【5/31-6/4週の世界のリスクと経済指標】〜新興国株式からの降りどきを考える〜
先週の評点:
リスク 2点(38点):良化 (基準点36点)
経済指標 +18点(129点):大幅良化 (基準点111点)
【リスク】
先週のリスクはプラス2ポイントの良化としました。
新型コロナウィルスは感染激化していたインドでの感染者増加数が12万人まで急速に改善してきました。東南アジア、南米、アフリカなどのワクチン接種が遅れる新興国での感染が拡大しましたが世界全体では減少傾向となっています。
ワクチン接種は20億回間近となっており、接種が進む米国、欧州などでは制限の撤廃が進み、経済活動が活発化してきました。
6/11-13にて開催されるG7首脳会議では、中国の「一帯一路」に対抗する、G7を中心とした新たな枠組みである「クリーン・グリーン・イニシアチブ」について議論がなされる予定となりました。
ここ最近対中強硬姿勢が強まる欧州もこの枠組みの中心となることで、対立軸が先進国VS中国(権威主義国)へと変化してく様子が示されています。
【経済指標】
先週の経済指標はプラス18ポイントの大幅良化となりました。
中国のPMIは中国元高で輸出が減少したことからやや悪化を示しました。
一方で欧米の指標はコロナ禍からの回復で概ね好調な指標を示しました。
特に米国のISM景況指数は製造業・非製造業共に予想に対して上振れし、順調に回復していることを示しました。
米雇用統計は、平均時給と失業率は予想に対して上振れして改善を示したものの、非農業部門雇用者数は予想65万人に対して55.9万人と下振れました。先月の27.8万人からは倍増したものの、労働力の供給が追いついていないことを示し、やや力強さに欠けました。
【先週の振り返りと考察】
先週は日経、上海総合、香港ハンセンなどのアジア指数は反落しましたが、欧米指数は堅調に推移しました。
日経は前週末の600円高の反動で週初めに下げ、そのまま一進一退で推移しました。
米株指数も横ばいの動きでしたが、6/4の雇用統計が先月より改善しながらも市場予想を超える強い指標を示さず、早期テーパリング観測が緩和されたことが好感され伸長しました。
また、原油価格が66ドルから69ドルに上昇したため、資源国である露RTS指数やブラジルボベスパ指数が大きく上昇しました。
今週は雇用統計にて一旦テーパリング観測が後退し、一時2.54まで上昇していたBEIも2.40まで落ち着いてきているため長期金利も低下しており、ナスダックに上目線です。
〜新興国株式からの降りどきを考える〜
現在私は長期投資の株式ポートフォリオに新興国株式としてMSCIエマージングマーケット指数(略称:MSCIエマ)を10%ほど組み入れています。
私がMSCIエマをコロナショック後に最初に組み入れたのは昨夏ですが、2月中旬までは先進国株式指数であるMSCIコクサイを大きくアウトパフォームしました。しかし2月中旬に高値をつけてからアンダーパフォームしています。
昨年からの回復局面では爆発的な伸びで十分に役割を果たしてくれましたが、ここ最近は高値を追えずやや影を潜めてきた印象です。当面は引き続き保有はしていく方針ですが、どこかでMSCIエマを外す、もしくは割合を減らすことを意識する必要があると思っています。
下記はMSCIエマとドルインデックスのチャートです。
ドルが安い時にはMSCIエマは伸び、ドルが高い時にはMSCIエマは調整する逆相関があることがわかります。
つまり新興国株が調整する局面はドル高/新興国通貨安の局面ということになります。
そのドル高→新興国株調整の理由は下記が考えられます。
①ドル建て債務、利払い膨張で財政逼迫【財政面】
②輸入品高騰→インフレ加速【物価面】
③自国通貨価値の維持のため利下げがしづらく、景気刺激策が打てない【金融面】
逆にドルが安く新興国通貨が強い局面では上記とは逆の展開となるため新興国には有利となり、新興国株式にも有利となります。
直近でも2月中旬からのMSCIエマのグズつきは長期金利高、ドル高が影響していましたが、足元では再びドル安が進んでいるため戻しており、資源価格の高騰も相まって再び上昇しそうな雰囲気です。
しかし、いずれ経済正常化とともにテーパリングが行われ、FRBの金利引き上げが行われて業績相場へ移ります。そのタイミングでは確実にドル高となっていくことが予想され、MSCIエマは調整局面入りすると思われます。
つまりFRBの金利引き上げ時が、MSCIエマをポートフォリオから完全に外すタイミングだと想定しています。
イメージとしてはテーパリング開始時に10%→5%に減少、利上げ時に5%→0%としてMSCIコクサイに振り替えることを検討していきたいと思います。
以上