【6/14-6/18週の世界のリスクと経済指標】〜イールドカーブのフラットニング〜
先週の評点:
リスク +2点(38点):小幅良化 (基準点36点)
経済指標 -1点(79点):小幅悪化 (基準点80点)
【リスク】
先週のリスクはプラス2ポイントの小幅良化でした。
新型コロナはワクチン接種の拡大から確実に感染者が減少していますが、先進国が中心でありワクチン不足に悩む新興国ではデルタ株を中心に感染拡大が未だ止まりません。既にコロナを克服し始め、景気過熱から引き締めに移行しようとしている先進国に対して、コロナが足枷となり景気回復が遅れる新興国との格差がさらに拡大する可能性があります。
また先週のG7に引き続きバイデン大統領がNATO首脳会議に臨み、米国と欧州の結束を固めました。また対中を軸にした改革指針である「NATO2030イニシアチブ」を承認し、新たな戦略概念を検討することとなりました。
【経済指標】
先週の経済指標はマイナス1ポイントの小幅悪化となりました。
先週は米FOMCが開催され、従来は24年以降としていた利上げが前倒しされ、23年中に2回行うことが示唆されました。またテーパリングに関しても、従来は「議論開始する時期ではない」としていたものが軟化され、議論の開始が示唆されました。
また翌日には来年からFOMC議決権を持つことになるセントルイス連銀総裁が、さらに前倒しの22年終盤の利上げ予測をコメントしました。
市場からは予想以上の「タカ派姿勢」と理解され、これまでのハト派からの転換が強く示されました。
次週は6/21のラガルドECB議長の発言、6/24の英中銀MPC議事要旨が、FRBのタカ派姿勢を受け、追従する動きを示唆するのか注目します。
また6/25には米5月PCEコアデフレーターの発表があります。GMなど自動車工場の再開は6月からであり、依然中古車価格の上昇などの影響は残っていると思われますが、CPIコア同様強いインフレを示してFRBのタカ派転換を正当化するのか注目したいと思います。
【先週の振り返りと考察】
先週の株価指数は米FRBのFOMCでのタカ派スタンスへの転換により、総じて軟調の動きとなりました。
米長期金利は上昇すると思いきや低下し、FOMC前の1.58%に対し144%で週を終えました。
それにより、金利感応度の高いナスダックが0.28%安と小幅下落で済んだ一方で、金利耐性が強いダウ平均が3.45%安と大きく下落しました。
また、FRBのインフレ抑制姿勢を受け、コモディティも大きく下落しました。
〜イールドカーブのフラットニング〜
下記はFOMC前の6/16とFOMC後の6/18の米国債利回り曲線(イールドカーブ)を表した物です。
FRBのタカ派スタンスを受けて短い2年物までの債券は上昇していますが、5年物以上の債券利回りは低下しています。
通常ならばFRBのタカ派スタンスへの転換は、国債購入額を減らし利上げする時期が早まることになるため、長期金利は上昇することが想定されます。つまりイールドカーブはよりスティープニング(傾斜角度が急になること)することが予想されました。
しかし、今回はそれとは逆のフラットニングの事象が起こりました。
おそらくこれは本格的な金融引き締めに入る前にも関わらず、今回のFRBのタカ派転換で金融引き締め状態を表すベアフラットニング的なサイクルを一時的に織り込んだものと思われます。
マーケットにとっては、今回のFRBの強めの姿勢転換はサプライズであったため、「利上げ観測からの金利上昇圧力」よりも「引き締めに対するリスクオフの反応として債券価格上昇」が上回った結果と理解できます。
ただ、現在はまだ金融相場の只中でありベアフラットニングのサイクルに変化するのは時期尚早だと思われます。2023年までに2回行われると観測されるFF金利引き上げはもう少し先であり、今後景気の回復と共に再び長期金利も上昇してくるのが自然の流れであると考えます。
従って先週は金利低下を背景にハイテク株が堅調でナスダックがアウトパフォームしましたが、ファンダメンタルで考えると金利低下は一時的で続かないと考えられるため、すんなりとロング目線で行けるとは思えません。
引き締め姿勢が明確になった以上、しばらく株価は下目線で不安定な動きが続くものと想像します。
以上