。

 

ここでこれらの回復をデータで検証してみます。

これらの回復は自動車の二大市場である中国とアメリカの回復に牽引されています。

下記は中国全体の自動車販売台数の推移と日系、欧州系ブランド車の販売台数推移です。

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中国全体はコロナショック前の水準に戻り、9月は250万台を回復しています。

それに連れて日本車、欧州車も50万台となりコロナショック前の水準を回復しています。

 

次に米国全体の自動車販売台数推移と日系、欧州系ブランド車の販売台数推移です。

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こちらはCOVID-19の感染拡大が続いている状況のため、コロナショック前の水準を回復したとは言い難いですが、4月を底に右肩上がりに回復してきています。

米国では欧州車はもともと少ないですが、日本車はこちらも50万台規模となっており、寄与度が非常に大きいことがわかります。

 

また、日系、欧州系に限らず、中国、米国での自動車販売台数が戻ってきた事により設備需要も回復し、日本の工作機械の中国、米国向けの受注高も順調に回復しています。

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特に中国向けは単独で200億円を超えました。月間200億円超えは米中摩擦が激化する20187月以来です。

 

これらから言えることは、中国、米国での自動車産業を主体とした製造業での回復が顕著であり、これらの回復が日本企業の業績回復に大きく影響してくる可能性が高いということです。

また、米大統領選に当選したバイデン氏は対中関税を引き下げることが予想され、中国経済はさらに回復し、中国向け輸出の多い日本への恩恵も大きくなることが考えられます。

加えてバイデン氏はTPPへの再参加を検討することが期待されており、それが実現すると米国向けの自動車および自動車部品の即時関税撤廃に動くことも考えられるため、日本の自動車産業には追い風となると思われます。

 

私は安倍政権の終焉とともに日本株を一旦降りましたが、上述した2Q決算での回復具合や最近の底堅さから、ここで再び日本株ポートフォリオに加えたいと思います。

COVID-19の影響や円高による利益の押し下げ作用は気になりますが、自動車産業や機械産業の回復は、私の本業の設備販売にも直結してくる話であり、日本企業の業績回復および株価のさらなる上昇を期待しています。

 

以上