投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【6/21-6/25週の世界のリスクと経済指標】〜FOMCの議決権の仕組み〜

先週の評点:

 

リスク   -4点(32点):悪化 (基準点36点) 

経済指標  +4点(88点):良化 (基準点84点)

 

 

【リスク】

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先週のリスクはマイナス4ポイントの悪化でした。

新型コロナは先進国では欧米製ワクチンの接種が拡大し新規感染者数の減少が続きますが、中国製ワクチンを接種しているブラジル、チリなどの新興国ではワクチン接種は拡大しているものの、新規感染者数が高止まりしている傾向にあります。

中国製ワクチンはデルタ株に対しての有効性が低下するとの報道もあり、今後より欧米製のワクチンの需要が高まってくる可能性があります。

 

また香港では民主派メディアのアップルデイリーが廃刊に追い込まれ、中国当局の民主派への徹底統制する姿勢が浮き彫りになりました。

台湾と香港との出先機関も業務停止となり、中国当局の統制強化が進みました。

 

 

【経済指標】

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先週の経済指標はプラス4ポイントの良化となりました。

欧州のPMIは予想が高かったこともありまちまちでしたが、概ね好調な水準を維持しました。

米国のインフレ指標であるPCEコアデフレーターは予想の3.4%に一致し、高いインフレを示したもののサプライズはなく、無難に通過しました。

 

また先週は、BOE政策金利発表がありましたが、事前に予想されていた金融正常化への示唆はなく、現在のインフレは一時的として緩和政策の維持を決めました。

一方でメキシコ中銀が4.00%から4.25%に利上げするサプライズがありました。6月前半のCPIが6.02%となりインフレ目標上限である4%を大きく上回ったためです。

先週はハンガリーも利上げに踏み切っており、経済が不安定な国から徐々に利上げ気運が高まってきています。

 

次週は米ISM製造業景況指数と米雇用統計の発表があります。

今後の米金融政策を占う意味でも雇用統計の重要さが増していますが、予想は69.5万人となっています(前回55.9万人)。5月下旬から大手自動車メーカーの工場では半導体不足による操業停止から再稼働しており、前回薄かった労働力需要に強い戻りが期待されるため、上振れると思います。

 

 

【先週の振り返りと考察】

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先週の株価指数は概ね堅調に推移しました。

前週末にはFOMCでのタカ派寄りな姿勢への転換により下落していましたが、米10年国債利回りの低下に加え、パウエル議長の「インフレは一過性」というコメントも後押しし、今後のインフレ圧力が緩やかになるとの観測から落ち着きを取り戻しました。

米10年国債利回りは、6/21の日本時間に一時1.3%台まで低下しましたが、その後は概ね1.43%-1.52%のレンジで推移し、株式市場全体に適温な金利状態を醸成しました。

またバイデン政権が超党派グループとの間で8年間で1.2兆ドルのインフラ投資計画に合意したことで景気の先行きが楽観視され、景気敏感銘柄に追い風となりました。

 

次週は金利が安定しVIXも15台と落ち着いている中で、先週のバイデン政権のインフラ投資計画の影響を引き継ぎ、7/2の雇用統計まではダウの上目線を予想します。

雇用統計が予想と一致か下回った場合は金利低下でナスダック上昇、予想より上回った場合は金利がやや上昇しナスダックが下落することを予想します。

 

 

FOMCの議決権の仕組み〜

  さて、6月のFOMCが終了したこともあり、先週はFRB高官の発言が相次ぎました。

18名のFRBメンバーの内、10名の発言がありました。

FOMCFRB自体のスタンスがタカ派に変化した事もあり、アトランタ連銀総裁、サンフランシスコ連銀総裁、ボストン連銀総裁が、発言内容をFOMC前のハト派スタンスからタカ派スタンスへ変えてきました。

 

ここで、改めてFOMCの仕組みについて説明してみたいと思います。

FOMCはFRS(Federal Reserve System:連邦準備制度)のうちの一つの組織です。FRB米連邦準備制度理事会)もFRSの組織に含まれます。

FOMC連邦公開市場委員会の略称で、年8回行われるFRBの金融政策を決定する会議です。

18名のFRBのメンバーが参加し議論しますが、政策決定は議決権を持ったメンバーの意思で決定されます。

議決権はパウエル議長を含む7名のFRB理事(現在1名空席)と5名の連銀総裁が持ちます。

連銀総裁の議決権はNY連銀総裁が固定で、その他の4名は11名の連銀総裁が毎年輪番で持ち回ります。

つまり11票のうち4票は毎年スタンスが変わる可能性があります。

 

下記はこれまで何度かお見せしているFRB高官の発言内容を更新し、22年、23年の議決権の変化を加えたものです。

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今年の議決権を持つメンバーでは、アトランタとサンフランシスコ連銀総裁の2人がFOMC後にタカ派スタンスに変えています。

22年の議決権を持つメンバーでは、FOMC前からタカ派スタンスを見せているセントルイスカンザスシティ連銀総裁に加え、新たにボストン連銀総裁がFOMC後にスタンスを変え、3人がタカ派となっています。

つまり、現時点で言えることは今年のタカ派が増えただけでなく、22年には輪番制により議決権を持つタカ派がさら増えることとなり、22年の金融政策がよりタカ派寄りになる可能性があるということです。

 

このように、スタンスを変えたメンバーがどの時期の議決権を持っているかによって、金融政策の変更時期に影響してくると思われます。

具体的には21年の議決権メンバーはテーパリング政策への影響、22年の議決権メンバーは利上げの時期への影響が考えられます。

 

 すなわち先週のFRB高官の相次ぐスタンスの変化は、FOMCからコンセンサスとなりつつある年末からのテーパリング、22年末もしくは23年での利上げの浸透に向け、ややタカ派に傾倒し足場を固めつつある状況だと思います。

 

CPI、PCEデフレーターなどの指標の推移と共に、FRB高官の言動をそれぞれの立場に注意して見ていくと、少し予想の助けになってくるのではないかと思います。

 

以上

 







【6/14-6/18週の世界のリスクと経済指標】〜イールドカーブのフラットニング〜

先週の評点:

 

リスク   +2点(38点):小幅良化 (基準点36点) 

経済指標  -1点(79点):小幅悪化 (基準点80点)

 

 

【リスク】

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先週のリスクはプラス2ポイントの小幅良化でした。

新型コロナはワクチン接種の拡大から確実に感染者が減少していますが、先進国が中心でありワクチン不足に悩む新興国ではデルタ株を中心に感染拡大が未だ止まりません。既にコロナを克服し始め、景気過熱から引き締めに移行しようとしている先進国に対して、コロナが足枷となり景気回復が遅れる新興国との格差がさらに拡大する可能性があります。

 

また先週のG7に引き続きバイデン大統領がNATO首脳会議に臨み、米国と欧州の結束を固めました。また対中を軸にした改革指針である「NATO2030イニシアチブ」を承認し、新たな戦略概念を検討することとなりました。

 

 

【経済指標】

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先週の経済指標はマイナス1ポイントの小幅悪化となりました。

先週は米FOMCが開催され、従来は24年以降としていた利上げが前倒しされ、23年中に2回行うことが示唆されました。またテーパリングに関しても、従来は「議論開始する時期ではない」としていたものが軟化され、議論の開始が示唆されました。

また翌日には来年からFOMC議決権を持つことになるセントルイス連銀総裁が、さらに前倒しの22年終盤の利上げ予測をコメントしました。

市場からは予想以上の「タカ派姿勢」と理解され、これまでのハト派からの転換が強く示されました。

 

 次週は6/21のラガルドECB議長の発言、6/24の英中銀MPC議事要旨が、FRBタカ派姿勢を受け、追従する動きを示唆するのか注目します。

また6/25には米5月PCEコアデフレーターの発表があります。GMなど自動車工場の再開は6月からであり、依然中古車価格の上昇などの影響は残っていると思われますが、CPIコア同様強いインフレを示してFRBタカ派転換を正当化するのか注目したいと思います。

 

 

【先週の振り返りと考察】

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先週の株価指数は米FRBFOMCでのタカ派スタンスへの転換により、総じて軟調の動きとなりました。

長期金利は上昇すると思いきや低下し、FOMC前の1.58%に対し144%で週を終えました。

それにより、金利感応度の高いナスダックが0.28%安と小幅下落で済んだ一方で、金利耐性が強いダウ平均が3.45%安と大きく下落しました。

また、FRBのインフレ抑制姿勢を受け、コモディティも大きく下落しました。

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イールドカーブフラットニング

下記はFOMC前の6/16とFOMC後の6/18の米国債利回り曲線(イールドカーブ)を表した物です。

FRBタカ派スタンスを受けて短い2年物までの債券は上昇していますが、5年物以上の債券利回りは低下しています。

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通常ならばFRBタカ派スタンスへの転換は、国債購入額を減らし利上げする時期が早まることになるため、長期金利は上昇することが想定されます。つまりイールドカーブはよりスティープニング(傾斜角度が急になること)することが予想されました。

 

しかし、今回はそれとは逆のフラットニングの事象が起こりました。

おそらくこれは本格的な金融引き締めに入る前にも関わらず、今回のFRBタカ派転換で金融引き締め状態を表すベアフラットニング的なサイクルを一時的に織り込んだものと思われます。

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マーケットにとっては、今回のFRBの強めの姿勢転換はサプライズであったため、「利上げ観測からの金利上昇圧力」よりも「引き締めに対するリスクオフの反応として債券価格上昇」が上回った結果と理解できます。

 

ただ、現在はまだ金融相場の只中でありベアフラットニングのサイクルに変化するのは時期尚早だと思われます。2023年までに2回行われると観測されるFF金利引き上げはもう少し先であり、今後景気の回復と共に再び長期金利も上昇してくるのが自然の流れであると考えます。

 

 従って先週は金利低下を背景にハイテク株が堅調でナスダックがアウトパフォームしましたが、ファンダメンタルで考えると金利低下は一時的で続かないと考えられるため、すんなりとロング目線で行けるとは思えません。

引き締め姿勢が明確になった以上、しばらく株価は下目線で不安定な動きが続くものと想像します。

 

以上

【6/7-6/11週の世界のリスクと経済指標】〜G7の復活〜

先週の評点:

 

リスク   +7点(43点):大幅良化 (基準点36点) 

経済指標  +2点(60点):良化 (基準点58点)

 

 

【リスク】

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先週のリスクはプラス7ポイントの大幅良化でした。

新型コロナは新規感染者は増加しているものの、世界的なワクチン接種の広がりにより鈍化しています。一方でワクチン接種の進まない新興国では変異株の影響もあり一進一退の状況が続いています。

その中でG7サミットでの新興国への10億回分のワクチンの寄付への合意は、世界的なコロナ禍からの回復を後押しするための大きな成果だと思われます。

 

 また、先週の政治的な話題ではやはりG7サミットが大きいですが、こちらは後述します。

 

【経済指標】

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先週の経済指標はプラス2ポイントの良化でした。

注目の米5月コアCPIは市場予想も3.4%と高かったものの、さらにそれを上回って3.8%となりました。内訳を見てみると中古車が29.7%と前月の10.0%よりも更なる強い伸びを見せました。これは依然半導体不足にと労働者不足により新車が生産できず、供給サイドの問題からインフレが促されていることを示しています。それを反映して「インフレは一時的」というFRBの主張が正当化され、長期金利は1.4%台で落ち着いています。

 

 次週はFOMCがあります。FRBは「インフレは一時的」としてハト派スタンスを崩していませんが、一方でFOMCメンバー内でテーパリングが意識されているもの事実です。前回のFOMCの議事内容によると「幾人かの参加者が早期テーパリング協議開始を示唆」したことが明らかになっています。今回のFOMCでどこまでその声が大きくなり、パウエル議長の発言内容に織り込まれてくるか注目したいと思います。

 

 

【先週の振り返りと考察】

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先週の株価指数はナ米雇用統計の下振れに加え、米CPI後の長期金利の落ち着きにより、ナスダックに有利な展開となりました。

また、ハイテク株の上昇に連れてじわじわとS&P500は最高値を更新しました。

原油が70ドル台に乗せたことにより、原油生産国であるロシアRTS指数も強く上昇しました。

次週はCPIを乗り越え一時的なインフレ懸念も織り込まれた感があり引き続きナスダックに上目線ですが、FOMCでのサプライズも想定しておく必要があるかと思います。

 

 

〜G7の復活〜

 さて、今週末は英国にてG7サミットが開催されています。

G7サミットは1975年から続く、先進国首脳が1年に1回集まって政治、経済課題について議論する会合です。

しかしここ最近はその機能が低下し、この枠組み事態の存続が危ぶまれていました。

フランス開催の2019年は保護主義に走る米国の独善的な主張により各国の主張がまとまらず、毎回必ず行われてきた首脳宣言の見送りという前代未聞の事態が起こりました。また米国開催予定だった2020年はコロナ禍や欧州と米国の溝により延期され、オンライン開催すらなく中止されました。つまり米国やブレグジットを抱えた英国での保護主義の高まりから先進国内での結束が失われていたのです。

 

 しかし、今回のG7サミットは、これまで報道されている議事の内容を見る限り、その結束を取り戻し、再び世界を主導しようとしつつあると考えられます。

下記は日経新聞の6月13日朝刊からの転載です。

 

[G7サミットの議論・合意事項(12日時点)]

・インフラ投資の枠組みを創設、一帯一路に対抗

・新型コロナ禍からの経済回復に向け財政出動の継続を支持

・医療分野のサプライチェーン(供給網)を拡大

・ワクチン開発やWHO改革など感染症に備える行動原則を宣言

・ワクチン10億回分を途上国などに提供

 

特筆すべきは「インフラ投資の枠組みを創設」「ワクチン10億回分を途上国などに提供」の2点だと考えます。

ただ先進国の結束が回復しただけに止まらず、自らの痛みを伴って新興国に対してインフラ投資支援やワクチン支援を行うこととしています。それは先進国が再び世界に対して強く関わりを持って主導していくことの決意表明であると思います。

 

もちろん、同じく世界中でインフラ投資やワクチン援助を行い影響力を拡大する中国を意識した話であるのは言うまでもありません。

しかし、中国、新型コロナウィルスという共通の外敵の台頭により、瓦解しかけていたG7が再び結束と前向きの推進力を取り戻したことは大きな変化であり、純粋に嬉しく思います。

 

そしてG7の復活は、結束を掲げたバイデン大統領が米国民によって選ばれ、その影響力が欧州各国にも拡がったものだと考えられます。

この民意の反映と修正能力こそが民主主義の最大の強みであると思います。

 

以上

【5/31-6/4週の世界のリスクと経済指標】〜新興国株式からの降りどきを考える〜

先週の評点:

 

リスク   2点(38点):良化 (基準点36点) 

経済指標  +18点(129点):大幅良化 (基準点111点)

 

 

【リスク】

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先週のリスクはプラス2ポイントの良化としました。

新型コロナウィルスは感染激化していたインドでの感染者増加数が12万人まで急速に改善してきました。東南アジア、南米、アフリカなどのワクチン接種が遅れる新興国での感染が拡大しましたが世界全体では減少傾向となっています。

ワクチン接種は20億回間近となっており、接種が進む米国、欧州などでは制限の撤廃が進み、経済活動が活発化してきました。

 

 6/11-13にて開催されるG7首脳会議では、中国の「一帯一路」に対抗する、G7を中心とした新たな枠組みである「クリーン・グリーン・イニシアチブ」について議論がなされる予定となりました。

ここ最近対中強硬姿勢が強まる欧州もこの枠組みの中心となることで、対立軸が先進国VS中国(権威主義国)へと変化してく様子が示されています。

 

 

【経済指標】

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先週の経済指標はプラス18ポイントの大幅良化となりました。

中国のPMIは中国元高で輸出が減少したことからやや悪化を示しました。

 

一方で欧米の指標はコロナ禍からの回復で概ね好調な指標を示しました。

特に米国のISM景況指数は製造業・非製造業共に予想に対して上振れし、順調に回復していることを示しました。

米雇用統計は、平均時給と失業率は予想に対して上振れして改善を示したものの、非農業部門雇用者数は予想65万人に対して55.9万人と下振れました。先月の27.8万人からは倍増したものの、労働力の供給が追いついていないことを示し、やや力強さに欠けました。

 

 

【先週の振り返りと考察】

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 先週は日経、上海総合、香港ハンセンなどのアジア指数は反落しましたが、欧米指数は堅調に推移しました。

日経は前週末の600円高の反動で週初めに下げ、そのまま一進一退で推移しました。

米株指数も横ばいの動きでしたが、6/4の雇用統計が先月より改善しながらも市場予想を超える強い指標を示さず、早期テーパリング観測が緩和されたことが好感され伸長しました。

また、原油価格が66ドルから69ドルに上昇したため、資源国である露RTS指数やブラジルボベスパ指数が大きく上昇しました。

 

今週は雇用統計にて一旦テーパリング観測が後退し、一時2.54まで上昇していたBEIも2.40まで落ち着いてきているため長期金利も低下しており、ナスダックに上目線です。

 

 

新興国株式からの降りどきを考える〜

 現在私は長期投資の株式ポートフォリオ新興国株式としてMSCIエマージングマーケット指数(略称:MSCIエマ)を10%ほど組み入れています。
私がMSCIエマをコロナショック後に最初に組み入れたのは昨夏ですが、2月中旬までは先進国株式指数であるMSCIコクサイを大きくアウトパフォームしました。しかし2月中旬に高値をつけてからアンダーパフォームしています。

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昨年からの回復局面では爆発的な伸びで十分に役割を果たしてくれましたが、ここ最近は高値を追えずやや影を潜めてきた印象です。当面は引き続き保有はしていく方針ですが、どこかでMSCIエマを外す、もしくは割合を減らすことを意識する必要があると思っています。

下記はMSCIエマとドルインデックスのチャートです。

ドルが安い時にはMSCIエマは伸び、ドルが高い時にはMSCIエマは調整する逆相関があることがわかります。 

つまり新興国株が調整する局面はドル高/新興国通貨安の局面ということになります。

 

そのドル高→新興国株調整の理由は下記が考えられます。

 

①ドル建て債務、利払い膨張で財政逼迫【財政面】

②輸入品高騰→インフレ加速【物価面】

③自国通貨価値の維持のため利下げがしづらく、景気刺激策が打てない【金融面】

 

 逆にドルが安く新興国通貨が強い局面では上記とは逆の展開となるため新興国には有利となり、新興国株式にも有利となります。

 直近でも2月中旬からのMSCIエマのグズつきは長期金利高、ドル高が影響していましたが、足元では再びドル安が進んでいるため戻しており、資源価格の高騰も相まって再び上昇しそうな雰囲気です。

しかし、いずれ経済正常化とともにテーパリングが行われ、FRB金利引き上げが行われて業績相場へ移ります。そのタイミングでは確実にドル高となっていくことが予想され、MSCIエマは調整局面入りすると思われます。

 

つまりFRB金利引き上げ時が、MSCIエマをポートフォリオから完全に外すタイミングだと想定しています。

イメージとしてはテーパリング開始時に10%→5%に減少、利上げ時に5%→0%としてMSCIコクサイに振り替えることを検討していきたいと思います。

 

以上



【5/24-5/28週の世界のリスクと経済指標】〜FRBのテーパリングに向けた地固め〜

先週の評点:

 

リスク   -2点(31点):悪化 (基準点33点) 

経済指標  +2点(44点):良化 (基準点42点)

 

 

【リスク】

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先週のリスクはマイナス2ポイントの悪化となりました。 

新型コロナはワクチンの接種が進み新規感染者の減少していますが、ワクチン接種の進みの遅い新興国では再拡大が目立ちます。マレーシア、タイ、ベトナムなどの東南アジアやブラジル、アルゼンチンなどの南米で変異株が拡大しています。ベトナムではイギリス株とインド株のハイブリッド変異株も見つかっており、予断を許しません。  

 

また先週はコロナウィルスの発生源について中国の武漢研究所からの漏洩ではないかとの議論が再発し、バイデン大統領は追加調査を情報機関に命じました。恐らく調査は進んでも中国は一切認めないと思われ、新たな対立の火種になりそうです。  

 

EU首脳協議も行われ、共同声明にて中国による東シナ海南シナ海での現状変更の試みに「強く反対する」とし、台湾問題に関しても明記されました。EUによるインド太平洋地域への関わりが強化されていることが示されました。 

 

 

【経済指標】

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先週の経済指標はプラス2ポイントの小幅良化となりました。

注目はやはり米4月PCEコアデフレーターで、予想2.9%に対して3.1%と上振れました。しかし、5/12の4月CPIでのサプライズでインフレ傾向は織り込み済みで上振れ幅が小さかったことから、マーケットの反応は限定的でした。

 

またNZ準備銀行は政策金利を0.25%の据え置きとしながらも22年下期の利上げを示唆しました。

 

今週は豪中銀政策金利発表、中国財新PMI、米国ISM製造業/非製造業景況指数、雇用統計の発表があります。

各国中銀によるテーパリングを意識した発言が出る中、豪中銀による見通しが注目されます。

 

 

 

【先週の振り返りと考察】

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先週は横ばいの動きを予想していましたが、主要株価指数は堅調に推移しました。

特に日経、上海総合、香港ハンセンなどのアジア指数が強い伸びを示しました。台湾加権指数も3.49%も伸びでした。特にここ最近中国は高騰する商品価格の抑制に動いていましたが、ややインフレ懸念が和らいだことを受けて上海総合指数が急伸しました。

 米株指数は長期金利の落ち着きや、バイデン政権により発表された6兆ドル以上の歳出予算案や背景に上昇し、ダウ平均、S&P500は約1%高、ナスダックは2%の伸びを見せました。

また独DAXはECBの緩和観測の後退により小幅上昇ながら最高値を更新しました。

RTS指数やブラジルボベスパ指数などの新興国株指数も原油高、資源高を背景に株価を伸ばしました。

 

今週は決算を終えて割安となったPER、ワクチン接種の進展や中国株の復活により日経に上目線です。ただ、米国のテーパリングや増税が意識されるなか、レンジ上限が意識され29,600円辺りを抜けることは厳しいと予想します。

 

 

FRBのテーパリングに向けた地固め〜

 さて、私は前週末にテーパリングに対するFRB高官のスタンスをまとめ、この1週間は予定されていたFRB高官たちの発言に構えていましたが、予想以上に動きがありました。

その発言内容を前週のまとめに追記しました。赤字がこの1週間で新たに発言があった内容です。

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先週は8人のFRB高官が発言しましたが、そのうち4人が早期のテーパリングを意識するようなスタンスを示しました。

参考までに前週にまとめた表を再掲載して比較します。

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オレンジ色のテーパリング容認スタンスのメンバーが18人中2人から18人中6人に増えています。中でもFOMCの議決権を持つクオールズ副議長、クラリダ副議長がスタンスを変えていることが強い意味を持ちます。

 

また、先週は米国以外の他国でも中央銀行高官によるテーパリングや利上げに関する言及がありました。

25日:NZ中央銀行が2022年下期の利上げの可能性を示唆

26日:日銀鈴木審議委員がETFREITの残高増加ベースは極力抑制すべきと発言
   (日銀は4月-5月は4/21の701億円のETF買いのみで既にテーパリング中)

27日:韓国中央銀行が緊急的な刺激策の縮小を準備していると発言

27日:英中央銀行のブリハ委員が22年前半の利上げの可能性があると発言

 

米欧中の景気回復に伴ったインフレ圧力に対して、世界的なテーパリングの流れが徐々に拡がっています。

※ECBは現在のところ早期テーパリングを否定する言及が多いです。

 

 その流れに合わせてFRB内でもじわじわとオセロの石を返すようにテーパリングへの地固めが行われているように感じます。
クオールズ副議長、セントルイス連銀総裁が示唆した「数ヶ月先」という時期も、現在マーケットのコンセンサスとなりつつある8/26-28のジャクソンホール会合を意識したものと思われます。

 

 今週は6/4にパウエルFRB議長がオンライン討論会での発言があります。FRB副議長二人が早期テーパリングへの発言をした後に、パウエル議長がどこまで踏み込んだ発言をするか注目されます。

 

以上







【5/17-5/21週の世界のリスクと経済指標】〜FRB高官のテーパリングに関する発言のまとめ〜

先週の評点:

 

リスク   +5点(38点):良化 (基準点33点) 

経済指標  +5点(98点):小幅良化 (基準点93点)

 

 

【リスク】

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先週のリスクはプラス5ポイントの良化としました。

新型コロナウィルスは最大の新規感染者数が続いていたインドで40万人を天井にピークアウトし26万人規模まで減少してきました。一方で台湾やタイなどで変異株が原因で再拡大となっています。半導体生産で重要なポジションを担う台湾での再拡大で半導体生産が停滞することが懸念されています。

 一方で欧米諸国ではワクチン接種からの制限緩和が続き、NY市ではレストランや小売店などでの人数制限が撤廃されました。またフランスではルーブル美術館が開館され、徐々に通常モードに戻ってきています。

 

 また先週は米韓首脳会談が行われ、共同声明に「台湾海峡の平和と安全の重要性」が盛り込まれました。

これまで韓国は経済的な依存が大きい中国へ配慮して米中対立では中立的な態度をとっていましたが、日本と同様のスタンスの声明が出されたことに少々驚きました。米国でのサムスン半導体工場の新設など経済的な連携強化も発表され、米国側へ引き戻されたことが鮮明となりました。

今後中国がどのような反応を見せてくるか注目です。

 

 

【経済指標】

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先週の経済指標はプラス5ポイントの良化としました。

注目はFOMC議事要旨と欧米PMIでした。

FOMC議事要旨の発表では一部参加者が今後のテーパリングの協議開始を否定しない姿勢を見せたことが示され、FOMCでもテーパリングが意識され始めたことが明らかになりました。

 

欧米のPMIは前月に続いて概ね好調が示されました。

ドイツおよびEUの製造業PMIは半導体不足から自動車が減産されている影響から4月に比べて若干低下しましたが、サービス業はコロナワクチンの拡大から制限措置の緩和により昨年7月以来の高水準となりました。

米国は製造業PMIも4月から上昇しましたが、サービス業PMIは予想64.5に対して70.1と大幅に上昇し、こちらも制限措置の緩和により強く景気回復していることが示されました。

 

今週は米国の4月新築住宅着工件数、PCEコアデフレーターの発表があります。特にPCEコアデフレーターはCPIに続き強い指標が示されるか注目されます。

 

 

【先週の振り返りと考察】

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 先週の主要株価指数はまちまちで小動きとなりました。

先週は、中国当局が国内の金融機関に対して仮想通貨の取引サービスの提供を禁止したことをきっかけに仮想通貨が暴落しました。それに連れて米株指数も一時調整しましたが、好調な経済指標の発表もあり株式市場への影響は限定的で週足では軽微となりました。

日経は、週前半に新型コロナ変異株の拡大により台湾株が大きく下げたことに連れて下げましたが、押し目買いで反発して週足としては0.83%上昇しました。

今週も米国のPCEコアデフレーターを睨みながら一進一退の動きで、週足としては横ばいを予想します。

 

 

FRB高官のテーパリングに関する発言のまとめ〜

さて、先週は19日に4月末のFOMCの議事録要旨の発表がありました。

その中には「幾人かの参加者は経済が委員会の目標に向けて急速な進展を続ければ、今後の会合のいずれかに資産購入ペースの調整に関する計画を協議し始めるのが適切になるかもしれないと提案した」との内容が示されました。

これまでFOMCメンバーは一貫して早期のテーパリングへ慎重な発言を繰り返していましたが、マーケットが意識しているようにFOMC内でも明確に意識され始めています。

 

ここでFRBメンバーのテーパリングに関する発言内容を整理してみたいと思います。

下記は主に5月に入ってからのFRB高官の発言内容です。

水色がテーパリング慎重発言、オレンジがテーパリング容認発言と色分けしています。(白は中立的コメントか発言なし)

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日々ニュースを読んでいる中では、複数人のメンバーが早期テーパリングの容認発言をしていた印象でしたが、実際にはダラス連銀総裁のカプラン氏の発言回数が多かっただけで、カプラン氏以外では5/21にフィラデルフィア連銀総裁が初めて容認発言をしています。意外とまだ容認派は少ない印象です。

ただ、ダラス連銀総裁もフィラデルフィア連銀総裁も現在FOMC議決権を持たないため、直接的に金融政策に影響を及ぼしません。前回のFOMCでは両氏以外の議決権を持つ別のメンバーがテーパリングを議題に出したことになります。

 

 テーパリングが行われることは既に既定路線であり、インフレと雇用を天秤にかけながらそれがいつ行われるのかがマーケットに意識されるところです。

前週に考察したように、これまでのFRB高官の発言内容同様、私はCPIの伸びは一時的になる可能性が高いと考えているため、テーパリングは当分先になると見ています。一方でいずれ来るテーパリングに対してマーケットの拒絶反応が出ないように、FRBはテーパリングへの意識をじわじわと浸透させていくものと思われます。

 ついては21日に新たにフィラデルフィア連銀総裁が容認した様に、今後新たにどの高官から容認発言が出てくるか、特にFOMCメンバーの発言内容に注目しています。

現在のFOMCメンバーにはタカ派がおらずハト派が多いですが、中立的立場と言われるクオールズ副議長、リッチモンド連銀総裁、アトランタ連銀総裁はタカ派にも振れやすいと思われるため、発言には特に注意が必要かと思われます。

 

今週の5/24(月)には早速、ブレイナード理事、アトランタ連銀総裁カンザスシティ連銀総裁、クリーブランド連銀総裁の講演があり、さらに5/25(火)にはクオールズ副議長の議会証言がありますので注目されます。

 

以上







【5/10-5/14週の世界のリスクと経済指標】〜CPIから見るインフレに対するFRBシナリオの納得性〜

先週の評点:

 

リスク   1点(34点):小幅良化 (基準点33点) 

経済指標  +3点(62点):小幅良化 (基準点59点)

 

 

【リスク】

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先週のリスクはプラス1ポイントの小幅良化となりました。

新型コロナは強い新規感染者拡大が続いていたインドにおいて、ようやくピークアウトの兆しが見えてきました。

世界的にはワクチンの接種の拡大により減少傾向が続いていますが、日本だけが変異株の拡大により強い上昇傾向を示しています。

米国では既にコロナワクチンが一般化し、予約を行わなくてもすぐに接種可能な状態となっており、今後は徐々に米国製ワクチンが拡大していくものと思われます。

 

 欧州では前週に行われたスコットランドの議会選挙において独立派が過半数を握ったたため、英国の分裂リスクが顕在化してきました。スコットランドスタージョン首相はコロナ危機が収束次第、住民投票を行うことを目標に掲げています。対中政策の体裁上、民主主義を立てて強引に拒否することができない英政権の今後の舵取りが注目されます。

 

 

【経済指標】

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先週の経済指標はプラス3ポイントの良化としました。

注目の米4月CPIコア指数は前年同月比予想2.3%に対し3.0%と大幅に上振れました。またそれに続く4月PPIコアも予想3.8%に対して4.1%とこちらも上振れました。

これらの強いインフレ指標の上昇により、テーパリングおよび利上げの早期化が意識され、株式市場は動揺して大きく下落しました。

一方で4月小売売上高は0.0%と先月からの横ばいを示し、+1.0%の予想に対して下振れましたが、消費が伸びなかった安心感からか株式市場は反発しました。

 

次週は中国4月小売売上高、米4月住宅着工件数、欧州4月消費者物価指数FOMC議事録要旨、欧米のPMIに注目です。

 

 

【先週の振り返りと考察】

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先週の株式市場は総じて軟調に推移しました。

米国市場は、インフレ指標の強い上昇でテーパリングや利上げの早期化が意識され、金利上昇耐性の弱いハイテクグロース株を中心に下落しました。

週末には一旦落ち着きを見せて反発しましたが、週を通してはIT、通信、一般消費財、不動産などのインフレに弱いセクターが強く調整しました。

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また、日経は米国市場の影響を受けた上、決算発表にてコンセンサスを下回るものが多く、現在の高い株価の期待に応えることができない企業が多かった印象で、下落に拍車がかかりました。ここ最近は日経の弱さが目立ち、3月にポートフォリオから外したことが肯定されています。

 

〜CPIから見るインフレに対するFRBシナリオの納得性〜

さて、先週は4月の米国CPIコア指数が前年同月比3.0%、前月比0.9%上昇しましたが、改めてそのCPIの中身を見ていきたいと思います。

前月比で取り立てて大きく変動し上昇を引っ張ったアイテムは下記の通りです。

 

①Used car and Trucks(中古車) 前月比+10.0%

②Transportation Services (移動サービス)前月比+2.9%

③Commodity (商品)前月比+2.0%

※参考:Department of Labor, U.S.A 

https://www.dol.gov/newsroom/economicdata/cpi_05122021.pdf

 

こうして見てみると、CPIが大きく上昇したのは半導体不足から来る問題(半導体不足で新車が作れず中古車の値段が上がった)およびワクチン接種拡大による人の移動の再開が影響したことがわかります。

また、これらと現在考えられるインフレ要因を整理してみると下記の通りとなると思います。

 

[需要側要因]

  • ワクチン接種による経済活動再開→外食需要、旅行需要でホテル、移動サービス、自動車需要の高まり
  • 金利、リモートワークを背景とした住宅需要→木材価格など商品価格の高まり

[供給側要因]

  • 半導体供給停滞→米中対立での中国企業からの半導体購入禁止、日米半導体工場が寒波や火災で一時稼働停止
  • 上乗せ失業保険により低賃金の雇用に人が戻らない→労働コストの高まり(先日の雇用統計では平気時給が0.7%上昇)

 

現在米国は需要面、供給面の両面から物価上昇要因を抱えています。

しかし、供給側要因の半導体は、被災した半導体メーカーの体制が回復し、また中国外で新たに増強している工場が稼働すれば落ち着くと思われますし、雇用の問題も9月下旬に失業保険の上乗せの失効と共に解決に向かっていくものと思われます。

つまり現在のCPIコア指数の強い上昇の要因となっている供給面での要因が向こう数ヶ月で落ち着く可能性が高いと思われます。

特に今回のCPIで大きな影響を及ぼした中古車価格は新車よりも需給の影響を受けやすい特性があるため、半導体不足が解決し新車供給が正常化されれば自動車価格の上昇は限定的となると思われます。

 

CPIの発表のあと、FRBのウォラー理事は「今後サプライチェーンボトルネックの解消することから、インフレ指標の上昇は一過性となる」との見方を改めて示しています。

また金融政策の変更を検討する前に「さらに数ヶ月分のデータ」が必要と発言しています。


今回のCPIのサプライズは、サプライチェーンの問題が突出して強く現れた結果でありました。

そういう意味で向こう数ヶ月間にそれが落ち着くことで物価上昇は抑えられるというFRBのシナリオは、現時点では納得の行くものであると考えられます。

 

ただ、どちらにせよ半導体不足が解消がされ、自動車生産が軌道に乗りインフレ指標に現れて来るまでは、はっきりしない一進一退の株価推移が続くと思います。

 

以上