【4/19-4/23週の世界のリスクと経済指標】〜正常化へ向けた兆し〜
先週の評点:
リスク 0点(33点):中立 (基準点33点)
経済指標 +14点(83点):大幅良化 (基準点69点)
【リスク】
先週のリスクはプラスマイナスゼロの中立としました。
先週はリスク面ではEU情勢が動きました。
EU復興基金の承認を止めていたドイツ連邦憲法裁判所が反対派の申し立てを棄却し、EU復興基金の始動に向けた大きな障害が取り去られました。
また日米首脳会談を睨み、緊張の緩和する姿勢に転じ、ウクライナ東部の国境から撤収を始めました。
【経済指標】
先週の経済指標はプラス14ポイントの大幅良化でした。
先週は欧米のPMIの発表がありましたが、引き続き強さを見せました。
ユーロ製造業PMIは予想62.0に対し63.3と強さを見せ、さらにサービス業PMIも予想49.1に対して50.3と、ようやく基準値の50を超えてきました。
ワクチン接種の拡大により欧州も徐々に景気が上向いてきたことが示されました。
また米国もMarkit社PMIで製造業、サービス業共に上振れ、3月新築住宅販売件数も予想88.6万件に対して102.1万件と強い数値を示しました。
【先週の振り返りと考察】〜正常化へ向けた兆し〜
米国株式はバイデン政権がバイデン政権が富裕層に対するキャピタルゲイン税を2倍に増加すると伝わり重くなるも、好調な企業決算と経済指標が下支えとなり微減となりました。
日経平均は日本国内で緊急事態宣言が出される見込みとなった上、好調な決算が出るも投資家の期待には届かず強く売られました。やはり前週の日米首脳会談による日中関係の悪化懸念も強く影響したものと思われます。
一方で上海総合指数は気候変動サミットへの米中首脳の参加で両国の全面対決が避けられたことを好感して上昇しました。
さて、先週は強い金融緩和や財政政策からの正常化戦略が語られました。
まずは米国ですが、3月末にバイデン政権から示された法人税増税に続き、所得が100万ドル以上の富裕層に対するキャピタルゲイン税を20%から39.6%に引き上げるとされることが伝わりました。
これらは今後バイデン政権が導入を予定するインフラ投資の財源として利用されます。
続いて、カナダ中央銀行が資産購入の規模を週40億カナダドルから週30億カナダルに縮小し、利上げの目処を22年に前倒ししました。
そしてすでに日本では3/19の日銀金融政策決定会合によりETFの買い入れ目安の6兆円を削除し、また長期金利の変動幅を0.20%から0.25%へ拡大したことにより実質テーパリングを行っています。(4月はまだ4/21に701億円購入したのみ)
またそれに加え、3月比での4月の国債購入規模も大幅に減額しています。
https://jp.reuters.com/article/boj-april-idJPKBN2BN11L
ワクチン接種拡大や金融緩和や財政政策などによる急速な景気回復を見据えて、それらを正常化する動きが目に付くようになりました。
足元では変異株が拡大しながらもワクチン接種は確実に拡大しており、先進国においては秋頃には制限解除が進むと思われます。
そのため、各国において行き過ぎた資産価値の膨張を抑えることが意識され始めてきたと認識できます。
ただ、コロナ感染拡大が再度強く進み緊急事態宣言が発出される状況での日銀の矢継ぎ早のテーパリング行為は勇み足が過ぎるように思われ、引き続き日本株はアンダーパフォームすると思われます。
少なくともワクチン接種がある程度落ち着くまでは相対比で日本株が選好される可能性は少ないと思います。
次週は4/27(火)に日銀金融政策決定会合、4/29(木)の早朝にFOMCがあります。
また4/28(水)のバイデン氏の議会演説前に増税に関して詳細が発表されると伝えられています。
この1年の中央銀行や政府からの強いサポートを正常化する兆しがどのように進むか注目します。
以上
【4/12-16週の世界のリスクと経済指標】〜米外交の選択と集中と日本〜
先週の評点:
リスク -6点(27点):悪化 (基準点33点)
経済指標 +18点(108点):大幅良化 (基準点90点)
【リスク】
先週は米中対立に関わるニュースが続き、マイナス6ポイントの悪化としました。
こちらの詳細は後述します。
【経済指標】
先週の経済指標はプラス18ポイントと大幅良化となりました。
注目の米国CPIコア指数は予想1.5%に対して1.6%と上振れを見せインフレの加速を示しましたが、これくらいの数値で緩和姿勢は拒否されないと理解され、金利は低下しました。
また、米国の小売売上高は予想5.9%に対して9.8%と驚異的な上振れで、ワクチン接種拡大による米国内での消費活動の活発化を示しました。新規失業保険申請件数も減少し、雇用の回復も示されました。
中国の1-3月期GDPは前年度が激しい落ち込みだったこともあり、18.3%の成長率となりました。一方で前期比では予想1.5%に対して0.6%と低下しており、これまで世界を牽引してきた中国経済の成長率が、バブル懸念の締め付け傾向もあり他国に先駆けてやや鈍化傾向にあることも示しました。
【先週の振り返りと考察】〜米外交の選択と集中と日本〜
先週の主要国株価指数は米長期金利が1.5%台へ低下したことから概ね伸長し、米株3指数や欧州株価指数は1%を超える上昇を見せました。ダウ平均とS&P500、DAXは最高値更新、ナスダックも最高値まで0.3%と迫っています。
またロシアRTS指数やブラジルボベスパも原油価格の戻りを背景に大幅に上昇しました。
一方で日経平均は、前週に続いて微減となりました。
欧米に比べてワクチン接種が一向に進まない中でコロナが急拡大していることが重しとなり、3万円を前に足踏みを続けています。
また、上海総合指数も中国当局によるバブル抑制の動きが重しとなり2週連続で下落となりました。
さて、先週も米国を中心とした政治ニュースが続きました。
以下がその内容です。
①バイデン政権が9/11でアフガンからの撤収を表明。
②ウクライナ東部紛争に関連し、ウクライナ国境沿いへロシア軍が集結。バイデン氏が懸念表明。
③米バイデン政権がロシアによる選挙介入やサイバー攻撃を理由に追加制裁警告。
④米政権が中国製IT機器やサービスに規制強化。中国製IT利用が許可制に。
⑤日米首脳会談の共同声明で「台湾海峡の平和と安定の重要性」と明記し、中国への対峙を鮮明化。
中でも①のアフガンからの撤収表明と⑥日米首脳会談はそれぞれ転機として意味が大きいと考えます。
米国のアフガンからの撤収は、既にトランプ政権で表明され既定路線であったものの、バイデン政権に変わってから半年の延期が伝えられていました。
トランプ政権ではあくまでもビジネス的な損得勘定でアフガンへの「駐留コストの削減」のために表明された印象ですが、バイデン政権では少し意味合いが違い、「集中と選択」の要素が強い印象です。
つまりは対中政策を本格展開するにあたっては、生半可なリソースでは対峙出来ないため、米国にとって既にメリットの薄い中東を捨て、全力で中国に対峙することを選択したことを意味します。
そしてアフガン撤収表明から2日と経たずに行われた日米首脳会議では「台湾海峡の平和と安定の重要性」を共同声明として明記し、日本に対しても共闘する責務を負わせています。
ここでも、対中の最前線として地政学的に重要な日本を取り込み、全力で中国の台頭に対抗する意向を強く表しています。
この二つの出来事は、米国が今後対中を軸としてアジアを最重要視して取り組んでいくことを明確に示しており、米中を軸として後戻り出来ない二極化が進んでいくものと思われます。
そして日本にとっては、難しい状況になると考えます。
これまで日本の対中の防波堤として機能していた韓国は中国に取り込まれつつあり、明確な民主主義陣営としては日本が最前線となっています。そのため朝鮮半島ではなく東シナ海を中心とした近海での衝突が現実的なものとなってきており、有事の際にはシーレーンが断絶されることにより経済的な影響も大きくなります。
また、市場として大きく経済的にも依存度の高い中国から直接的に揺さぶりをかけられる可能性も高いと考えます。
実際には今すぐ衝突などの有事が起こるとは思いませんが、日本にとっては先週の政治の動きにより地政学的リスクが増したため、日本市場は嫌気される展開が続くと思われます。引き続き米国>欧州>日本というマーケットの見方が優勢かと思います。
また今週も日本電産やディスコ、エムスリーなどの決算が発表がありますが、ここまでのファストリや安川電機の株価への反応を見る限り、ハードルが高くなっている気がします。
ワクチン接種拡大によって景気回復機運が高まり欧米株は上昇していますが、引き続き日経平均は上値の重い展開が続くと思われます。
以上
【4/5-4/9週の世界のリスクと経済指標】〜新自由主義の終焉〜
先週の評点:
リスク -3点(30点):悪化 (基準点33点)
経済指標 +2点(38点):小幅良化 (基準点36点)
【リスク】
先週はマイナス3ポイントの悪化としました。
新型コロナは変異株の拡大で再び勢いを増し、6週連続で増加しました。特にインドでは9月のピークを超え足元では145千人を超えました。ワクチン接種は進みますが、人口が多いため変異株の感染拡大スピードに追いつきません。
一方でイスラエルではワクチン接種が進むことによって急速に感染者が減少し、また無症状者にも効果があることが濃厚であるとされています。
英国でも減少傾向は続いており、国ごとのワクチン接種の進捗によってコロナからの回復度合いの格差が明確になってきています。
米中対立では米議会上院にて超党派で中国への対策案を列挙した新法案がまとめられ、今週から議論が始まることとなりました。また、バイデン政権は台湾に対する関わりを強めるため、政府建物内での会合を行うなど交流拡大する指針を発表しました。
16日には初の対面での日米首脳会談を控え、米側の対中工作が連日続いています。日本が日米首脳会談にてどのような共同声明を発表するのか注目しています。
【経済指標】
先週の経済指標はプラス2ポイントの良化としました。
先週の注目指標は米ISM非製造業景況指数、中国の財新サービス業PMI、中国CPIでした。
ISM非製造業景況指数は予想58.5に対して63.7と驚異的な数値を叩き出し、ワクチン接種拡大による米国の景気回復期待の強さを示しました。
また中国の財新サービス業PMIも予想52.1に対し54.3と3ヶ月ぶりに回復を見せました。CPIも2か月ぶりにプラスに浮上し、消費者心理の回復を示しました。
次週は4/13(月)の欧州、独4月ZEW景況感調査、米3月CPI、4/14(水)のRBNZ政策金利、パウエル議長発言、4/15(木)の米小売売上高、4/16(金)の中国1-3月期GDP、欧州消費者物価指数などの指標が発表されます。
注目は米CPI、小売売上高で、景気回復を織り込む中で足元のインフレ指標が上振れると再び金利高になる可能性があります。
【先週の振り返りと考察】
先週の株価指数は米株指数が伸長しました。
ダウ平均、S&P500は最高値を更新、ナスダックも2月の最高値まで残り1.39%まで戻ってきました。
米株は長期金利が1.6%に落ち着いてきたこともあり、ハイテクグロースを中心にゆっくりと伸びています。私は先週はナスダックに下目線でしたが、見事に逆の動きとなりました。
また、DAXやFTSE100などの欧州株も順調に伸び、DAXは最高値を更新しています。
一方で日経平均はシクリカルとしての役割がすっかり欧州株へ移った感があり、DAXなど高値を更新する欧州株価指数を横目に小幅下落で終えました。
日経は日銀の実質テーパリングに加え、米中対立で中国の影響を最も受ける地理的な問題と、先進国の中でもワクチン接種率が最も遅れている中で感染が拡大していることもあり、3万円の値固めができない状況が続いています。
先週の決算発表のあったファーストリテイリングの株価の動きを見ると、好調な決算だったにも関わらず強く売られており、今週も引き続き3万円を挟んで上値は重い展開となると思います。
ついては日経に下目線です。
〜新自由主義の終焉〜
さて、先週は先週はイエレン米財務長官がG20に対して最低税率を導入し、法人税の引き下げ競争に終止符を打つことを呼びかけました。
そして米国にとっては今後バイデン政権が計画している2.25兆ドルにも登るインフラ投資の財源とするとしています。
そのインフラ投資は米国内での新しい雇用を生み、かつ新しいイノベーションを生み出すものと思います。
これはこれまでは大企業に集中していた富を一般国民に還元する流れと言えます。
私はこのバイデン政権の方針を強く支持します。
大企業に対する課税は、企業利益の減少を意味し、特にここ数年間においてトランプ前大統領の減税政策により恩恵を受けてきた米企業の株価は、上昇を抑えられる原因となるでしょう。
外国株式に投資している私の資産も将来的にはその影響を受けるものと思います。
しかし、何よりもその政策は、広がり続ける経済格差を解消し、資本主義及び民主主義を今後も持続するための具体的な一手としてとても重要であると考えます。
ここ最近、経済格差は拡大の一途を辿っています。
ちょうど4月7日の日経新聞に世界の長者番付の記事が出ました。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN06EBS0W1A400C2000000/
ここには、コロナによる金融緩和、財政政策の影響で株価が伸びたことにより、資産10億ドル以上の超富裕層が2755人と昨年より660人増えたと書かれています。
1980年台のレーガン大統領の時代から始まった新自由主義により、政府の介入を極力なくし規制を緩和した自由放任主義が取られました。それにより弱肉強食の世界が容認され、多くの成功者を生み出しました。
そして、2000年代に入ってからはITという武器が加わったことで成功者たちは簡単に国境を跨ぎ、グローバル企業として更に効率的に富を築けるようになりました。
しかし、それと同時に効率化によって雇用が賃金の安い新興国に流出し、多くの敗者も産み出し中間層が消失しました。
それがトランプ政権を支えたポピュリズムの礎になり、さらにコロナ禍により民主主義の根幹を揺るがす不満に繋がったと考えます。
私は再び民主主義を復活させるには、行き過ぎた放任主義を抑制し、経済格差を縮小する必要があると考えています。
その意味では、これまで新自由主義を推進し体現してきた米国が、それを翻して大きな政府を目指し増税を発表したことは大きな転換点だと思います。
かつ単独ではなく経済主要国に対して最低税率を導入して同調するように呼びかけたことも、世界規模で社会構造を変革し、持続可能なものとしていく決意であると考えます。
そして米国から広がった「新自由主義」が米国自身により終えられ、新たな民主主義の形が作り上げられようとしていることに強く期待しています。
以上
【3/29-4/2週の世界のリスクと経済指標】〜3月に強さを見せたDAX〜
先週の評点:
リスク -2点(31点):小幅悪化 (基準点33点)
経済指標 +10点(100点):大幅良化 (基準点90点)
【リスク】
先週のリスクはマイナス2ポイントの悪化でした。
新型コロナはワクチン接種が拡がるも、変異株の感染拡大スピードも早く、せめぎ合いが続いています。
また先週は米中対立での中国側の積極的な外交が目立ちました。
前週から続く中国外相の中東訪問ではUAEでのワクチン製造が決定し、国防相の東欧訪問(ハンガリー、セルビア、ギリシャ、北マケドニア)ではセルビアから中国への支持を取り付け、ハンガリーとは軍事交流やワクチン協力を約束しました。
前週の欧米諸国の連携に対応し、積極的に対殴米勢力の拡大に勤めています。
【経済指標】
先週の経済指標はプラス10ポイントの大幅良化でした。
低下が続いていた中国製造業PMIは統計局の発表は3ヶ月ぶりに上昇するも、財新の発表は1年ぶりの低水準となり評価が分かれました。中国の側面指標であるドイツ製造業PMIは好調が続いていることから、すぐに崩れることはないと思われるも不安定な状況が続いています。
注目の米国ISM製造業景況指数は64.7と大幅な上振れを見せました。また米国の雇用統計も非農業部門雇用者数変化も91.6万人増と大きな回復を見せました。平均時給は低下していますが、これは低賃金労働者にも雇用が行き渡り始めたことを示しており、ワクチン接種拡大により雇用回復が広がり実体経済が急速に上向いてきていることを示しました。
次週は4/5(月)の米ISM非製造業景況指数、4/6(火)の中国財新サービス業PMI、豪州RBA政策金利、4/7(木)のFOMC議事要旨、4/9(金)の中国CPIが注目されます。
【先週の振り返りと考察】〜3月に強さを見せたDAX〜
先週は3月が終わりましたので、3月の値動きと共に先週の株価指数を振り返ってみたいと思います。
下記は3月の月足です。
DAXの伸びが8.86%と際立っています。
DAXは3月に入り、米追加経済対策の成立をきっかけに高値ブレイクし、ECBの債券購入額前倒しによる長期金利上昇抑制策と好調なPMIを追い風に高値を更新し続けています。
またダウも2月末からの長期金利上昇の恩恵を受けて6.68%上昇しています。
一方でナスダックは長期金利上昇が圧力となり小幅上昇に留まりました。
また、日経も3/18に再び3万円を超えたものの3/19の日銀の実質テーパリングの政策発表を機に売られたため、低調な推移となりました。
これを見ると3月は依然リスクオンで株式市場全体にマネーが流入したにも関わらず、
①長期金利の上昇によりグロースよりシクリカルが選好
②ECBと日銀の金融政策の違いにより、同じシクリカルでも日経が嫌気されDAXが選好
となったことがわかります。
続いて足元の先週の値動きです。
先週も全体的に株式指数がリスクオンの週となりました。
大きな理由としては下記の通りです。
①米バイデン政権が8年間に渡る2兆2500億ドル規模のインフラ投資計画を打ち出す。
②米国内でのワクチン接種が成人の20%を超え制限緩和が進む。
③ISM製造業景況指数が予想61.3に対し64.7と大幅に回復。
ただ、米アルケゴスキャピタルの破綻に関連するポジション解消で金融機関が損失を出し金融株が低調だったことや、米長期金利がやや落ち着いたことにより、米国ではダウ平均が低調となり逆にナスダックが強さを見せました。
また、日経、DAXなども半導体関連のグロース株を中心に伸びました。
先週の動きを見ると、3月全体の特徴であった①グロース<シクリカル、②日経<DAXという事象がやや落ち着いてきた印象がありますが、4月以降も継続するか今週の動きに注目したいと思います。
週明けは、4/2の欧米株式市場が休場であった為、米雇用統計の影響が織り込まれておらず、金利、株式共に上昇基調からのスタートとなると思われます。
一方で米政権のインフラ投資計画で語られた「財源としての増税」に対して市場は目立った反応を見せておらず、またデジタル課税に関して議論が予想されるG20会議が4/7に行われるため、国際ルール作りが難航するようであれば特にGAFAMなどのハイテクグロースには重しになると思われます。
従って短期的には一時的に上昇するもナスダックに下目線です。
また今週は4/9に安川電機の決算発表がありますので、日本の輸出企業の業績を測る意味でも注目しています。
以上
【3/22-3/26週の世界のリスクと経済指標】〜長期投資スタンスの強気からの変更〜
先週の評点:
リスク +1点(34点):小幅良化 (基準点33点)
経済指標 +12点(90点):大幅良化 (基準点78点)
【リスク】
先週のリスクはプラス1ポイントの小幅良化としました。
先週注目したのは、米中対立の対立軸の拡がりです。前週にEUが発表したウイグル問題を巡る対中制裁に関し、米英加も追随して対中制裁に踏み切り、それを豪、NZが歓迎するということがありました。
それに対抗して中露が接近、また中国はすぐさま外相が中東6ヵ国の歴訪を開始しています。イランとは25年に及ぶ戦略協定に調印し、サウジ皇太子も「中国のウイグルや香港の問題での中国の立場を支持する」としたと発表されています。
これにより人権を重視する民主主義国家群と、それに対抗する中国を中心とした独裁的な強権国家群による対立軸が明確化してきた印象です。
私は米国と欧州の関係回復はポジティブに捉えつつも、そこから派生する民主主義国家と強権国家との対立軸の明確化は世界の二極化に繋がるためネガティブに捉えています。
バイデン政権に変わってグローバリズムが回帰したように思えましたが、逆にトランプ政権時のような米国単独の劇場型ではなく、他国を巻き込んだ本格的な対立となりグローバリズムがより崩れてきそうな気配があります。
【経済指標】〜
先週の経済指標はプラス12ポイントの大幅良化としました。
先週の注目指標は欧州のPMIと米国PCEコアデフレーターでした。
欧州PMIはワクチン接種の進展への期待からフルマークで上振れを示しました。特にドイツの製造業PMIは66.6と過去最高の水準となりました。これは中国経済が依然好調を維持していることを示しています。
また、米国のPCEコアデフレーターは予想1.5%に対して1.4%と下振れました。米国は景気回復を見込んで期待インフレ率が上昇していますが、足元のインフレ率は落ち着きを見せていることが示されました。
次週は中国製造業PMI、米ISM製造業景況指数、米雇用統計の発表があります。
ISM製造業景況指数は前回高かった60.8のレベルを維持できるかどうか注目されます。また雇用統計はワクチン接種拡大から強い回復が見込まれ予想58万人となっており、ハードルが高まっています。
【先週の振り返りと考察】〜長期投資スタンスの強気からの変更〜
先週の主要国株式指数は、日経が独歩安となりました。
3/19の日銀の金融政策決定会合において実質的なテーパリングを示したため、日経平均は売られ水曜日には28400円台まで下落しました。その後は米株の反発に連れて反発して2%減で週を終えています。
一方で米株指数はダウとS&P500は最高値を更新し、長期金利が1.6%-1.7%程度の高い水準であっても上値を狙える力強さを示しました。
欧州のDAXやFTSE100も週足で上昇して終えており、日米欧の中央銀行の姿勢の違いによる株価への影響が鮮明となりました。
これらの先週の株価の動きを見ながら、私は改めて長期投資のポートフォリオを見直しました。
私が考える現在のポジティブ要因とネガティブ要因は下記の通りです。
【ポジティブ】
①金利が1.6%〜1.7%程度にあってもダウ、S&P500が高値更新
②大手米銀に対する株主還元規制が6月末で解除
③3兆ドルの財政出動観測
【ネガティブ】
①雇用重視で強い金融緩和は継続、一方で短期的なインフレは容認。⇨今までのFRBのセオリーにない方針で不透明。
②イエレン長官が財政出動の財源としての増税を支持⇨財政政策の出口戦略が今後意識。
③欧米VS中露の対立激化⇨貿易の減少の可能性。またそこからくるインフレ懸念。
私は前週に10%に落とした日本株を先週全て売却し、割合を0%としました。
理由は米中対立が周囲の国々を巻き込み始め、グローバリズムが否定され始めたからです。
日本はこれまでグローバリズム回帰を背景に、強い中国により引っ張られて経済回復してきましたが、西側諸国の一員である日本にも米中対立が波及し、今後中国との通商問題を抱える可能性が高いと考えます。
そのためこれまでのような順調な日本経済の回復は限定的となり、日本株式の伸びは鈍化すると考えます。
それにより現在ポートフォリオの株式の割合を50%(先進国株式38%、新興国株式12%)、あとは国債と現金としています。
基本的にはFRBのセオリーにないスタンス及びイエレン長官から出てきた増税の話が気になるため、これまでの強気姿勢を変更しニュートラルな様子見スタンスとしています。
しかしながら、ポジティブ要因からの旨味もうまく取り込みたい気持ちがあります。
従って株式50%の投資信託に加え、ネガティブな要因であるインフレを旨味に変え、ポジティブ部分の旨みも得られる可能性の高い米国銀行株のJPモルガンを5%保有したいと思います。
ついては中立よりも少し強気スタンスの株式55%としたいと思います。
一方で新興国株式に関しても注視しています。
ここのところ中国及びブラジル、インドなどの新興国の株式が下落傾向にあります。
中国経済の好不調を図るドイツ製造業PMIが好調を維持しているため、中国の実経済はまだ正常に動いていると考えられます。
しかし、米長期金利高から来るドル高傾向が新興国が抱えるドル建て債券の負担を増加させ、かつ輸入品価格高騰を招き重しとなっていることが考えられます。
実際に米長期金利上昇の影響を受けているナスダックとMSCIエマージングのETFの動きを比較すると似たよう動きをしています。
こちらもポートフォリオから減らすかどうか、金利の上昇の影響を注視しながら探っていきたいと思います。
以上
【3/15-19週の世界のリスクと経済指標】〜日米欧の緩和姿勢の違い〜
先週の評点:
リスク -4点(29点):悪化 (基準点33点)
経済指標 +3点(90点):小幅良化 (基準点87点)
【リスク】
先週のリスクはマイナス4ポイントの悪化となりました。
一時落ち着きを見せていたコロナですが、欧州を中心に変異株によって再拡大してきました。フランス、イタリアでは再ロックダウンの措置が取られることとなりました。一方で、ワクチン接種が急速に進む米、英などでは順調に感染者減少が進んでいます。
また先週は米中外交トップ会談が行われました。
序盤から非難の応酬が続き、互いの政治体制や国家観にも言及されました。前トランプ政権の時代の対中協議はどこかショー的で最終的には実利を取りに行っていた印象ですが、バイデン政権は中国を真正面から潰しにかかっている印象です。
それに対して中国側もがっぷり四つに対抗しており、激しい覇権争いが改めて明確に示されました。
【経済指標】
先週の経済指標はプラス3ポイントとなりました。
米国の指標は、景況指数系が足元のコロナ禍からの経済正常化を織り込み大幅良化を見せる一方、2月小売売上高、鉱工業生産、住宅着工件数などの遅行指数系は2月の寒波の影響から大幅な悪化を見せました。
また日英米の中央銀行による政策金利の発表があり、引き続きゼロ金利を維持しましたが、日米の緩和政策の姿勢には違いが示されました。(詳細は後述します。)
次週は欧米各国のPMIと米国のPCEデフレーターの発表があります。
注目は米国のインフレ度合いを示すPCEデフレーターです。予想ではコア指数が1.5%となっていますが、これを上回ると更なる金利上昇に繋がると思われるため注視します。
【先週の振り返りと考察】〜日米欧の緩和姿勢の違い〜
先週も米長期金利の上下動に振り回された週でした。
米FOMCを前に一時は1.6%を切る場面もありましたが、FOMC会見にてパウエル議長が改めて金利上昇を容認するスタンスを見せたことによりその後1.75%まで上昇しました。
ダウ平均やS&P500は3/17に最高値を更新しましたが、その後は金利の急上昇に合わせて下落し、米国3指数はマイナスで週を終えています。
日経225は一時3万円台に戻すも金曜日の日銀金融政策決定会合の結果を受けて上げ幅を縮めました。
上海総合指数は前週に続いて1.4%減と下落しました。米中会談での激しい非難の応酬も警戒感を強めました。
また、先週は原油が急落しました。米国での製油処理能力が安定せず在庫が増加するとの観測に加え、欧州での再ロックダウンが重しとなり、65ドル台から61ドル台まで下落しました。
それにより特にエネルギーセクターの下落が激しい週でした。
為替は週足では主要通貨は動きの少ない週でしたが、トルコが1週間レポ金利を17%から19%に上げることを発表したためトルコリラが急騰し、対円で4.71%の上昇を見せました。
しかし、この週末に低迷する経済のために低金利を求めるトルコのエルドアン大統領がトルコ中銀総裁を解任する報道があり、週明けに急落することが予想されます。
さて、先週はFOMCにてパウエルFRB議長の会見、日銀金融政策決定会合にて黒田日銀総裁の会見がありました。
前週のECBのラガルド総裁による会見での方針説明と合わせて下記の通りまとめています。
[ECB] 長期金利の急上昇を抑えるためにPPEP(パンデミック緊急購入プログラム)の債券買い入れペース
を前倒し。
⇨緩和○/金利抑制○
[FRB] 23年いっぱいはゼロ金利政策の継続を示唆。金利上昇は容認スタンス。
⇨緩和○/金利抑制×
[日銀] ETFの買い入れ目安の6兆円を削除。長期金利の変動幅を0.20%から0.25%へ拡大。
⇨緩和×/金利抑制×
ここ最近の金利上昇に関してECBは抑制、FRBは容認の姿勢を見せていますが、金融緩和に関してはECB、FRB共に緩和姿勢を継続しています。
一方で日銀は、コロナ禍で設定された上限12兆円は維持したものの2016年7月から続けてきた年間6兆円の目安を撤廃し、緩和姿勢の変更を示しました。これは日銀の買い支えが大きく減少する可能性を意味します。
また長期金利の変動幅も-0.20%から0.20%と認識されていた幅を-0.25%から0.25%に拡大し明確化しました。これはいざという時のマイナス金利の深掘りを可能にしていますが、同時に金利の上昇も容認することを意味します。
つまり日銀は欧米金融当局が強い緩和姿勢を継続している中、逆にテーパリングを示唆しています。
日銀はインフレ率2%に向け2010年から強い金融緩和を行なっていますが、インフレ率が上がらないままにその環境に慣れ切ってしまっており、どこかで出口戦略を考える必要はあります。
しかし、実体経済はコロナの収束も見えず未だ回復途上です。
日本の消費者物価指数は昨年10月からマイナス圏(2月は-0.4%)に沈んでおり、足元のBEI(ブレークイーブンインフレ率:期待インフレ率)も0.207%と米国の様に2%を超えるものでありません。
なぜ日米欧の金融政策発表が重なるこのタイミングで、日銀だけがテーパリングと印象づけられるような政策を打ち出したのか理解に苦しみます。
マーケットは常に相対比でお金の流れを変えていきます。
これまでは経済正常化期待と共に、シクリカル傾向が強い日本株式にお金が流入していました。
しかしながら、今回の日銀の政策変更で欧米との緩和姿勢に差が生まれており、その差により今後は日本株式に資金が流入しづらくなると思われます。
ついては週明けに長期投資資産から日本株式の割合を27%→10%に減らし、主に米国株と欧州株で構成されるMSCIコクサイの先進国株式ファンド(7%)とキャッシュ(10%)に振り分けます。
これで先進国株式42%、日本株式10%、新興国株式12%、日本国債26%、現金10%となります。
今週の短期の方向感はダウ平均は横ばい、ナスダックは金利高止まりで下目線、日経は日銀の緩和引き締め+上海総合の下落トレンド継続で下目線です。
以上
【3/8-3/12週の世界のリスクと経済指標】〜グロースからシクリカルへの移行完了か〜
先週の評点:
リスク +2点(44点):良化 (基準点42点)
経済指標 -1点(35点):小幅悪化 (基準点36点)
【リスク】
先週のリスクはプラス2ポイントの良化としました、
先週はワクチン接種が猛烈な勢いで進む米国や英国では新規感染者の減少傾向が進む一方、変異ウィルスに見舞われているブラジル、イタリアなどでは再び増加が続き、ワクチン接種の成否により状況が明確に分かれてきていることが示されました。
また米国ではワクチン接種拡大からの感染者減少に加えて1.9兆ドルの追加経済対策も成立し、景気回復への追い風が確実に強くなってきています。
一方で欧州では米国に引っ張られた世界的な金利上昇で実体経済の回復に懸念が出ていますが、さらに7500億ユーロの復興基金をめぐり、加盟国の支出計画が不十分なことや、そもそも提出されていないなど足並みが揃っておらず、基金の実施時期が遅れる可能性が出てきました。
【経済指標】
経済指標はマイナス1ポイントの小幅悪化としました。
米国の2月コアCPIは予想1.4%に対して1.3%と、ここ最近の期待インフレの伸びに対して追従しておらず足元ではやや軟調に推移していることを示しました。ただ、今回は加熱気味の期待インフレを抑える効果としてポジティブに捉えられました。
また、欧州政策金利は変わらず0%となりましたが、ECBのラガルド総裁は、ここ最近の長期金利の上昇に対して懸念を示し、次の四半期でのPPEPの国債購入を強めて金利を抑制する方針を示しました。
足元の消費者物価指数は回復傾向にありますが、コア指数で1.1%とまだ余裕を残しており、物価上昇よりも急激な長期金利の上昇による弱い地域の景気回復の腰折れを懸念しての難しい措置となりました。
これは南欧などの痛みの激しい地域とオランダ、ドイツなどの痛みの少ない地域の域内格差をはらむEU独自の悩みを示していると思います。
【先週の振り返りと考察】〜グロースからシクリカルへの移行完了か〜
先週も米長期金利の動きに翻弄された週となりました。
米長期金利は3/11(木)の日本時間には、前夜の米コアCPIが予想より下振れした事によりインフレ懸念が後退し1.475%まで低下しました。
しかし、その日の米国時間にバイデン大統領が1.9兆ドルの追加経済対策に署名し法案成立、またワクチン接種ペースをさらに加速することを表明し景気回復期待が加速されたことで金利は再び上昇し、最終的には1.625%で週を終えています。
米市場はその長期金利の上下動に沿う形で振り回され、日によってハイテク株とシクリカル株で主役が入れ替わる激しい値動きでした。(以下はバンガードのセクター別ETFの日足推移です。)
ただ、週足で見るとシクリカルを中心に、どのセクターでも強く上昇しました。
また各国の主要株価指数としても概ね上昇しました。
金利が上昇傾向にある中、シクリカル指数でありながら回復が遅れていた独DAXが4.18%と強さを見せ、同様にシクリカル指数であるダウ平均も4.07%と強く上昇しました。
DAXとダウは先週最高値を更新しています。
また前週は2%下落し弱かったナスダックもしっかりと反発しました。
全体的な印象として先進国株式は金利の上下動に引っ張られながらも、「金利上昇=グロース株売り」という方程式も限定的となり、マーケット全体がポジティブなニュースに素直に反応するようになってきたこと示していると思います。
グロースからシクリカルへの資金移行に伴った調整が完了しつつあり、シクリカル主導の上昇へ体制が整ったものと考えられます。
一方で上海総合指数は、2月最終週から3週続けて下落となりました。中国当局が株式バブルに警戒する姿勢を見せたことで調整局面に入っており、他の主要指数は大幅反発する中で調整が続きました。
ただ、今後欧米各国が景気回復し需要が遅れて戻ってくる中で、より一層増えるであろう輸出が実体経済を支えてくると思われ、短期的なガス抜きの可能性が高いと思われます。
今週は3/18(木)早朝に米FOMC、3/19(金)日銀金融政策決定会合を迎えます。
一足先にECBは先週、長期金利の上昇に対してPEPPの国債購入ペースを強めて抑えにいく方針を発表しており、それに続いて日米金融当局がどのような政策を取るのか気になるところです。
FOMCに関しては、急上昇する長期金利に対してパウエル議長がこれまでのスタンス通り容認するのか、テーパリング等緩和政策の変更を示唆してインフレ抑制を意識するのかが注目されます。
日銀金融政策決定会合では金融緩和政策の点検結果の公表されますが、高値圏で推移する株価に対してETFの購入方針変更がどのように示唆されるか注目されます。
今週の方向感は、米国の景気回復期待が大きくなっているため、素直にダウを上目線です。
個人的にはFOMCはこれまでのスタンス通り金利上昇を容認すると思われ、シクリカルの波は続くと思われます。
一方で日経は他の先進国に比べたワクチン接種の遅れや、マーケット時間の重なる中国株の下落トレンド、また日銀金融政策決定会合のETFの購入方針変更を睨みながらやや上値は重いと思います。
以上