投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【5/24-5/28週の世界のリスクと経済指標】〜FRBのテーパリングに向けた地固め〜

先週の評点:

 

リスク   -2点(31点):悪化 (基準点33点) 

経済指標  +2点(44点):良化 (基準点42点)

 

 

【リスク】

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先週のリスクはマイナス2ポイントの悪化となりました。 

新型コロナはワクチンの接種が進み新規感染者の減少していますが、ワクチン接種の進みの遅い新興国では再拡大が目立ちます。マレーシア、タイ、ベトナムなどの東南アジアやブラジル、アルゼンチンなどの南米で変異株が拡大しています。ベトナムではイギリス株とインド株のハイブリッド変異株も見つかっており、予断を許しません。  

 

また先週はコロナウィルスの発生源について中国の武漢研究所からの漏洩ではないかとの議論が再発し、バイデン大統領は追加調査を情報機関に命じました。恐らく調査は進んでも中国は一切認めないと思われ、新たな対立の火種になりそうです。  

 

EU首脳協議も行われ、共同声明にて中国による東シナ海南シナ海での現状変更の試みに「強く反対する」とし、台湾問題に関しても明記されました。EUによるインド太平洋地域への関わりが強化されていることが示されました。 

 

 

【経済指標】

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先週の経済指標はプラス2ポイントの小幅良化となりました。

注目はやはり米4月PCEコアデフレーターで、予想2.9%に対して3.1%と上振れました。しかし、5/12の4月CPIでのサプライズでインフレ傾向は織り込み済みで上振れ幅が小さかったことから、マーケットの反応は限定的でした。

 

またNZ準備銀行は政策金利を0.25%の据え置きとしながらも22年下期の利上げを示唆しました。

 

今週は豪中銀政策金利発表、中国財新PMI、米国ISM製造業/非製造業景況指数、雇用統計の発表があります。

各国中銀によるテーパリングを意識した発言が出る中、豪中銀による見通しが注目されます。

 

 

 

【先週の振り返りと考察】

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先週は横ばいの動きを予想していましたが、主要株価指数は堅調に推移しました。

特に日経、上海総合、香港ハンセンなどのアジア指数が強い伸びを示しました。台湾加権指数も3.49%も伸びでした。特にここ最近中国は高騰する商品価格の抑制に動いていましたが、ややインフレ懸念が和らいだことを受けて上海総合指数が急伸しました。

 米株指数は長期金利の落ち着きや、バイデン政権により発表された6兆ドル以上の歳出予算案や背景に上昇し、ダウ平均、S&P500は約1%高、ナスダックは2%の伸びを見せました。

また独DAXはECBの緩和観測の後退により小幅上昇ながら最高値を更新しました。

RTS指数やブラジルボベスパ指数などの新興国株指数も原油高、資源高を背景に株価を伸ばしました。

 

今週は決算を終えて割安となったPER、ワクチン接種の進展や中国株の復活により日経に上目線です。ただ、米国のテーパリングや増税が意識されるなか、レンジ上限が意識され29,600円辺りを抜けることは厳しいと予想します。

 

 

FRBのテーパリングに向けた地固め〜

 さて、私は前週末にテーパリングに対するFRB高官のスタンスをまとめ、この1週間は予定されていたFRB高官たちの発言に構えていましたが、予想以上に動きがありました。

その発言内容を前週のまとめに追記しました。赤字がこの1週間で新たに発言があった内容です。

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先週は8人のFRB高官が発言しましたが、そのうち4人が早期のテーパリングを意識するようなスタンスを示しました。

参考までに前週にまとめた表を再掲載して比較します。

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オレンジ色のテーパリング容認スタンスのメンバーが18人中2人から18人中6人に増えています。中でもFOMCの議決権を持つクオールズ副議長、クラリダ副議長がスタンスを変えていることが強い意味を持ちます。

 

また、先週は米国以外の他国でも中央銀行高官によるテーパリングや利上げに関する言及がありました。

25日:NZ中央銀行が2022年下期の利上げの可能性を示唆

26日:日銀鈴木審議委員がETFREITの残高増加ベースは極力抑制すべきと発言
   (日銀は4月-5月は4/21の701億円のETF買いのみで既にテーパリング中)

27日:韓国中央銀行が緊急的な刺激策の縮小を準備していると発言

27日:英中央銀行のブリハ委員が22年前半の利上げの可能性があると発言

 

米欧中の景気回復に伴ったインフレ圧力に対して、世界的なテーパリングの流れが徐々に拡がっています。

※ECBは現在のところ早期テーパリングを否定する言及が多いです。

 

 その流れに合わせてFRB内でもじわじわとオセロの石を返すようにテーパリングへの地固めが行われているように感じます。
クオールズ副議長、セントルイス連銀総裁が示唆した「数ヶ月先」という時期も、現在マーケットのコンセンサスとなりつつある8/26-28のジャクソンホール会合を意識したものと思われます。

 

 今週は6/4にパウエルFRB議長がオンライン討論会での発言があります。FRB副議長二人が早期テーパリングへの発言をした後に、パウエル議長がどこまで踏み込んだ発言をするか注目されます。

 

以上