投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【12/27-12/31週の世界のリスクと経済指標】〜2021年の振り返り〜

先週の評点:

 

リスク   0点(36点): 中立 (基準点36点) 

経済指標  +6点(24点):良化 (基準点18点)

 

 

【リスク】

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先週のリスクはゼロの中立となりました。

新型コロナはオミクロン株の拡大が続き、米国では一日当たりの新規感染者数が50万人を超え、過去最多となりました。重症者数や死者数は2021年頭の過去の波ほどは増加していませんが、急速な感染拡大により公共交通機関などにも影響が出ています。

また、1300万人が住む中国西安でも感染者増加によりロックダウンが行われており、経済活動が制限されていることから今後再び供給制約につながる可能性があります。

 

 

【経済指標】

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先週の経済指標はプラス6ポイントの良化となりました。

年末ということもあり、重要指標はありませんでした。

 

 

【2021年の振り返り】

新年明けましておめでとうございます。

新年が始まりましたので、改めて2021年の振り返りをしてみたいと思います。

 

まず株価指数です。

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今年最も上昇が目立ったのは米株3指数で、S&P500が26.8%、ナスダックが21.39%、ダウ平均が18.73%と上昇し、米株の強さを印象付けました。

次いで欧州株価指数の独DAX、英FTSE100、露RTSが15%前後の上昇で続きました。

アジア株は日経が4.91%、上海総合が4.8%、香港ハンセンが-14%と振るいませんでした。

 

次に米バンガードによるセクターETF価格の騰落率からセクターの動きを見てみます。

参考までに2020年の年間騰落率も合わせて表記しています。

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ベンチマークである全米株式ETF(VTI)は2021年に24%伸びました。

それに対して目立ってアウトパフォームしたのはエネルギーセクター、不動産セクター、金融セクターとなりました。これらのセクターはコロナショックによる景気後退の影響が強く、20年は大きくマイナスとなりアンダーパフォームしていましたが、一転して21年は強い回復を見せました。

背景としては先進国でのワクチン接種の普及による急速な景気回復がありますが、そこからの影響で①エネルギー需要急増でエネルギーセクター、②住宅需要増+インフレヘッジで不動産セクター、③長期金利上昇で金融セクター、が強かったと考えられます。

 

一方で、昨年大きくアウトパフォームしていた一般消費財(AMZN、ホームデポ、MCDなど)がインフレによるコスト増の影響を受けてか、昨年ほどのパフォーマンスを示しませんでした。

株式は21年に大きく伸びましたが、その内容を見てみると最終的に「景気回復」→「インフレ」という流れに強いセクターが優位であったと言えます。

 

次に米国債金利です。

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上記は米国債イールドカーブの2020年末、2021年1Q末・2Q末・3Q末・4Q末の推移です。

20年1Q末には景気回復を織り込んで長い年限の金利が上昇し綺麗にスティープニングしていました。

しかし、1Q末をピークに徐々にインフレが意識され始めたことから21年末にかけてフラットニングが顕著となりました。

短い金利FRBの利上げを織り込み上昇しながらも、長い金利は将来の景気減速を織り込んで低下が見られ、インフレ高進→利上げ加速→景気減速が意識されました。

 

総じて見ると、やはりこの1年は景気回復→インフレという動きが強く意識された年でした。

米国では3月以降2%を超えるCPIが続き、12月には6.8%まで上昇しています。

22年はその過熱したインフレに対してそれをどう抑制していくかが試される年になります。

利上げによりインフレがうまく抑制されれば業績相場に移行する可能性もありますが、スタグフレーションになる可能性もあります。

実際にインフレ指標が落ち着きを確認できるまでは警戒を緩めず、株式30%の弱気ポートフォリオで新年をスタートしたいと思います。

 

尚、2021年の私の個人資産の運用成績は+14.58%となり、長期投資として非常に満足の行く成果を得ることができました。

 

本年も宜しくお願い致します。

 

以上

【12/13-12/17週の世界のリスクと経済指標】〜分かれる金融政策と難しいECBの状況〜

先週の評点:

 

リスク   -2点(34点): 悪化 (基準点36点) 

経済指標  -15点(114点):大幅悪化 (基準点129点)

 

 

【リスク】

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 先週のリスクはマイナス2ポイントの悪化となりました。

元々拡がりを見せていたデルタ株にオミクロン株の強い感染力も加わり、欧米を中心に新型コロナの拡大が強まりました。英国では過去最多の9.3万人が感染し、米NY州でも2.2万人を超え、イベントのキャンセルが相次いでいます。ワクチン接種の拡大で重症化は抑えられているものの、オランダでは全国規模のロックダウンの開始が発表されており、この先他国も行動制限に追随するか注意が必要です。

 

ウクライナを巡る情勢では、米政権が独露のノルドストリーム2の稼働を阻止することも辞さないとの方針を示し、欧州のエネルギー問題にも発展してきました。

また、それに対しロシア外務省は米欧との緊張緩和に向け、NATOの拡大停止要求を盛り込んだ新たな安全保障案を公表しました。米欧は協議し、次週内には何らかの返答をするとしていますが、事実上の東欧からの軍事撤収もなども含まれており、協議は難航しそうです。

 

 

【経済指標】

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 先週の経済指標はマイナス15ポイントの大幅悪化となりました。

先週は多くの指標の発表がありましたが、注目は米FRBの金融政策発表でした。

FOMC後の声明では①テーパリング早期終了への加速、②22年3回、23年3回、24年2回の利上げ見通しが示されました。

11/30のパウエル議長発言にて既にFRBタカ派に政策転換することは示されていましたが、利上げ見通しはよりタカ派となった印象です。

FRBが強いインフレ継続の可能性を認識し、その対抗策の準備を急ぎ始めた重要な転換点となりました。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

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 先週の株価指数は全体的に反落となりました。

米株指数は米FOMCを前に持高調整でハイテク株中心に反落、FOMC直後にはイベント通過の安堵感からかハイテク株が大幅反発しましたが、その後再び失速し大幅反落とボラティリティの激しい週となりました。

一方でFOMC直前の12/14から12/17の値動きで見れば、ダウ平均は0.5%安、S&P500は0.29%安、ナスダックは0.45%安と小幅な下落に留まっており、今の所は引き締めによる影響は限定的で不透明感が払拭されたことの安心感の方が勝っているような印象です。

とは言えこの週末にオミクロン株の拡大が顕著になった事もあり、引き締め政策と相まって次週もハイテク、シクリカル共に株式には重い展開となることが予想されます。

 

 

〜分かれる金融政策と難しいECBの状況〜

 先週は米FRB、英BOE、欧州ECB、日銀の先進国の主要中央銀行の金融政策発表がありました。

各国でインフレが高進する中、FRBBOEなどは緩和政策から引き締めへの転換への姿勢が明確になりましたが、一方でECBや日銀からは緩和政策の継続が示され、各地域によって統一感のない方針となりました。

下記は先週示された主要中央銀行の金融政策の一覧です。

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BOEはコロナショック以降で主要先進国初の利上げ、米FRBはテーパリングを倍増に加速し、22年に3回の利上げ見通しを示しました。

一方で欧州ECBと日銀は量的緩和は縮小するものの正常化の時期ではないとして利上げに対しては慎重な姿勢を示しました。

 

上記以外では先週ノルウェー中銀やメキシコ中銀でも利上げが行われ、世界的にはインフレ抑制のために金融正常化がトレンドとなってきている様に感じられます。

日銀は世界的なインフレ下でも0.1%という低いCPIで推移する特異な国であるため、その緩和姿勢の継続は正当化できると考えられます。

しかし、欧州ECBは直近では英国と同水準の4.9%というインフレ指標で示されながらも、22年中の利上げの可能性すら低いとして強い慎重姿勢を貫いているところにやや違和感を感じられます。

 

ユーロ圏の国々の状況を細かく見てみます。

下記はユーロ圏に所属する各国の個別の直近CPIの一覧です。

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一部の国は不明ですが、下はポルトガルの2.6%から上はリトアニアの9.2%とバラ付きが大きいです。中間値としては5%近辺に落ち着いていますが、一部の新興国はインフレが激しく、既に国民の生活はかなり苦しいと思われます。

ユーロ圏という経済共同体である以上は仕方のないことですが、今回の政策方針は、新型コロナが再び猛威を振るう中、域内の大多数の国々の景気回復を優先し、一部の国のインフレ高進には目を瞑ったということでしょうか。

 

また、ECBのラガルド総裁は「現在の高インフレの多くはエネルギー価格高騰と供給の制約による一過性のもの」としていますが、欧州の一次エネルギーとしてシェアの高い天然ガス(シェア24%)の値上がりが続いています。

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その欧州の天然ガスの供給元としてはロシアが最も多く、2019年時点で35.5%となっています。

脱炭素の流れが強くなっている中、CO2排出の少ないブリッジエネルギーとしての天然ガスの需要が増加しており、域内での生産の減少と共ににロシアの影響力は年々増しています。

そんな中、欧州は米国と共にウクライナを巡ってロシアとの対立が激しくなってきており、ドイツとロシアが新たに完成させた「ノルドストリーム2」も米国からの圧力で稼働できず、供給不安が高まっています。

12月に入ってからの欧州天然ガス価格の上昇は、単に厳冬に備えた需給だけでなく、地政学的なリスクも絡んできており、本当にこの状態でエネルギー価格が収まっていくのか、先行きの見通しが難しいところです。

 

これらから言えることは、ECBが多くの国を内包する共同体であることから状況把握が複雑で、また足元では地政学的リスクがエネルギー供給リスクに直結していることから、見通しが非常に難しい状況にあるということです。

 

個人的には現在のECBの姿勢はやや慎重すぎると考え、今回のFOMCにて大幅にインフレに対抗する手段(=利上げ)を拡げたFRBと違い、欧州でのインフレ対応が遅れるリスクが高まったと考えます。

 

以上

【12/6-12/10週の世界のリスクと経済指標】~注目される利上げペース~

先週の評点:

 

リスク   -3点(33点): 悪化 (基準点36点) 

経済指標  +12点(63点):大幅良化 (基準点51点)

 

 

【リスク】

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 先週のリスクはマイナス3ポイントの悪化となりました。

オミクロン株は感染地域が拡大するものの症状が軽いとの見方が強く、またファイザーや英保健当局がワクチンのブースター接種で有効性が高まると発表したことでやや警戒感が薄れました。

 

政治面ではオンラインでの米露首脳会談が開催され、バイデン大統領がウクライナへの侵攻観測に懸念を表明し、侵攻の場合には同盟国との経済制裁を伝えました。一方でプーチン大統領NATOの東方拡大を排除する法的に定められた保証」を要求し、お互いの主張が平行線を辿りました。

 

また米国主催で開催された民主主義サミットに台湾が参加したことに対抗してか、ニカラグアが台湾との断交と中国との国交回復を発表しました。中国も積極的に台湾周辺の切り崩しを図っています。

台湾を巡った米中対立だけではなく、ウクライナを巡った米露対立も徐々に懸念が拡大しており、米国の対応能力が分散されつつあります。

中露が裏で連携している可能性もあり気になるところです。

 

 

【経済指標】

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 先週の経済指標はプラス12ポイントの大幅良化となりました。

注目の米11月CPIは総合指数が予想と一致の6.8%、コア指数も予想と一致の4.9%となりましたが、両方とも前回から大幅上昇となりました。

 

その他の指標も比較的良好な数値を見せました。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】~注目される利上げペース~

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 先週の株価指数は、オミクロン株が症状が軽いと言う見方が広まったために警戒感が後退し、主要指数は大幅反発となりました。

S&P500はオミクロン株や利上げに対する不安が残る中、最高値を更新して週を終えています。

 

 また注目の米11月CPIの発表では総合CPIが6.8%、コアCPIが4.9%と40年振りの上昇を見せインフレの高進が続いていることが示されました。

12/3発表の雇用統計での失業率4.2%となったことに加え、12/8発表の10月JOLTSでも求人件数1100万件を超え、7月に続き過去2番目の高さで高止まりしていることからも雇用市場はほぼ回復が見えます。

そうなるとFRBが注力すべきはインフレ退治であり、注目されるのはやはり次週のFOMCです。

今回のFOMCでの注目点は下記の通りです。

 

  1. テーパリング加速および利上げ開始時期に関する言及
  2. 来年の利上げ回数に関するFRB高官のドットチャート

 

11/30の議会公聴会でのパウエル議長の「テーパリングの早期終了を次回FOMCで議論するのは適切」という発言の通り、テーパリング加速が予想されます。

WSJFEDウォッチャー、ニック・ティミラオスの12/11の記事を読んでもテーパリング終了時期に関し、「6月から3月に」というワードが明示されていることから倍増はほぼコンセンサスであると考えられます。

さらに、もう一歩踏み込んで12月のFOMCで来春の利上げ開始の是非が議論されることにも言及されていますので、利上げ開始時期に関してパウエル議長から具体的な言及が出てくるかにも注目されます。

https://jp.wsj.com/articles/rising-inflation-keeps-pressure-on-fed-to-dial-back-stimulus-faster-11639174767

 

また今回は四半期末のFOMCであるためFRB高官による利上げ時期予想のドットチャートが発表されます。

今回は上に挙げたようにテーパリング加速は濃厚となっているため、その後の引き締めペースの方が焦点になっていると考えます。

下記の通り前回9月のFOMCでは22年のゼロ金利据え置き派と利上げ派が99で半々となっていました。

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 足元のFed Watchでは22年中の利上げ回数は2回が85%、3回が59.5%となることが予想されています。

つまりコンセンサスとしては2回の中間値となっていることが考えられます。

一方で12/10のCPIが予想通りだったことから、株式上昇と共に利上げを反映しやすい2年債利回りもやや落ち着きを取り戻して前日の0.69%から0.65%まで低下していますので、株式市場、債券市場共に「FRBが強くは出ない」とやや楽観視していると思われます。

私の予想も2回ですが、株式市場、債券市場にはやや楽観が感じられるため、たとえ2回となってもマーケットは動揺する可能性があると思います。

また実生活において1年前より全ての物価平均が7%近く上昇していることは異常であり、国民生活の圧迫緩和のためにFRBがよりタカ派に出ることにも警戒が必要だと思います。(下記はワシントンポスト記者がツイッターに挙げた主要インフレ製品)

https://twitter.com/byHeatherLong/status/1469303222556938240?s=20

 

いずれにせよ、今回のFOMCFRBがインフレをどこまで深刻に見ているかの指標になりますので、ドットチャートに表現される引き締めペースには特に注目したいと思います。

 

以上

【11/29-12/3週の世界のリスクと経済指標】〜後手に回るFRB〜

先週の評点:

 

リスク   -6点(30点): 悪化 (基準点36点) 

経済指標  +5点(116点):良化 (基準点111点)

 

 

【リスク】

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 先週のリスクはマイナス6ポイントの悪化となりました。 

 先週はオミクロン株が欧米を中心に世界各地で拡がりを見せたことで警戒が強まりました。またモデルナが既成ワクチンのオミクロン株への有効性が低いとの見解を示したことで不透明感が高まりました。ドイツではデルタ株での感染拡大も続いており、ワクチンの義務化に向けて検討が始まりました。

 

また滴滴出行の米国上場廃止と香港上場が伝えられ、中国当局が企業の海外資金調達よりも自国の情報統制を優先することが明確となり、その他の米国上場しているADR株の株価下落へも影響しました。

 

次週は米露のオンライン首脳会談や米国が主催する民主主義サミットがオンラインで開催され、その動向が注目されます。

 

【経済指標】

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 先週の経済指標はプラス5ポイントの良化となりました。

注目指標である米国のISMサービス業景況指数が予想65.0に対して69.1と大きく上振れを見せ、好調さを堅持しました。

 米雇用統計は、非農業部門雇用者数変化は予想55万人に対して21万人となり下振れましたが、一方で失業率は予想4.5%に対して4.2%と下振れしました。まちまちな結果となりましたが、失業率がFRBの目標であった自然失業率4.0%に限りなく近い値となり、雇用の改善の終わりが近いことを示しました。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】~後手に回るFRB

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 先週の主要株価指数は、前週からのオミクロン株への警戒に加え、FRBタカ派転換で米株を中心に続落しました。前週に続き、PERの高いナスダックと小型で弱いラッセル2000の下落が激しい傾向となりました。

 

 11/30の議会上院公聴会でパウエル議長は「テーパリングの早期終了を次回FOMCで議論するのは適切」「インフレが一過性であるという表現をやめるとき」という発言を行いました。そしてこれまでの雇用を優先してインフレを許容するスタンスから対インフレにシフトするという大きな方針転換を示しました。

 またパウエル議長に続き4人のFRB高官もテーパリング加速を支持し急激なスタンス転換を後押ししました。従来強いハト派であったSF連銀のデーリー総裁までもがテーパリング加速支持しているところに、FRBの焦りを感じさせました。

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それらを受けて先週はイールドカーブも大きくフラット化し、利上げを見込んで短い利回りは強く上昇した一方、景気減速を見込んで長い利回りは大きく低下しました。

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 ここ数ヶ月は、強いインフレから米国債イールドカーブはフラット化し続け債券市場は悲観視していましたが、株式市場は一貫して楽観し上昇していました。

3Q決算の好調さもありましたが、大前提として「インフレは一過性であり緩和は継続する」というFRBからのお墨付きが与えられていたからだと考えます。

 

しかし、今回パウエル議長は急遽そのお墨付きを撤回しました。

しかも行き過ぎたインフレを抑え込むため、想定よりも迅速な引き締めが行われる可能性も示唆しています。

そう考えると株式市場は債券市場との乖離が意識され始めた10月上旬のレベル(S&P500で言えば4300ポイント)まで調整する可能性も考えられます。

 

いずれにせよこの1週間でFRBの金融政策が後手に回ったことが明確となりました。

FRBはマーケットのコントロールを失いかけているように見えます。

FRBが再びそれを取り戻し、インフレ率が目標である2%に落ち着き、かつ企業業績が回復してくるまでは株価は伸びにくいと考えます。

ついては引き続き警戒を解かずに弱気スタンスを継続します。

 

次週は11月の米国CPIの発表があります。

予想は6.8%と上昇を示していますが、今後はよりインフレ指標の重要性が増してくるためその加速度合いに注目したいと思います。

 

以上

【11/22-11/26週の世界のリスクと経済指標】〜混沌を呼ぶオミクロン〜

先週の評点:

 

リスク   -5点(31点): 悪化 (基準点36点) 

経済指標  +7点(82点):良化 (基準点75点)

 

 

【リスク】

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 先週のリスクはマイナス5ポイントの悪化となりました。

32箇所もの変異を持つ変異株オミクロンが南アフリカで急拡大していることを受け、世界各国で警戒が強まりました。

変異が多いことで現在接種されているワクチンの効果が現時点では不透明であり、各国で南アフリカや周辺国からの渡航制限や隔離措置が開始されました。

元々欧州を中心に感染が拡大していたところにイスラエル、ベルギー、英、独、伊でもオミクロン感染が確認され、リスクが高まっています。

 

また、EUではベラルーシからの不法移民問題ウクライナ国境でのロシア軍集結問題を巡り、EUベラルーシ/ロシアでの対立が深まっています。

新型コロナ、オミクロン、ロシアとの対立と欧州でのリスクが高まっている印象です。

 

 

【経済指標】

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 先週の経済指標はプラス7ポイントの良化となりました。

欧米PMIはサービス部門を中心に回復を見せていますが、足元で急速に再拡大する新型コロナと、今後拡大が予想されるオミクロンにより、今後は不透明感が高まると思われます。

 

米国のPCEコアデフレーターは前回3.6%から増加し4.1%となりインフレの高まりを示しました。

また米FRBはパウエル議長の続投が決まり、対抗馬であったブレイナード氏よりもタカ派であると見做され、週中には金利や期待インフレは一時上昇しました。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】〜混沌を呼ぶオミクロン〜

 先週は新型コロナの変異株オミクロンの拡大により、大きく膨らんだ風船が弾けるかのようにリスク資産が大きく縮小しました。

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先進国株式指数の中では、元々新型コロナ感染者数が激増していたドイツに対しオミクロンが追い討ちをかける形となったため、特にDAX下落幅が激しく5.6%もの調整となりました。

新興国株式指数では原油価格の大幅下落を受け、ロシアRTS指数も7.79%安となりました。

 

また、オミクロンの拡大で各国で行動制限が強くなることが予想され、景気減速を織り込んだために短期から長期まで全体的に金利が低下しました。

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インフレ高進からの利上げを織り込み、2年債利回りは23日には一時0.68%まで上昇していましたが、26日には0.5%まで急速に萎みました。

また金利先物も24日には5月FOMCでの利上げ開始、22年中に3回の利上げを織り込んでいましたが、26日には利上げ開始は6月FOMC、22年中に2回の利上げに後退しています。

 

 商品先物指数は、特に原油が多国間での戦略備蓄解放で低下傾向にあったことに加え、オミクロンによる需要後退観測で大きく下落しました。

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 予想していなかった新型コロナの再拡大観測での調整となりましたが、懸念となっていた原油を始めとする資源価格が下落したことで、一旦は景気過熱が落ち着き金融引き締めペースが和らぐ可能性が出てきました。

またそれにより巣篭もり銘柄を中心としたハイテク株には再び支援的になることも考えられます。

 一方でオミクロン拡大での行動制限が考えられる中、サービス需要がモノ需要に戻り、かつ工場での生産能力が低下することで再び供給制約が強くなりコストプッシュインフレが継続することが考えられます。

そうなるとオミクロンの影響で景気減速しながらも、インフレも残るスタグフレーションの可能性も考えられます。

 

 いずれにせよ今回のオミクロン拡大により、従来からの楽観と悲観が渦巻くインフレ懸念に、新たに予測不可能な不安要素が加えられ、マーケットが混沌としより不確実性が増した印象です。

とにかくリスクを取るべき時期ではないことは変わらないため、引き続き株式30%の弱気スタンスを継続します。

一方で商品高が継続するシナリオに変化が生じたため、10%保有していたコモディティインデックスは手仕舞いし、国内債券に振り分け守りを固めたいと思います。

 

以上

 

【11/15-11/19週の世界のリスクと経済指標】〜悲観と楽観の混在〜

先週の評点:

 

リスク   -3点(33点): 悪化 (基準点36点) 

経済指標  +9点(60点):良化 (基準点51点)

 

 

【リスク】

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 先週のリスクはマイナス3ポイントの悪化としました。

欧州で新型コロナが再拡大し、オーストリアはロックダウン、ベルギーは週4日の在宅勤務義務付けなど行動制限も拡大してきました。

欧州経済の要であるドイツでも過去最大の感染者数増加から行動制限待ったなしとなっており、欧州経済が再び停滞する可能性が出てきました。

 

 また中国では、コロナの感染拡大自体は収まりつつあるものの、北京五輪に向けてゼロコロナを目指すために行動制限が続いており、経済活動への影響も広がっています。ただでさえ、不動産や脱炭素で規制を統制を強めてきている中で、経済成長率見通しもさらに低下する可能性があります。

 

また先週は日米の財政政策に関する動きがありました。

米国では1.75兆ドルにも上るビルド・バック・ベター法案が下院で可決され、成立へ向け前進しました。

また日本では岸田政権が財政支出が55.7兆円となる経済対策を決めました。

短期的な影響は限定的となりそうですが、景気の下支えとはなりそうです。

 

 

【経済指標】

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 先週の経済指標はプラス9ポイントの良化となりました。

中国の10月小売売上高はガソリンなどの燃料代が高騰したことで大幅増加となりました。また2月をピークに切り下げてきた鉱工業生産ですが、5G対応のスマートフォン需要に支えられて前月比で僅かに戻し上振れしました。

 

また米小売売上高も予想1.2%に対して1.7%と上振れしました。オンラインストア、自動車・部品やガソリンスタンドなどが強く、インフレの影響が出ながらもクリスマス商戦に向けて消費が堅調に推移していることが示されました。

 

一方でドイツの生産者物価指数が急激に上昇しており、ドイツは今後、インフレ高進とコロナの行動制限による停滞が同時に来る可能性があるため注意が必要です。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

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 先週の株価指数はまちまちな動きとなりました。

ナスダックは好調な小売売上高、NVDAの好決算や長期金利の低下に連れて1.24%上昇、最高値高進となりましたが、一方でダウ平均は欧州での新型コロナの再拡大での景気後退懸念から1.38%下落しました。

 

また米を中心に多国間で戦略備蓄放出の検討が進んでいることを背景に、原油価格が80ドル台から75ドル台まで下落したことで、資源国であるロシアとブラジルの株価は大きく調整しました。

 

 先週は原油の下落とともに、石炭価格も中国国内での増産と価格統制により大きく調整し、中国原料炭先物価格は30%下落しました。一方で各国のカーボンニュートラル政策も相まって天然ガスは未だ高い位置で推移しており、資源高の懸念は収まっていません。

 

 

〜悲観と楽観の混在〜

先週の株価指数は方向感の見えない週でした。

米国企業の決算も終盤に近づき当面の楽観材料が消えつつある中で、悲観と楽観がそれぞれ違うマーケットの捉え方をしている様子が散見された印象でした。

 

まず株式市場と債券市場ですが、株式市場はS&P50018日、ナスダックが19日に最高値を更新し楽観が続きました。一方で債券市場は前週末比で16日にはややスティープ化したものの、週としてはフラット化して景気後退を織り込み、悲観が続いています。

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  次に米国株式ですが、ナスダックが1.24%高、S&P5000.32%高となった一方で、ラッセ20002.85%安、ダウは1.38%安となりました。

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労働者賃金高や原料高の影響が少なく、長期金利安が好感されるナスダックの大型ハイテク株は楽観的で高値を追いかけました。

一方でラッセル、ダウなどの景気敏感株は、労働者賃金高や原料高、長期金利安の影響を受け景気後退を悲観し下落しました。

 

  先週発表された米銀行大手のS&P500の22年末の見通しでも、モルガン・スタンレーは利益成長の鈍化と金利の上昇で4400ポイントに下落すると弱気を示しましたが、GSは21年よりも上昇率は鈍化するものの5100ポイントと強気の姿勢を示しました。

モルスタ:https://jp.reuters.com/article/usa-stocks-morganstanley-idJPKBN2I01YU

GS: https://jp.reuters.com/article/usa-stocks-goldman-sachs-idJPKBN2I11TS

 

また先週はFRB高官のタカ派発言が目立ちましたが、利上げを急ぐスタンスと慎重なスタンスで割れている印象です。

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11月FOMCからのメンバーの発言をまとめると、おおよそ半分半分になっています。

 

こうして見ると、現在の状況はマーケットに対して悲観と楽観の両方の捉え方が同じように混在し、より見通しが立ちにくい状況であることを改めて示しています。

 

私自身はインフレ高止まり継続と早期利上げで景気後退が起こると考え、10月初旬以降弱気スタンスを貫いていますが、その間は楽観が勝ちS&P500は9%上昇し見通しは外れています。

ここで挙げている内容同様、見通しの難しさを痛感しています。

 

しかし、その楽観も10月CPI以降勢いに陰りを感じられ、主要企業決算の終了と共に当面良材料がなくなるため調整するのではないかと考えます。

いくら企業決算が好調と言えども、目標2%に対して6.2%という高過ぎるインフレ指標が出ている状況では経済が正常に推移しているとは考えられません。

従ってそろそろ悲観が勝る可能性が高いと考え、引き続き弱気スタンスを継続していきます。

 

以上

【11/1-11/5週の世界のリスクと経済指標】〜ハト派の先進国とタカ派の新興国〜

先週の評点:

 

リスク   +2点(38点): 良化 (基準点36点) 

経済指標  +19点(121点):大幅良化 (基準点102点)

 

 

【リスク】

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 先週のリスクはプラス2ポイントの良化としました。

新型コロナは、冬の本格到来を前にドイツや東欧地域を中心に感染者が急増し再拡大の兆しが見え始めました。一方でファイザーが開発中の経口コロナ薬が入院と死亡確率を9割近く減らす効果があることが発表され、今後より簡易に新型コロナ拡大を防ぐ手段としてポジティブニュースとなりました。

 

また米がEUからのアルミや鉄鋼の輸入に掛けている関税の一部免除を決め、EUとの関係修復に向かいました。一方で英国はブレグジットでの仏との漁業権問題が激化し、報復合戦となっています。

一方では関係修復が進みながらも他方では関係悪化が進み、西側諸国のまだら模様が続きます。

 

【経済指標】

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 先週の経済指標はプラス19ポイントの大幅良化となりました。

先週はインフレ圧力が高まる中、豪準備銀行、FRBBOEによる金融政策発表があり、そのスタンスに注目が集まりましたが、総じてハト派に推移しました。(詳細は後述します。)

また米雇用統計ではNFPは上振れして雇用の回復を示しながらも、平均時給は前月比0.4%の伸びとなり、人手不足の状況も示しました。

米ISM景況指数も製造業は供給制約の影響でやや低下しましたが、非製造業は新型コロナの感染の落ち着きも相まって活発な需要に支えられ過去最高値となりました。

 

次週は米10月CPIの発表に注目します。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

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 先週の株価指数は、好調な米国企業業績に加え、豪準備銀行、FRBBOEがそれぞれハト派なスタンスを貫いたことで金利が低下、カネ余り継続となりハイテク株を中心に先進国株式が大幅上昇しました。

また米雇用統計も堅調に雇用回復していることが示されたことや、ファイザーの経口コロナ薬に高い効果が見られたことで景気回復が意識され後押ししました。

全般的に見ると株式市場にとって良いことづくめの週となりました。

 

 一方で債権市場では、中銀のハト派スタンスにより利上げ観測後退から金利が低下しつつも、長短金利差は縮小しイールドカーブはフラット化を深めました。

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金利低下により、足元は高PERのハイテク株には追い風となっていますが、やはり債権市場は早期利上げによる将来の景気減速を見込んでいます。

 

 

ハト派の先進国とタカ派新興国

 先週はRBA(豪中央銀行)、FRBBOE政策金利発表があり、インフレ圧力が高まる中、各国中銀がどのような運営を行うのか注目されました。

結果としてはRBAはYCCを撤廃したものの23年末まで利上げしないとし、FRBもテーパリングは開始するもの「インフレは一過性」とし利上げに対しても「辛抱強くなれる」と見通しは崩しませんでした。

また利上げがコンセンサスだったBOEは、据え置きとするサプライズを示し、各国中銀のハト派姿勢を印象付けました。

 

下記は主要先進国と最近金利に動きのあった国の現在の政策金利を一覧化したものです。

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こうして眺めてみても、日米欧豪などの経済規模の大きな先進国はハト派で緩和継続、一方でその周辺新興国はインフレ耐性が弱いためにタカ派で引き締めを開始しています。
※中国は金融面では緩和的ですが、政治による統制強化から実質引き締められていますので、ここでの議論では中国はタカ派に含めます。

 

次に日本を含む先進国の株式インデックスであるMSCI World Index新興国株式インデックスであるMSCI Emerging Indexの値動きを見てみます。

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インフレが意識され始めた今年の春先から新興国株式は低下傾向となっていますが、先進国株式はその後も上昇し、特にインフレ圧力の急速に高まった10月以降急伸しています。

経済規模が大きく経済力が強い国は「インフレは一過性である」と緩和姿勢を貫き株式資産が膨張する一方、経済規模が小さく経済力が弱い国はインフレやそれに対する締め付けで資産が縮小している傾向にあることが示されています。

つまり新興国タカ派転換で行き場を失ったマネーが、未だハト派を貫く先進国へ移動していると考えられます。

 

そして先週の先進国の株高は、10/28のECB、先週のRBA、FRBBOEにより示された連日のハト派姿勢により加速され演出された結果と考えます。

そしてそれは先進国株にバブルを引き起こしていると思います。

もちろん企業業績は好調ですが、そうでなければひどい3Q決算だったAMZNの現在株価が決算前を上回っていることを説明できません。

 

現在先進国の株式市場は非常に楽観的ですが、それが試されるのは各国中銀がタカ派に振らざるを得なくなる時だと思います。

次週は米国の10月CPIの発表があるので非常に注目です。

インフレが強く実感され始めた10月の数値が予想の5.8%を上振れた場合、マーケットは再び早期利上げを意識せざるを得ません。

 

株高が続いていますが、自身のポートフォリオは引き続き弱気スタンスで警戒しながら様子を見ていきます。

 

以上