投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【8/30-9/3週の世界のリスクと経済指標】〜雇用統計内容から考える長期金利上昇の理由〜

先週の評点:

 

リスク   -3点(42点):悪化 (基準点45点) 

経済指標  -6点(108点):悪化 (基準点114点)

 

 

【リスク】

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 先週のリスクはマイナス3ポイントの悪化としました。

米軍がアフガンが撤退を完了し、バイデン大統領はテレビ演説でその混乱の責任をトランプ前大統領に転嫁し、自らの決定を正当化しました。

しかし、その稚拙な撤退方法により、バイデン政権は政権発足以来関係を取り戻してきた同盟国や民主主義諸国からの信頼を損なう結果となりました。

そしてそれを払拭するためか、米国は同盟国ではないウクライナに対して関係強化を訴えました。

 

 また日本では政局が動きました。

ここ最近デルタ株の蔓延により支持率を落としていた菅首相が、次期総裁選には出馬しない方針を示したため、次期総裁を巡って自民党内での動きが活発になりました。

一時は与党の力が弱まっていましたが、与党が新体制で衆院選挙を戦うこととなり、政権を維持する可能性が高まりました。

 

 

【経済指標】

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 先週の経済指標はマイナス6ポイントの悪化となりました。

中国の財新PMIは製造業、サービス業共に50を下回る結果となり、中国当局の統制強化の影響もあり景気悪化を示しました。

 

 米国は消費者動向を示す消費者信頼感指数が6ヶ月振りの水準まで低下し、デルタ株の蔓延や物価上昇の影響による短期的な消費の鈍化を示しました。

またISM景況指数は、製造業が上昇して堅調さを示した一方、非製造業は前回64.1から61.7へ大幅に低下し、こちらもデルタ株の影響からサービス業が苦しい状況に陥っていることを示しました。

 

雇用統計に関しては後述するので詳細は割愛しますが、NFPが予想75万人に対して23.5万人とネガティブサプライズとなり、米国内でのデルタ株の蔓延により雇用も一旦落ち着きを見せていることが示されました。

 

 

【先週の振り返りと考察】

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 先週の欧米の株価指数は米雇用統計を控えまちまちでした。

景気敏感株が奮わない一方、ナスダックはGAFAMを中心に大手ハイテク株に買いが集まり、前週に続いて強く続伸しました。

 

また日経平均は、政府与党内での政局の動きに反応し、「解散は買い」のアノマリー菅首相の退任発表により、次の衆院選での与党政権の堅持や新たな財政政策が期待されて大きく上昇しました。
これまで割安ながらも伸び悩んでいた日経平均のこの勢いは週明けも続くと思われます。

 

 中国株もPMIの指標が冴えなかったことから中国当局が景気刺激策を打ち出すとの期待が浮上し上昇を見せました。

 

 

〜雇用統計内容から考える長期金利上昇の理由〜

 さて、先週は9月雇用統計の発表があり、前回105.3万人/予想75万人に対して23.5万人に大幅に減少しネガティブサプライズとなりました。

今回の雇用統計で強い雇用回復を確認し9月FOMCでのテーパリング決定が見込まれていましたが、その前提が崩れ早期テーパリング観測が後退した安心感からナスダックは最高値を更新しました。

一方でセオリー通りであれば長期金利が低下することが予想されましたが逆に上昇し、株式と債券でちぐはぐな動きとなりました。

 

これが意味することは、株価は早期テーパリング観測の後退を素直に織り込みましたが、債券市場は逆に早期テーパリングの開始を織り込んだということだと思います。

 

雇用統計の内容を細かく見ていきます。

今回の非農業部門雇用者数ではここ数ヶ月雇用増を牽引してきたレジャー・ホスピタリティ分野で増加がゼロとなっています。

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これはサービス業の雇用が止まっていることを意味しています。

 

次に失業率を人種別に見ていきます。

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白人、アジア人、ヒスパニック系が順調に失業率を下げてきているにも関わらず、唯一黒人は前月比で8.2%→8.8%と増加しています。

 

次に新型コロナの新規感染者数の多い地域と人種別の人口の多い地域をを示したマップです。

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南部に感染者の多い赤色が多いですが、フロリダ、テキサス、ミズーリアーカンソールイジアナアラバマミシシッピの7州ではワクチン接種率が低く、感染拡大が特に強い地域となっています。

そしてその7州は、赤線で囲んだ様に賃金の安いサービス業の担い手として黒人が多く居住する地域と重なります。

 

つまり、今回の雇用統計の下振れは、南部の新型コロナの感染拡大が強い地域でのサービス業者=黒人の雇用減少による影響が強かったと考えられます。

 

一方で8/24にファイザー製ワクチンがFDAにて正式承認され、モデルナも正式承認に向け申請を完了しています。

今後はワクチンの正式承認によって組織や団体においてワクチン接種を加速しやすい状況が整いつつあると思われ、今回の下振れの原因となったと思われる南部での感染状況の改善余地は大きいと考えられます。

 

従って、南部の感染状況が改善すればサービス業での雇用の改善にもつながることが予想され、今回の下振れが一時的となる可能性は高いと考えられます。

実際に南部7州では感染者数がややピークアウトしつつある状況も見られます。

 

また9月から失業保険の追加給付もなくなり子供の登校も始まるため、より雇用回復に後押しとなると思います。

従って9月FOMCでのテーパリング決定は無いと思いますが、10月雇用統計では再び強い回復を見せることも考えられ、11月FOMCでのテーパリング決定の可能性は高いと思います。

 

今回債券が売られ金利が上昇したのは、下振れは一時的でありテーパリングは近いうちに必ず来ると債券投資家が考えた背景があるのではないかと思います。

 

とはいえ、一時的にテーパリングが棚上げとなることが予想されるため、次回の10月雇用統計までは株価は堅調に推移するのではないかと考えます。

 

以上

【8/23-8/27週の世界のリスクと経済指標】〜マーケットとの対話巧者のFRB「二歩進んで一歩下がる」〜

先週の評点:

 

リスク   -6点(39点):大幅悪化 (基準点45点) 

経済指標  -14点(64点):大幅悪化 (基準点78点)

 

 

【リスク】

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 先週のリスクはマイナス6ポイントの大幅悪化となりました。

新型コロナではデルタ株感染拡大で、米国でもICUの使用率が高まり、1月のピークの8割に迫っています。今のところ景気回復が大きく減速する兆候はありませんが、今後再び経済封鎖などの措置になる可能性もあり、懸念が広がります。

一方でファイザー製ワクチンが正式承認されたため、企業や自治体などでもワクチン接種義務化が進みやすくなったため、接種率の上昇に寄与すると期待されています。

 

地政学面では欧米各国が退避を進める中、カブール空港にてISIS-K(イスラム国ホラサン州)による自爆テロがあり、米兵14人を含む95人が亡くなりました。月末の退避期限が迫り、欧米各国が退避作業を急ぐ中での爆破行為により大きな混乱が生じたため、独仏加などの西側諸国は期限を前にして退避作業の終了を余儀なくされる事態となりました。

この事件は現地協力者などを十分に退避させたとは言えない状況に追い込まれ、民主主義諸国に対する信頼をさらに低下させることとなりました。

 

 

【経済指標】

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 経済指標はマイナス14ポイントの大幅悪化となりました。

欧米PMIはデルタ株の再拡大や供給不足の問題が影響してか軒並み低下となりました。

特にこれまで好調を維持していたドイツの製造業PMIが予想に反して下振れしたことは、やはり中国景気の鈍化を連想させます。

 

米PCEコアデフレーターは前年同月比は前回、予想と変わらず3.6%と高水準だったものの、前月比だと0.5%だった6月に比べると0.3%とやや鈍化を示しました。

 

また注目のジャクソンホール会議でのパウエル議長発言はテーパリングの年内開始を示唆するも、それが近いうちの利上げに繋がるシグナルではないとしました。

ジャクソンホールに関しては後述します。)

 

先週は韓国中央銀行も不動産高騰抑制のために利上げに踏み切り、0.5%→0.75%としました。

 

次週は中国PMI、米ISM景況指数、米雇用統計があります。

特に米雇用統計はテーパリング開始の裏付けとなるため注目しています。予想通りもしくは予想以上となればテーパリングは9月FOMCで開始が発表される可能性があり、下回れば開始時期が後ろにズレ込む可能性もあると考えます。

 

 

【先週の振り返りと考察】

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 先週の米国株価指数は、アフガンでの欧米各国の退避行動中に起きたカブール空港での自爆テロ地政学的リスクが高まりましたが、米FDAファイザー製ワクチンを正式承認したことでの景気回復期待や、ジャクソンホール会議でのパウエル議長の発言がハト派な内容だったことが好感されて堅調に推移しました。S&P500とナスダックは再び最高値を更新しました。

上海総合指数や香港ハンセンなどの中国株式も前週の下落の反動で買いが先行し、同様に日経平均も反発しました。

 

 

〜マーケットとの対話巧者のFRB「二歩進んで一歩下がる」〜

さて、先週は注目のジャクソンホール会議(以後略称:J/H会議)がありました。

パウエル議長は7月末のFOMCよりも一歩踏み込み、年内のテーパリング開始を示唆しました。一方でテーパリング終了=利上げということには簡単には繋がらず、利上げに関してはより厳格な基準をクリアしないと開始しないと発言しました。

この利上げに関する発言をハト派と受け止め、マーケットは早期利上げに対する不安感を和らげ、株高、ドル安、コモディティ高で反応しました。

つまりパウエル議長はまたもや注目されたイベントをマーケットに混乱を呼ぶことなく無事に通過しました。

 

ここ最近、インフレ圧力の上昇とともにFRBの政策発表の場が注目されていますが、全て無難に乗り切っている印象があります。

そしてその中にも「二歩進んで一歩下がる」と言う一定のパターンがあるような気がします。

 

今回のJ/H会議前にはFRB高官による強いタカ派発言が相次ぎました。

前回の7月FOMC(7/27-28)から今回のJ/H会議までの期間中のFRB高官の発言回数とその内容をカウントしてみると以下の結果になりました。

※私がニュースから集計しているので漏れがある可能性もあります。

 

[7月FOMC-J/H会議間のFRB高官発言]

述べ発言回数:30回  うちタカ派発言回数:26回

発言高官人数:15人  うちタカ派発言人数:12人

 

かなりのFRB高官がタカ派に傾き、かつJ/H直前には6人の高官が相次いで発言し、早期のテーパリング終了時期までも要求するような発言を行いました。

参考:クラリダFRB副議長、年内のテーパリングを支持-米金融当局者発言
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-08-27/QYI0M3T0AFB401?srnd=cojp-v2

 

このように、FRB全体としてはJ/H会議を前にかなり強めのタカ派のコンセンサスを示し会議に臨みました。

 ところがパウエル議長の発言内容は、テーパリングの年内開始を示唆し、コンセンサス通り従来よりアクセルを踏み込むもののその時期は明言せず、かつテーパリング終了後に行われる利上げに関しては「簡単には行わない」とアクセルを緩めて含みを持たせ、マーケットはそれを「ハト派」と受け止めました。

 

この「FRB高官が強めのタカ派発言で地ならし(二歩進む)→パウエル議長が一歩前に踏み込むも、二歩目は踏み込まないハト派の印象付け」と言うやり方でパウエル議長は非常に巧みにマーケットと対話しました。

 

このパターンは7月FOMCでも使用されており、やはり7月FOMC前もその前の6月FOMC後にタカ派発言が徐々に増やされました。

 

[6月FOMC-7月FOMC間のFRB高官発言]

述べ発言回数:27回  うちタカ派発言回数:15回

発言高官人数:16人  うちタカ派発言人数:10人

※6月FOMC前はタカ派発言人数は6人

 

その際にもFRB高官のテーパリング開始を印象付けるタカ派発言を増やしていきながら、FOMC後の会見では「テーパリングへと経済は進展したが、その時期はまだ先」として一歩進みながらもハト派な印象付けでマーケットを失望させませんでした。

 

恐らく結果論としてのチームプレイだと思いますが、マーケット心理を巧みに操りながら歩を確実に進める戦術は見事と言うしかありません。

 

今回のJ/H会議でテーパリング年内開始のコンセンサスは形成できたので、次はペースと終了時期、そして利上げ時期の示唆となりますが、そこでも巧みに乗り越えてくれると期待しています。

 

以上

【8/16-8/20週の世界のリスクと経済指標】〜テーパリングに対するFRBの迷い〜

 

先週の評点:

 

リスク   -9点(36点):大幅悪化 (基準点45点) 

経済指標  -5点(52点):小幅悪化 (基準点57点)

 

 

【リスク】

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 先週のリスクはマイナス9ポイントの大幅悪化としました。

ワクチン接種は拡大していますが、デルタ株の未接種の人への感染やブレークスルー感染により拡大が続いています。加えて米国では5人に1人が子供の感染者となり、デルタ株はこれまでのコロナとは違い子供が媒介となる可能性が高く、夏休みを終え学校に集まる子供を中心に更に拡大することが心配されます。

 

 また、アフガンではあっという間にタリバンが首都カブールも制圧しアフガン政府が崩壊、タリバンが20年振りに政権を奪取しました。

米軍の撤退は前政権から計画されていたことですが、ここ最近のタリバンの制圧スピードが凄まじく、欧米各国は予想外の混乱を伴った撤退作業を余儀なくされました。

そしてそれは「失敗」という印象を強く残し、バイデン政権に対する信頼性を低下させることとなりました。

 

 

【経済指標】

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 先週の経済指標はマイナス5ポイントの悪化でした。

先週は指標の悪化が見られるようになり、景気回復の鈍化が確認されました。

中国では小売売上高と鉱工業生産が共に前回/予想に比べて悪化となり、中国景気の減速を示しました。

また、米国も小売売上高や住宅着工件数も大きく悪化を示し、一旦の景気のピークアウトを示しました。

 

NZ準備銀行の政策金利は0.25%の利上げが予想されていましたが、前日の17日にコロナ感染者発生を理由に全土のロックダウンが決定したために一時的な景気減速が懸念され、金利据え置きとなりました。

 

足元での供給不安やデルタ株の感染拡大から、指標的にも頭が重い状況が示され始めました。

 

 

【先週の振り返りと考察】

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 先週は前週末のアフガンでのタリバン制圧のニュースで重い雰囲気の中で始まり、FOMC議事要旨の発表で、大半の当局者が年内のテーパリング開始を予想していたことが示唆されて弱含みで推移しました。

特に上海総合や香港ハンセンは、相次ぐ中国当局の規制強化に欧米の重い雰囲気が重なり、大幅に下落しました。

また日経も欧米、中国の下落に加えて、トヨタが9月の生産を4割減産する発表をしたことから景気敏感セクターが大きく売られ一時27,000円を割るところまで反落しました。

WTI原油先物も中国の減速気運の高まりから需要減を見込み10%近く下落しました。

 

〜テーパリングに対するFRBの迷い〜

さて、先週は様々な要因により市場がやや重い雰囲気となった週でした。

要因としては下記が挙げられます。

 

①各地でのデルタ株の蔓延(米国でも8/16に瞬間的に25万人の新規感染者発生)

FOMC議事要旨からのFRBの予想以上のタカ派化の確認

③中国の規制強化(中国恒大集団への当局の介入及び個人情報保護法の成立)

④供給不安(半導体不足、コロナでのサプライチェーンの停止によるトヨタの減産発表)

 

特に②FOMC議事要旨からのFRBタカ派化に関しては、7月末のFOMC以降多くのFRB高官が公の場でテーパリングを肯定する発言が増えていましたが、FOMCの議事要旨はそれを裏付ける内容となりました。

8/17にはFRBメンバーで最もハト派ミネアポリス連銀総裁までもがテーパリング容認を発言しています。

そのため、ダウはFOMC議事要旨の日は久しぶりの1%の下落となりました。

 

 しかし、そんな中、8/20に突如FRBメンバーのダラス連銀総裁が「デルタ株の感染拡大が収まらず経済の進展に悪影響を及ぼすようであれば、これまでの自身の見解を調整する可能性を否定しない」と発言しました。

ダラス連銀総裁はこれまでタカ派の急先鋒としてかなり早い段階から早期テーパリングの必要性を訴え続けてきた人物ですが、ここに来て急にアクセルを緩める発言をしています。

 

ここまで中国や欧米を中心とした景気回復により強いインフレ圧力が生じていたため、それに対応してテーパリング議論が進んできましたが、足元は中国景気の減速感から商品価格も落ち着きを見せています。

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期待インフレ率を表す米国のBEI指数も5月のピーク以降2.27%と落ち着いています。

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 経済指標的にも、足元の景気の先行指数である連銀指数や住宅着工件数などで下振れが目立ち景気のピークアウト感が出始めており、景気の減速も意識され始めています。

また、なんと言ってもテーパリングが現実味を帯びてきているにも関わらず、長期金利は1.2%台と3月末のピークから低下し続け、上昇の兆しが見えません。

 

そんな中でのダラス連銀総裁の発言は、足元での景気楽観論への影に対する迷いを感じさせます。

基本的にはテーパリングが年内に開始されることはコンセンサスとなっており、ほぼ間違いないと思います。

一方で先週NZ準備銀行が確実視された利上げをロックダウンを理由に延期したように、その開始時期に関して予想される10月から若干のずれが発生する可能性を連想させます。

 

いずれにしても次週の米国Markit PMI、PCEコアデフレーターの経済指標、そしてジャクソンホール会議でのパウエル議長の発言にサプライズがあるのか注目します。

 

以上

【8/9-8/13週の世界のリスクと経済指標】〜中国のIT規制から考えるその狙い〜

先週の評点:

 

リスク   -9点(36点):大幅悪化 (基準点45点) 

経済指標  -2点(51点):小幅悪化 (基準点53点)

 

 

【リスク】

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 先週のリスクはマイナス9ポイントの大幅悪化としました。

デルタ株の拡大は進み、米国でも南部のワクチン未接種の人が多い地域を中心に拡大し、新規感染者数は再び7日平均12万人を超えてきました。

米国はロックダウンはしない見通しですが、経済の先行きに再び不安感が出てきました。

それに伴いWHOが反対する中、米国でも免疫力が低下した人々へのワクチンの3回目接種が承認され、ファウチ氏もいずれは全員が3回目接種が必要との見解を示しました。

 

 また、先週はアフガニスタン情勢が急に緊迫度を増してきたため、新たな項目として加えました。

8月末の米軍の完全撤退を前にタリバンが急速に勢力を拡大し、首都カブールに迫っています。米国も新たに5000人の兵士を派遣していますが、抗戦ではなく外交官などの退避を目的としており、タリバンのアフガン全土の制圧が間近と報道されています。

 一方でそれに先駆けて中国が7/28にタリバン幹部を天津に招いて王毅外相と会談し、復興に向けての協力を約束しています。中国から中東へと抜ける中央アジアで空白地帯となっていたアフガンを手中に収めることで、中東での中国の影響力が増すことが懸念されます。

 

 

【経済指標】

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 先週の経済指標はマイナス2ポイントの小幅悪化でした。

中国のCPIは前回1.1%より低下し1.0%となったものの、PPIは逆に前回8.8%から9.0%へ上昇し、相変わらず原料高による物価上昇が消費者価格へ転嫁が進んでいない状況を示しました。

 また、米国のコアCPIは前回4.5%から低下し4.3%となりました。前月比では前回0.9%、予想0.4%に対して0.3%と下振れを示したことからインフレの鈍化と受け止められました。

一方で米国のPPIは前回/予想ともに5.6%に対して6.2%と上振れ、今後の更なる物価上昇への懸念を残しました。

 

8月ミシガン大学消費者態度指数は予想81.2に対して70.2と大幅に低下し、デルタ株の蔓延からか消費マインドの悪化を示唆しました。

 

 次週は米小売売上高、NZ準備銀行政策金利発表に注目したいと思います。特にNZ政策金利は先進国初の利上げが予想されていますが、利上げの流れを作るか注目しています。

 

 

【先週の振り返りと考察】

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 先週も株価指数は堅調に推移しました。米株はCPIが鈍化傾向を示したことやインフラ法案の上院通過が好感されたことでダウを中心に強含み、ダウ、S&P500は最高値を更新しました。

1Q決算で好調な業績が続きながらも、全体的には大きな動きは少なく横ばいで小幅な上昇に終始した印象でした。

 一方でナスダックは長期金利の上昇やヘルスケア株の下落が足を引っ張り伸び悩みました。

中国株式も先週に続いて持ち直し、それに伴って日経平均も若干上昇するも節目である28,000円の上値が重い展開でした。

主要企業の決算発表も終わり、次週も動きの少ない横ばいの動きを予想します。

 

 

〜中国のIT規制から考えるその狙い〜

さて、8月5日のWSJに考えさせられる記事がありました。

※中国が目指す経済、インターネットより製造業

https://jp.wsj.com/articles/china-wants-manufacturingnot-the-internetto-lead-the-economy-11628128657?mod=saved_content

 

要約するならば、中国当局はここ最の中国の成長を支えてきた大手IT企業よりも実体経済を支える製造業に重きを置く政策をとっている、ということです。

欧米的なサービスであるソーシャルメディア電子商取引などのテクノロジーは「あればうれしいもの」ですが、半導体、電EV用バッテリー、民間航空機、通信機器などの製造業のテクノロジーは「なくてはならないもの」であり優先順位が高いとしています。

従って中国は欧米の様に脱工業化には追随しないことを望んでいるとしています。

 

アントの上場延期から始まり、自国IT企業に対する締め付けを強める中国ですが、なぜ成長分野に足枷をはめる政策を取るのか私にはその本質的な狙いがよく見えていませんでした。

しかし、この記事を読んでその狙いが見えてきました。

 

記事中に書いてある内容も含めて、大手IT企業がこのまま拡大した場合に中国当局が阻害要因として考えていると推測するものは下記の通りです。

 

①膨大な人口に対する雇用を保てない可能性がある。

欧米がそうであったように、いずれ経済主体が製造業から知識型サービス業に移行すると、大量の労働力と資本を必要とする製造業が衰退し雇用の絶対数が減り、膨大な人口の雇用が保てない。

 

②知識型サービス業化によって経済格差が拡大する可能性がある。

欧米の様に知識型サービス業化が進み過ぎると、その効率の良さから富が一部の資産家に集中する一方、労働者は雇用の流出で仕事を失い経済格差が大きくなる。

 

③既存の国有企業による秩序を脅かす存在となり得る。
中国の経済主体はあくまでも国有企業であるが、大手IT企業の急激な資本やサービスの拡大により既存の国有企業による秩序に取って代わる危険性がある。特に国有企業の割合の高い金融分野でのアントやWechatペイのような企業の拡大は当局にとって脅威。

 

こう見てみると中国当局の大手IT企業への締め付け強化は「共産党指導体制を堅持する」という目的において非常に理にかなったことのように思えてきます。

欧米の知識型サービス業が突き進んだ結果の副産物として、米国では経済格差の拡大からのポピュリズムの台頭が激しさを増し、年初の国会議事堂襲撃に繋がりました。

恐らくこれが中国共産党指導部の頭に鮮明に残り、自らの統治を脅かす可能性のあるものとして強烈に認識されたのではないかと考えます。

所詮は欧米型ITサービスのコピーであった自国IT企業の成長が止まろうが取るに足らず、共産党政権の永続的な繁栄を担保するためには寧ろそれをここで停滞させた方が得策と考えたのではないかと思います。

 

民主主義国家から見た是非は別として、中国の政策は一見目を疑う内容のものがありますが、本質を突き詰めていくと非常にロジカルで戦略に基づいていると感じます。

これも一党独裁専制主義政権だからこそなせる業であり、ブレ幅の大きい民主主義国からすると非常に脅威だと感じます。

 

以上

【8/2-8/6週の世界のリスクと経済指標】〜テーパリング機運の高まり〜

先週の評点:

 

リスク   -5点(31点):悪化 (基準点36点) 

経済指標  +1点(94点):小幅良化 (基準点93点)

 

 

【リスク】

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 先週のリスクはマイナス5ポイントの悪化となりました。

新型コロナはデルタ株の蔓延に収束が見えず、日本も新規感染者数が15,000人を超え、米国も再び16万人台となってきました。

米国ではワクチン接種完了者が50%を超え死者数が抑えられていることから今のところはロックダウンを行わない方針となっていますが、今後の状況次第では経済回復状況への影響が懸念されます。

また、ファイザー、モデルナの両社がワクチン効果持続のために3回目のブースター接種の必要性を示しました。

世界的に需要の高い欧米製のワクチンですが、途上国への配分が減る可能性があり、中国およびロシアが途上国へつけ入る隙を与え、格差問題となる可能性があります。

 

 

【経済指標】

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 先週の経済指標はプラス1ポイントの小幅良化となりました。

米雇用統計はNFPが予想87万人に対して94.3万人と大幅に上振れ、前回値も85万人から93.8万人に修正され、雇用の強い回復が示されました。

失業率も前月の5.9%から5.4%へ大きく改善が見られました。

 

またISM景況指数は、製造業は半導体不足からの「作りたくても作れない」という状況を表し鈍化しましたが、非製造業は人々の活動再開からリベンジ消費などが活発になったことで予想60.5に対し64.1と大幅な改善を示しました。

 

次週は中国7月CPI、米7月CPIの発表があります。

中国CPIは中国景気を左右する消費活動を図る上で、米CPIはテーパリングの時期を決めるための重要指標となるため注目します。

 

 

【先週の振り返りと考察】

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 先週の主要株価指数は全体的に堅調に推移しました。

特に日経平均は前週の落ち込みからの自律反発と好調な1Q決算から買いが先行し2%弱の強含みとなりました。

米株指数も好調な2Q決算が多く、金曜日には雇用統計が上振れたことも手伝い上昇しています。

一方でAMZNやトヨタに代表されるように日米共に好調な決算ながら、今後の見通しに鈍化傾向が見えると既に高いバリュエーションによって株価が下落する銘柄も目立ちます。

それによって業績好調な企業が多い中でも金融相場で過度に上昇した株価に業績が追いつかず、上値が重い印象です。

 

 

〜テーパリング機運の高まり〜

さて、先週はテーパリングに対する機運が高まった週でした。

7/27-28でFOMCが終わったため、再びFRB高官の発言が相次ぎました。

下記は最新のFRB高官の発言を更新したものです。

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 7月のFOMC後に発言がメディアに取り上げられたメンバーは赤字で記載しているパウエル議長含め9名ですが、そのうち6名がタカ派発言をしています。

7月のFOMCにおいてテーパリング議論がなされマーケットでもコンセンサスが形成されたことで、FRBメンバーも当然の如く早期テーパリング開始への発言を行なっています。

特にウォラー理事、クラリダ副議長の発言の影響が大きかった印象です。

これまでFOMCの常任メンバーである副議長や理事からの発言は比較的少なかった上に、加えてテーパリングに対してタカ派発言となったため、早期のテーパリングを連想させました。

 

また、FOMC前からタカ派発言をするようになったシカゴ連銀総裁に加え、FOMC後にはウォラー理事、ミネアポリス連銀総裁の3人がここ最近ハト派からタカ派へスタンス転換しています。

これによりFOMC議決権を持つメンバーの11人のうち6人がタカ派スタンスとなり、ほぼテーパリングは間違いない状況かと思います。

 

そして、8/6の雇用統計にてNFPが94.3万人と予想を上振れ、失業率が5.4%と大きく改善したことで、それを後押しする形になりました。

FRBメンバーからは「緩和後退には雇用統計の数値が重要」とのコメントが相次いでいましたが、雇用統計にて明確な改善が続いたため、テーパリングに向けた動きが肯定されることとなりました。

 

足元ではデルタ株が拡大していますが、米国ではデルタ株が再拡大してもロックダウンしない見通しであり、今後短期的に景気が急激に後退する可能性は薄いと考えます。

ついては9月の雇用統計を確認した後の9月のFOMCでのテーパリング発表に向けて突き進む機運が確実に高まってきていると考えます。

そしてまた、先週の株価の反応に大きな影響がなかったことを見ても、マーケットは既にテーパリングを織り込んでいることが伺え、今後も大きな変動なく粛々と移行していくと思われます。

 

以上

【7/26-7/30週の世界のリスクと経済指標】〜中国政府のマーケット重視からの訣別〜

先週の評点:

 

リスク   -3点(33点):悪化 (基準点36点) 

経済指標  +9点(99点):大幅良化 (基準点90点)

 

 

【リスク】

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 先週のリスクはマイナス3ポイントの悪化としました。

新型コロナは世界的にデルタ株が拡大し、米国でも再び1日あたり感染者が12万人を超え、日本でも1万人を超えました。米東部で発生したクラスター感染では3/4がワクチン接種者で、自身は重症化しなくてもウィルスを保有し他者へ感染させるリスクが懸念され始めました。

またイスラエルでは減少しているワクチンの予防効果に対して3回目のブースター接種開始しました。

効果が確認されれば有効な手段となるも世界的なワクチン不足が拡大する可能性があります。

 

政治面ではシャーマン米国務副長官が訪中し王毅外相と会談しましたが進展はなく、米中首脳会談の目処も立ちません。

一方でオースティン国防長官が東南アジア訪問しフィリピンとの軍事協定存続を決め、ブリンケン国務長官はインド訪問しワクチン生産支援を行うとともにクアッドでの協力を確認しました。

アジアでの対中プレゼンスを高めるために米国の対アジアの外交が活発化しています。

 

 

【経済指標】

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 先週の経済指標はプラス9ポイントの大幅良化となりました。

注目のFOMCでは「テーパリング向けて経済が進展した」としつつも、テーパリング開始については「今後複数回の会合」での経済の進捗を評価するとの声明を発表しました。

一方でパウエル議長は記者会見で「その時期はまだ当分先」という認識を示し、ややタカ派な声明とハト派の記者会見でうまくバランスをとった印象で、市場も荒れることなく無難に通過しました。

 

 一方で米国の4-6月期GDPは結果6.5%と予想の8.5%を大きく下回り、またPCEコアデフレーターも予想を下回り、やや景気の減速感を感じる結果となりました。

デルタ株によりワクチンを接種しても手放しで経済活動再開とならない状況や恒常化する半導体不足などからの在庫不足が足を引っ張っている印象です。

今後もFRBは難しい舵取りを迫られそうです。

 

次週は米ISM景況指数、豪準備銀行政策金利、英中銀政策金利、米雇用統計があります。

景気にやや減速感が感じられるようになった中で豪英中央銀行がどのような舵取りを行うのか注目です。

また雇用統計はFRBの今後の金融政策の指標になるため注目しています。

 

 

【先週の振り返りと考察】

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先週は週明けから中国政府の民間教育企業への規制で中国株が暴落しました。

米国株式指数は2Q決算の本格化とFOMC軟調な動きながらも大崩れしなかった印象です。

一方で個別の米ハイテク企業の2Q決算は、好調な業績を示すも今後の見通しでの鈍化傾向が示されると高い期待から利確売りを誘うものが多かった印象です。

特にAMZNの売上高が11四半期ぶりに市場予想に下回ったことで決算発表後に7.56%安となり、大型ハイテク株全体の成長鈍化の懸念を誘い足を引っ張りました。

 

今回の大型ハイテク株の下落を「調整過程」と見るのか「押し目」と見るのか判断が難しいところですが、ハイテク株以外の決算自体も概ね好調なものが多く、次週も軟調ながらも大崩れはしない相場が続くのではないかと推測します。

しかし日本企業は好決算を出しながらも通期の上方修正がないとすぐに利確売りに晒される傾向があり、さらに中国政府の規制強化も相まって下落傾向にあるため日経は下目線で見ています。

 

 

〜中国政府のマーケット重視からの訣別〜

さて、先週は上海総合指数が4.31%安、香港ハンセン指数が4.98%と中国株式が暴落しました。

私は7/4に投稿したように中国当局の締め付け強化から中国株式に強い懸念を持っていましたが、先週になってさらに当局の締め付けが強化されました。

 

具体的には下記の通りです。

 

①民間教育産業を非営利化し外国からの投資や株式公開を禁止

 

中国人民銀行が上海の銀行に対して住宅購入者への金利を1軒目4.65%→5%、2軒目5.25%→5.7%
 に引き上げを指示し不動産部門の加熱抑制策を強化

 

③上場予定企業の海外上場に対する管理監督を強化

 

これまでも金融市場に対して様々な規制を強化していましたが、さらにその傾向が強まりました。

下記はその規制の一覧です。

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 中国も不動産価格や原材料価格の高騰に苦しんでおり、それらに対する抑制策はある程度理解できます。

しかし、赤字で記してあるような企業活動に直接介入し、増して上場企業を勝手に非営利化する行為はさすがに金融市場のルールを根底から覆すものです。

 

 これまでは経済発展優先で欧米の資本主義のルールに則りマネーを集めてきた中国ですが、これで共産党による統制優先に切り替えてきたことが明白になりました。

中国政府による突然の規制強化や政策変更により投資家が損害を被る可能性高くなってきた今、そこまでのリスクを負って海外投資家が中国に投資するメリットがなくなってきたと言えます。

米SECも米国市場への中国企業の迂回上場を監視するため審査を厳格化すると発表しました。

これで経済面でも米中の分断が進み、最大のマーケットである米国からのマネーの流入が減少する流れとなると思われます。

 

私個人としても、そのような政治的リスクのある国に投資することはできませんので、保有していた中国株式を多く含む新興国株式インデックス(MSCIエマ)の投資信託は全て売却しました。

 

外国からの影響を受けずに独自の発展を作り上げていくため、中国は今後さらに統制強化することが予想されます。それらが世界的な金融市場に悪影響を及ぼさないか注意深く見ていきたいと思います。

 

以上

【7/19-7/23週の世界のリスクと経済指標】〜主要国の金融政策スタンス〜

先週の評点:

 

リスク   -1点(35点):小幅悪化 (基準点36点) 

経済指標  +1点(70点):小幅良化 (基準点69点)

 

 

【リスク】

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先週のリスクはマイナス1ポイントの小幅悪化としました。

デルタ株の猛威は収まらず、東南アジアでは工場停止に追い込まれ、サプライチェーンの停止からトヨタなど日本の製造業にも影響が出始めています。

またファイザーはデルタ株にも効果があると発表しつつも、イスラエルではファイザーワクチンの予防効果が39%まで低下していると発表しました。ワクチンを接種しても手放しで経済活動に戻れないことが懸念され始めました。

 

政治面では独露のガスパイプライン「ノルドストリーム2」が容認されました。

ノルドストリーム2は長年米独間での懸案となっていましたが、米国側に対中戦略においてドイツだけでなくロシアとの距離を近づけたい思惑が働いたのか、一転容認となりました。

 

また、東京で初の無観客でのオリンピックが開幕しました。

 

 

【経済指標】

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先週の経済指標はプラス1ポイントの小幅良化でした。

米国の6月住宅着工件数は、ここ最近の原材料高を反映してブレーキがかかるかと思いきや予想1.2%に対して6.3%と大幅な増加を見せました。インフレ圧力が高まりながらも引き続き需要が旺盛であることが示されました。

 

 ECBは7/8に中期インフレ目標をこれまでの「2%に近いかそれを下回る水準」から「2%」へ引き上げることを発表していましたが、これを持続的に達成するまで超緩和政策を継続することを新たなガイダンスとしました。

 

欧米のPMIはドイツが製造業、サービス業共に前回値、予想値を上振れました。

ここ最近陰りが見え追加金融緩和を行なった中国経済ですが、中国経済の側面指標であるドイツ製造業PMIから推測すると未だ好調さは継続している様に見えます。一方で7/21に発表された日本の工作機械受注では、中国向けが前月比27.6%減の280億円と急激に鈍化しており気になるところです。

 

次週は米FOMC、米4-6月期GDP、米PCEコアデフレーターが注目指標です。

FOMCは8月のジャクソンホールでのテーパリング示唆がコンセンサスとなっていますが、直前のFOMCで議論される内容が注目されます。

 

 

【先週の振り返りと考察】

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 週明けはデルタ株の急拡大による景気回復の遅れが懸念され、安全資産である米国債券への逃避が強まって長期金利は一時1.2%を割り、それと共に主要株式指数は大幅に下落しました。

しかしその後は押し目買いの反発から好調な企業決算を経て楽観が戻り、最終的には米株3指数は最高値を更新し、ダウも史上初の35,000ドルに乗せて週を終えました。

 

S&P500採用銘柄のうち120社が決算発表済みですが、その88%がコンセンサスを上回っている模様です。

金融相場の底堅さと米国企業の業績好調さが目立った週となりました。

 

 次週はテスラ、アップル、アルファベット、マイクロソフト、アマゾン、ボーイング、フォード、キャタピラーシェブロンエクソンなどの大手企業の決算が続きます。

先週はナスダックがアウトパフォームしましたが、次週もこのまま上昇基調に乗りながら、ハイテク株の決算好調を背景にナスダックがアウトパフォームすると予想します。

 

 

〜主要国の金融政策スタンス〜

さて、次週は7/27-28にて米FOMCが開催されます。

テーパリングが示唆されるとコンセンサスとなっているジャクソンホール会議前の最後のFOMCとあって会議の内容が注目されます。

先進国の景気回復からインフレ圧力が高まっている中で、米国の金融政策に注目が集まっていますが、米国以外の各国も様々な政策を打っています。

下記は各国の7/24現在の金融政策の一覧です。

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オレンジ色がタカ派スタンスの政策、青色がハト派スタンス、緑色がハト派拡大スタンスです。

 

これらの現状を整理すると下記の通りとなります。

 

インフレ目標をCPIが上回り、景気回復を背景にテーパリングしている国
 →NZ、カナダ、豪州(先進国)
インフレ目標をCPIが上回り、景気回復が弱いながらもインフレ抑制で利上げしている国
 →トルコ、ロシア、ブラジル、メキシコ(新興国

インフレ目標をCPIが上回っているが景気回復に不安があり利上げできない国
 →南アフリカ、インド、韓国(新興国

インフレ目標をCPIが下回っているため現状維持、もしくは緩和拡大傾向の国
 →イギリス、EU、日本、中国(先進国+中国)


米国の22年からのテーパリングおよび23年中の利上げは既にコンセンサスとなっていますが、今後より詳細な時期や規模が示されることとなります。

その際にコンセンサスとのズレがどの程度発生してくるかによって、各国の金融政策への影響が出てくると思われます。

 

 仮に米国のテーパリング時期や利上げ観測が早まるのであれば、自国通貨安とインフレ高進の防止のために、既に利上げに踏み切っている②のトルコ、ロシア、ブラジル、メキシコは更なる利上げに踏み切らざるを得ないでしょう。

また利上げ予備軍である③の南アフリカ、インド、韓国などは未だ経済回復途上であり、できる限り緩和を維持したい状況ですが、こちらも利上げに踏み切らざるを得ないと思います。

 

もちろん米国のテーパリング開始や利上げ観測が米国自身や先進国の株式市場を冷やさずに軟着陸できるかどうかが最も気になるところです。

一方でそれに連動して各国の経済にどのように作用し、その国の金融政策にどの様な変化をもたらすのか、というところも注意して見ていきたいと思います。

 

以上